第2話「赤い稲妻はイケメン美少女!?」
ぴしゃ~~~~ん――!
また、頭の中に赤い稲妻のイメージが閃いた。
誰かが放つ『波動』が、赤い稲妻のイメージになって伝わってきているんだ。
なんだか、すごく不思議な感覚。
ヒトでもモノでも、『波動』ってゆ~~ものを出してるんだって。
わたしの師匠が、そう教えてくれた。
強烈な波動は、時々、他人の頭の中に閃くイメージとなって伝わることがある。
これも、師匠が教えてくれた。
こんなに、強烈なイメージが伝わってくるなんて……赤い稲妻の波動を放っているのは、いったい誰なんだろう。
わたしは、どうしても気になっちゃった。
「もしかしたら、わたしのライバルになってくれるかもしれない!」
そんな期待を胸に、赤い稲妻の波動を追って、青い空を飛び続ける。
「近い! このあたりだ!」
周りは、緑の少ない岩肌が剥き出しになった山岳地帯だった。
人間とは思えない気配も、うっすらと感じられる。
モンスターがいるのかもしれない。
ちょっと、危険な雰囲気だ。
油断しないようにしよう。
そう思ったとき。
ぴしゃ~~ん――!
青空を赤い稲妻が切り裂いた。
「今度は、イメージじゃない!」
雲一つない晴れ空なのに、赤い稲妻が、山の尾根の向こうに落ちるのが見えた。
「間違いない! あそこに、赤い稲妻がいる!」
わたしは、ぎゅんと速度を上げて尾根の向こうに飛んだ。
「いた! きっと、あの子だ!」
山と山の間にある開けた場所に、黒いフードをかぶった女の子がいた。
身長は、わたしと変わらないくらいで、ちょっと小さめだ。
だけど、伝わってくる波動は、とっても大きく力強かった。
その子は、白銀に輝く綺麗な槍を持ち、巨大な敵と戦っていた。
体が水晶でできた、2足歩行の恐竜のような姿をしたモンスターだ。
空から見下ろしていても、その巨体がわかるほど大きな体をしている。
たぶん、10メートルはあるんじゃないかな。
あの黒いフードの子は、その恐竜型のモンスターと戦っているみたいだ。
「あれ? あっちに、消えかかったモンスターがいる」
どうやら、先に倒したモンスターがいたみたい。
同じような大きさのモンスターだけど、胴体に大きな穴が空いていて、地面に倒れたまま光の粒子となって消えていこうとしてる。
「すごい! あんな大きなモンスターを倒しちゃったんだ!」
って、感心してる場合じゃない。
わたしも、あの子に加勢しよう。
あの大きさのモンスターなら、戦い甲斐がありそうだしね。
そう思って、黒いフードの子とモンスターに向かって急降下しようとした。
だけど……。
「ライトニングピアーース!」
黒いフードの子が、凛とした声を張り上げ、白銀の槍を繰り出した。
赤い稲妻をまとった一撃だった。
ずどぉん――!
「うわぉ!?」
びっくりして、思わず叫んじゃった。
黒いフードの子の一撃は、大きな恐竜型のモンスターの頭を吹き飛ばした。
それだけじゃない。
その後ろにあった山肌をド派手にえぐりとった。
「な、なんて威力!?」
モンスターどころか山ですらえぐっちゃうなんて……!
ライトニングピアース……か。
あの威力……きっと、あの子の必勝技だね。
そして、わたしは見た。
あの黒いフードの子は、赤い稲妻をまとった槍の一撃を繰り出していた。
やっぱり、あの子が……赤い稲妻の波動を放っていたんだ。
「……ふん」
頭を吹き飛ばされたモンスターが、粒子の光になって消えていくのを、黒いフードの子は、目もくれなかった。
まるで、取るに足らない相手だったって言ってるみたい。
「だったら、今度はわたしが相手だ! 来て! シャルロットソード!」
黒いフードの子に向かって降下しながら、わたしは叫んだ。
すると、青空の彼方からキラっと光が飛んで来た。
あれは、シャルロットソード。
わたしが呼べば、いつでもどこでも飛んできてくれる、剣のような形をした超良い感じの木の棒なんだ。
友だちは、「それ、たぶん普通の木の棒じゃないよ」って言うんだけど、わたしには何のことだか、さっぱりわからない。
わたしは、飛んで来てくれたシャルロットソードをパシっと空中で掴み取り、黒いフードの子のそばに降り立った。
「……!」
黒いフードの子が、槍の穂先をわたしに向けて身構えた。
明らかに、警戒されてる感じだ。
そりゃあ、いきなり空から降ってきたら、びっくりするし警戒するよね。
「あ~~、警戒しないで! わたしは、シャルロット! 今日から、この星の学園に通う生徒なんだ! えへ! えへへ! え~~へっへっへ!」
警戒心を解こうと、にこやかに笑ったつもりだけど、なんか気持ち悪いかも?
「…………警戒するなだって? 闘争心を身体中に漲らせて言うことじゃないね」
「そ、それは、ごもっとも」
いや~~、戦いを挑む気満々なの見抜かれちゃった。
やっぱり、この子すごいなぁ。
感心しながら、ジッと黒いフードの子を見つめる。
黒いフードの子は、深くフードをかぶってるから顔がよく見えない。
だけど、チラチラと見える瞳は、真紅の色をしてるのがわかった。
「あなた、名前はなんていうの?」
「…………」
「この星にいるってことは、学園に通う生徒なんだよね?」
「…………」
「む~~! なにか、答えてよ!」
わたしの質問は、ことごとく無視されてる。
「わかった。答えたくないなら答えなくていいよ。あなたが言うように、わたしは闘争心に満ちてる。なぜかわかるでしょ? あなたと戦ってみたいからだよ」
そう言ったら、黒いフードの子の口元が、ピクッと動いた気がした。
「それ!」
わたしは、自分の力を解放した。
どぉん――!
全身から青いオーラが噴き上がり、衝撃波が巻き起こる。
「――ッ!?」
黒いフードの子が、わずかにたじろいだ。
台風のような強風が、黒いフードをめくり上げ、その下の素顔が露わになった。
「……い、イケメンだ!」
目鼻立ちが整っているっていう表現は、あの子のためにあるようなものじゃん。
シュっとした輪郭に、すらっとした鼻筋。
キリっとした真紅の瞳は、宝石みたい。
髪は長い金髪で、日の光を浴びてキラキラと輝いてる。
とても、綺麗で凛々しい女の子だった。
「……わぉ」
ついつい、その姿に見惚れてしまった。
だけど、わたしの目から逃れるように、イケメンは黒いフードを被り直しちゃった。
「なんで、フードを被るのさ! もったいない!」
「…………」
イケメンは無言のまま、くるっと背中を向いて歩き出した。
「待ってよ! 勝負は!?」
このまま、逃がしてなるものか。
追いかけようと足を踏み出したら、
ぴしゃ~~ん――!
目の前に、赤い稲妻が落ちてきた。
「…………」
イケメンが、チラっと振り返った。
するどい目つきが、いまのは警告だと言ってるのがわかった。
追いかけてくるようなら、次は当てる。
そう目で語ってるんだ。
イケメンは、すたすたと歩いて行ってしまう。
「む~~! そんな、脅しなんか通用しないもんね!」
だぁん――!
地面を蹴りつけ突進した。
戦うつもりがないなら、その気にさせてあげるまでだよ。
ごろごろ――! ぴしゃ~~ん――!
警告通り、赤い稲妻がわたしを目がけて落ちてくる。
イケメンは、振り返りもしない。
「当たるもんかい!」
だぁん――!
空中に見えない力場を生み出して蹴りつけた。
これは、『翔足』っていう技だ。
何もない空間に反発力のある力場を生み出して、それを蹴りつけることで爆発的な加速力を得ることができるんだ。
その技を使って、空から真っ直ぐに落ちてくる赤い稲妻を真横に回避した。
ぴしゃ~~ん――! ぴしゃ~~ん――!
わたしを狙って連続で落ちてくる赤い稲妻。
だぁん――! だぁん――!
負けじと、翔足で軌道を変えながら赤い稲妻を避ける。
だぁん――!
「隙あり――!」
翔足で一気に間合いを詰めて、イケメンの背後に迫った。
左手に握ったシャルロットソードをイケメンの頭を目がけて振り下ろす。
さあ! どうするの! イケメン! わたしは、本気だよ!
「ライトニングピアーーーース!!」
ぴしゃ~~ん――!
ずどぉん――!
「――ッ!?」
…………え?
な、なにが、起きたの!?
赤い稲妻が閃いたと思ったら、わたしの身体は吹き飛ばされちゃってる!?
ずきん――!
「うっ!?」
一瞬、遅れて胸に痛みが走った。
胸のど真ん中に、何かが当たったってこと……?
ずだぁん――!
「ぐえ!?」
背中から地面に打ち付けられた。
大の字に倒れるわたし。
は、反応できなかった。
なにが、起きたんだろう。
「しまった!?」
イケメンの美声が、聞こえる。
慌てたように走り寄ってくる足音も。
「反射的に、ライトニングピアースで迎え撃ってしまうなんて……!」
ああ、そういうことなんだ。
あの瞬間、後ろから飛びかかるわたしに、イケメンは振り向きざまに必勝技を撃ち込んだんだ。
その動きに、わたしは、まったく反応できなかった。
ま、まさに……目にも留まらない早業だよ。
「わ~~お、びっくりしたぁ」
わたしが、胸を押さえながら、むくりと身を起こすと、
「なっ!?」
イケメンが、ぎょっとした顔で驚いてた。
わたしが、起き上がったのが信じられない様子だ。
「そ、そんな……ボクのライトニングピアースが完全に入ったのに」
大きく目を見開いて動揺する姿も、かっこかわいい。
必勝技で、わたしを倒したと思ったんだろうな。
でも、わたしも一撃でノックアウトされるほど、やわじゃないよ。




