第16話「リード・ハウスの部屋割り!」
わたしたちのグループが決まった。
メンバーは、わたしとマナとアンジェちゃんとレジーナちゃん。
「……マジで、お前らと同じグループなのかよ」
レジーナちゃんは、まだ納得がいってないようだ。
「諦めなさいよ。どうせ、他の子たちとは上手くやってけないでしょう。同郷の私が気を遣ってやったんだから感謝なさいよね」
「ちっ! いらねぇ世話を焼きやがって! 俺様は、お前のそういうところが気に食わねぇんだ! 気を遣ってやったとか、わざわざ口にするとこが特にな!」
「あら? わざわざ、そんなことを対面で言うのはあんたにだけよ? だって、あんたは他の人と違って他人の気配りに鈍感じゃない。だから、わざわざ言ってやってんのよ」
「くそ! ほんと、お前ってクソ優等生だぜ!」
わたしたちに割り当てられた寮の前で言い合うアンジェちゃんとレジーナちゃん。
「なんだかんだで、ふたりとも仲良しだね。そりゃそうか。同じ星域の友だちだもんね」
「「仲良しじゃない!」」
声を揃えて否定するところも、仲が良さそうだなって思った。
あっ、ちなみにね。
わたしたちの住む寮は、それぞれリード・ハウスって呼ばれてるんだって。
たしかに、寮っていうより一個のおうちだから、ハウスって呼ばれる方が、なんとなくしっくりくる感じがするね。
「それより、ここがわたしたちが住むリード・ハウスなんだね。ポップで明るくて、見てるだけで元気になれそうなデザインだよね!」
グラデーションの効いた色とりどりの壁に、お星さまや星座が描かれた可愛いデザイン。
賑やかで華やかで楽しそうな雰囲気が、すごく気に入っちゃった。
「そう~~? まあ、綺麗ではあるけどね。原色すぎるというか、ずっと眺めてると目がチカチカしてきそうだわ。私の趣味じゃないわね」
と、アンジェちゃん
「ああ、これはナンセンスだろ。俺様の趣味でもねぇ」
と、レジーナちゃん。
「……やっぱり、ふたりとも仲良しじゃん」
「仲良しじゃないわよ!」
「仲良しじゃねぇよ!」
だから、そうやって声を揃えて否定するとこが、また仲良しっぽく見えるんだよぉ。
「はいはい。おふたりとも、その辺で。運搬ロボットが荷物を運んできてくれましたよ。リード・ハウスの中に運び入れましょう」
マナが、淡々と言いながら運搬ロボットの誘導をしてる。
「そうね。うちの前で、ごちゃごちゃ話してても仕方ないわ」
と、アンジェちゃん。
「そうだね! そうしよう!」
わたしは、リード・ハウスのドアノブを回してみた。
でも、ドアは開かなかった。
「あれ? 鍵がかかってるよ? 誰か、鍵を持ってる?」
「リード・ブレスレットが、リード・ハウスの鍵になっているそうです。ドアについてるパネルにかざすだけでロックが解除されるという仕組みのようですね。学園の生活マニュアルに書かれてました」
マナが、教えてくれた。
「そうなんだ。よ~~し、試してみよ」
わたしが、右手首にはめているリード・ブレスレットをドアのパネルにかざすと、
――がちゃ!
と、鍵が開く音がした。
「開いた!」
ばたんと、ドアを開けると運搬ロボットたちが、いそいそと荷物を運び入れていく。
縦長の箱みたいな形をしたロボットが、せっせと荷物をアームで抱えて運ぶ姿は、健気でかわいいなって思った。
「あんた、よく鍵の開け方を知っていたわね?」
アンジェちゃんが、マナに訊ねると、
「自分は、皆さんのサポート役ですからね。取り急ぎ、先ほど生活マニュアルを読み込んでおきました」
と、ぽやっと答えた。
「は~~ん? 弱っちそうな分、そういうところで役に立とうってか。なんなら、俺様の子分にしてやってもいいぜ?」
「…………」
無言で、リード・ハウスの中に入っていくマナ。
「あのチビ! 俺様を無視しやがった!」
「あははっ! もう、あんたへの対処法を学んだのね。あの子、頭良いわ!」
アンジェちゃんが、愉快そうに笑った。
「くそ! 気に入らねぇ!」
レジーナちゃんも、ドカドカと足音を立てながらリード・ハウスの中に入って行った。
「ほら、シャルロットも行くわよ」
「……ああ、うん」
わたしは、ドアの前でリード・ハウスを見上げた。
「どうしたの?」
「なんだか、楽しそうな予感がするなって」
「そう? 私は、揉め事の気配の方が強く感じるけど?」
「あははっ。それはそれで、楽しいかもよ?」
もう一度、わたしはリード・ハウスを見上げた。
うん……やっぱり、楽しい予感がする。
こんな風に、自分以外のオリジンの子と一緒に暮らせるなんて夢みたいだ。
……ここに、赤い稲妻がいたら、もっと良かったのに。
「おい! さっさと来いよ! 部屋割り決めないとロボットどもが、荷物を運べないだろうが! ロボットにも、気を遣ってやれよ!」
「ちぇっ。レジーナのやつ、嫌味なこと言うわねぇ」
「はははっ。それじゃあ、わたしたちも中に入ろう」
わたしとアンジェちゃんも、リード・ハウスの中に足を踏み入れた。
リード・ハウスの中は、外から見たポップなデザインに比べて、意外と普通だった。
清潔感のあるフローリングの床に、光沢のある壁。
置かれているテーブルや椅子、棚も落ち着いたデザインのものだった。
「ふ~~ん。中は、意外と落ち着いてるじゃない」
アンジェちゃんが、内装を見渡しながら言った。
「調度品などは、自分たちで作ったりYPで買――交換したりしたものを置いて良いそうです。これも、生活マニュアルに載ってました」
と、マナ。
「半年間、ほんとに自分たちの家みたいに使って良いってことかな」
「まあ、そういうことでしょう。とはいえ、元は学園の物なので大切に扱うことが前提でしょうけれど」
そりゃそうだよね。
言ってみれば、借り物なんだしさ。
「おい! てめ~~ら! サッサと個室のある2階に上がってきやがれ! 部屋割りが決まらねぇだろうが! それとも、部屋割りは俺様が勝手に決めても良いのかよ!」
上の方からレジーナちゃんの怒鳴り声が聞こえてきた。
このリード・ハウスは2階建て。
1階には、リビングやキッチンやシャワー、トイレがある。
そして2階は、ベッドなんかが置いてある個室になってるんだって。
そう、マナが教えてくれた。
「乱暴な口調のわりに、自分勝手に部屋を決めないところが、ちょっとウケるわね。『この部屋は俺様のもんだ!』とか、言うかと思ったのに」
プッと笑うアンジェちゃん。
「ちゃんと、みんなの意見を聞いてくれようとしてるのなら、やっぱり思ったほど悪い子じゃないかも」
「だと、いいのですが」
わたしたちは、にが笑いしながら階段で2階に上がった。
「おせぇよ、テメーら。んで、部屋割りはどうすんだ? 言っとくけど、俺様はテメーらの部屋に挟まれるのは御免だぜ」
レジーナちゃんが、ぶすっとした態度で言う。
2階に上がると、ドアが4つあった。
住むのは4人だから、みんな一部屋ずつもらえるってことだ。
部屋のドアには、1番から4番までの番号が割り振られてた。
「わたし、1番! 1番の部屋が良い!」
「ふん! やっぱり、そうきたか。だが、俺様も1番が良い。競争でもなんでも1番ってのは、気持ちが良いからな」
「私は、どこでもいいわ」
「自分も。ですので、おふたりで1番部屋争いですね」
ってことは、希望する部屋が被ったのは、わたしとレジーナちゃんだけだ。
「ちっ! 言っとくけど、譲らねぇぞ!」
「わたしもだよ! こうなったら、勝負だ!」
「面白れぇ! やってやろうじゃねぇか!」
お互いを睨みながら向き合うわたしとレジーナちゃん。
「あんたたち、勝負するのは勝手だけど、このリード・ハウスを壊すような真似はよしてよね。入居して初日で、住む場所がなくなりました、なんて私はごめんよ」
「自分もです。控えめに頼みます」
アンジェちゃんたちは、ジト目でわたしたちを見る。
「だいじょうぶだよ。ここは、ジャンケンで勝負だ!」
「まるっきりガキの勝負だな! だが、乗った!」
わたしたちは、腕を振りかぶった。
「「最初は、グー! ジャンケン――! ポン――!」」
どごぉん――!
わたしとレジーナちゃんの拳がぶつかり合った。
「あちゃ! あいこだ!」
「ふん! だが、お前ブレイヴ式のジャンケンとはわかってるじゃねぇか!」
「そりゃブレイヴだもん!」
ブレイヴ式のジャンケンとは。
グー、チョキ、パーの形だけで勝負が決まるわけじゃなくて、どの形でも相手をパワーで押し退けた方が勝ちなんだ。
「あ、あんたたち……それだと殴り合うのと変わらないわよ。頼むから家を吹き飛ばしたりしないでよね」
「わかってるよ! 次だ、次で勝負を決めてやるぜ!」
「やれるものなら、やってみなよ! それじゃあ、行くよ!」
もう一度、腕を振りかぶるわたしたち。
「「最初は、グー! ジャンケン――! ポン――!」」
今度は、わたしとレジーナちゃんの手が違った。
わたしは、もう一度、グーを繰り出した。
そして、レジーナちゃんは、今度はチョキを突き出した。
――グキ!!
わたしの握り拳が、レジーナちゃんのチョキの指の股に食い込んで指を押し広げた。
「ぎゃあ~~~~!?」
レジーナちゃんが、指を押さえながら悶絶する。
「指が……! 指がぁ……!」
レジーナちゃんの人差し指と中指が、ありえないくらい左右に曲がってた。
曲がっちゃいけない方向に、曲がってた。
「これは、ひどい……!」
「おめ~~が、やったんだよ!」
涙目で、レジーナちゃんが叫ぶ。
「はい。じゃあ、勝負はシャルロットの勝ちね。んじゃ、シャルロットが1番部屋。マナが、2番部屋。3番部屋は私ね。4番部屋はレジーナにあげるわ」
と、アンジェちゃん。
「くそ! もう、なんでもいいよ! ったく、ひでぇめにあったぜ!」
「レジーナさん、これ痛み止めとヒールポーションです。よければ、使ってください」
と、マナ。
「おお……す、すまねぇな。ありがたく、もらっとくぜ」
「レジーナちゃん、ごめんね。まさか、チョキがくるなんて思わなくて」
「くそ! この借りは、いつか返すからな!」
てなことで、部屋割りが決まったのでした。




