第15話「4人目は、レジーナちゃん!?」
わたしは、セイラ先輩に赤い稲妻のイケメンのことを訊ねた。
学園のサポート役をしているセイラ先輩なら、何か知っているかもしれない。
「赤い稲妻のイケメンねぇ。そんな子いたかな」
セイラ先輩は、タブレットの画面を見つめている。
たぶん、そこには生徒のリストが載っているんだろう。
「イケメンって言っても、男の子じゃないよ! イケメンな美少女!」
「わかっているよ。そもそも、私たちの住む世界には男はいないだろう。途方もない大昔や異世界なら、ともかく」
そう。
わたしたちの住む世界には、男の人はいない。
みんな、女の人だ。
なんでこうなったかなんて知らないけど、そんな世界なんだ。
いまじゃイケメンって言葉は、イケてるかっこいい感じの女の子に使うものだ。
「う~~ん。やっぱり、生徒のリストにそれらしい子は載ってないな。金髪に赤い瞳という組み合わせの子は、いるにはいるが、みんな穏やかな顔をしてる子ばかりだ。キミが出会ったというイケメンのイメージには合わないだろう」
「え~~……そ、そんなぁ」
……がっくり。
セイラ先輩にも、わからないなんて。
っていうか、生徒のリストにも載ってないなんて。
あの赤い稲妻のイケメン美少女は、いったい何者なの?
「やっぱり、あんたの夢や幻だったんでしょ」
と、アンジェちゃん。
「だから、違うってば!」
「セイラ先輩。先ほど、まだ到着していなかったり姿を隠した生徒がいるとおっしゃっていましたよね? その中にも、いないようなのですか?」
そう訊ねたのは、マナだった。
「少なくとも、こちらで確認できる特徴としては符合しないな。ただ……」
「ただ……?」
「学園長は、場合によっては生徒が追加される可能性があると言っていたから、可能性としては、そちらかもしれない。まだ、私たちが追加された分の生徒の名簿をもらっていないというわけだ」
「なるほど! そうかもしれない!」
謎の赤い稲妻は、あとから追加された生徒なのかもしれない。
だから、まだセイラ先輩たちが、持ってる生徒のリストにも載ってないんだ。
うん、きっとそうだ。
「しかし、その子とグループを組みたいと思っても、本人が現れてくれないと組めないぞ。本人の意思を確認しないといけないんだ」
「え~~? そこをなんとかなりませんか?」
「……すまないが、こればっかりはルールだからな」
セイラ先輩は、ちょっと気の毒そうな顔をしながら去って行った。
「ちぇ~~! 赤い稲妻と同じグループになりたかったのに!」
「仕方ないわよ。存在してないんだから、グループを組もうにも組めないわよ」
アンジェちゃんは、からかうように笑った。
「だから、赤い稲妻は存在してるよ! わたしの夢や幻じゃないもん!」
「はいはい。わかったわかった。それよりも、あとひとりをさっさと決めましょ」
はぁ~~……仕方ない。
ここは、諦めるしかないかぁ。
ええと、じゃあ……他に、誰かいないかな?
そうは言っても、ここには知り合いはいないから、すぐにあとひとりが見つかるわけない。
ジュンちゃんは……と、思ったけど、あの子はレアちゃんと同じグループになるだろうし、数が合わなくなっちゃうから無理かな。
誰かが向こうから、声をかけてくれたら、そのまま一緒のグループに入ってもらおう。
そう思いながら、きょろきょろしてると広場のベンチに寝転がるレジーナちゃんを見つけた。
周りには、誰もいない。
みんなレジーナちゃんを避けるように距離を取ってる。
「あの子、態度が悪いしあんたにケンカを吹っかけたりしてたから、もうみんなから避けられてるのね。こんなところにまできて、なにやってんだか」
アンジェちゃんが、やれやれって感じでため息を吐いた。
「だいじょうぶかな。ぜんぜん、グループ分けに加わってないよ」
「ったく、レジーナったら」
しばらく、黙ってレジーナちゃんのことを見つめていたアンジェちゃんだけど、不意に口を開いた。
「……はぁ。悪いんだけど、あの子をうちのグループに入れてあげてもいいかしら?」
「ダメです」
わたしが、「良いよ!」って言う前に、マナがきっぱりと拒否した。
「あの人は、さっきシャルロットに喧嘩を売ったんですよ。同じグループになれば、絶対にトラブルの原因になります。だから、ダ~~メ」
ぽやっとした顔で、頑として拒否するマナ。
「そうは言うけどね。レジーナも、そんなに悪い子じゃないのよ」
「悪い子にしか見えませんが」
「どうかなぁ? フォルティミヤの悪口を言われたし喧嘩も売られたよ。でも、まだわたしはレジーナちゃんのことをあまりよく知らない。さっきの授業では、わたしのフォローをしてくれたような気もするし、思ったほど悪い子じゃないのかもしれないよ。わたしは、賛成。レジーナちゃんをグループに誘ってみよう。それで、拒否されたら、それは仕方ないってことで」
「……しかし」
「ていうか、あんた……もし、いまフォージ・ブレイヴがグループに入れてくれって言ってきたらどうするのよ? ひとつ屋根の下で暮らせる? さっきのあんたの態度を見てる限り無理っぽいでしょ?」
アンジェちゃんに指摘されてマナが言葉を詰まらせた。
「そ、それは……たしかに」
「その点、レジーナなら問題ないわよ。だって、あの子はオリジンだもの」
「あっ! やっぱり、そうなんだ!」
坂道で喧嘩を売られたとき、なんとなくそうじゃないかなって思った。
「それと……私も、あんたほど見せびらかしたりしないからパッと見わかんないかもだけど、生まれながらのオリジンよ」
「やっぱり……アンジェちゃんもオリジンだったんだね」
はじめて会ったときから、わたしと似たようなものを感じたんだ。
この子、オリジンかもって。
その直感が、当たってたってことだ。
「それは、自分もわかっていました。これでも、オリジンの波動は昔から感じてきたので、なんとなくわかるんですよ。だから、最初からアンジェリカさんがオリジンだと気づいてました。でなければ、こんな風に仲良くはしません。アンジェリカさんが、フォージ・ブレイヴでなくて、本当に良かった」
と、マナ。
「ほんと、偏ってるわね……あんた。で? どうするの? あんたの親友は、レジーナを誘ってもいいってさ」
「シャルロットが、そう言うのであれば仕方ありませんね。気は進みませんが、レジーナさんを誘ってあげてください。まあ、あの乱暴者がオリジンだということも、自分にはわかってました。ただ、出会い方が最悪すぎて印象が最低なんですよね。自分、上手く付き合えるか自信ないですよ?」
「まあまあ、一緒に暮らしてみれば、意外と馬が合うかもよ。それじゃあ、声をかけてこよ~~っと!」
「ま、待ちなさい! まずは、私が声をかけるわ! これでも、同じ星域の出身だもの。扱い方は、心得てるんだから」
「そ、そう? じゃあ、任せるよ」
扱い方を心得てるって言ってるけど、坂道のケンカを見てると、そうは思えないんだけど。
……めちゃくちゃ正面から揉みあってたし。
アンジェちゃんは、すたすたとレジーナちゃんのところに歩いて行った。
「だ、だいじょうぶかな?」
「さあ、アンジェリカさんを信じるしかないでしょう」
わたしとマナは、すこし距離をおきながら見守った。
アンジェちゃんは、ベンチに寝転がってるレジーナちゃんのそばまで近づく。
そして、腰に手を当てながらレジーナちゃんの顔を見下ろした。
「ちょっと、起きなさいよ。ヘボトカゲ」
うわ!? いきなり、そんな声のかけ方ってある!?
「ああん! てめぇ、クソ優等生! ヘボトカゲだと!? ケンカ売ってんのか!」
ほら、言わんこっちゃない!
レジーナちゃんは、めちゃくちゃキレてるよ!
ベンチから起き上がり、アンジェちゃんの胸倉を掴もうとするレジーナちゃん。
だけど、アンジェちゃんは、するりとレジーナちゃんの腕を避けた。
「見たところ、誰からもグループに誘われてないみたいね」
「それが、どうしたってんだ!」
「かわいそうだから、私たちのグループのペットとして飼ってあげるわ。ヘボトカゲ」
「なっ!? ぺ、ペットだと、この野郎! しかも、またヘボトカゲって言いやがったな! ふざけやがって!」
レジーナちゃんが、腕を振りかぶってアンジェちゃんに殴りかかった。
「あぶない!」
思わず飛び出しかけた。
でも、アンジェちゃんには、レジーナちゃんのパンチは当たらなかった。
まるで、空中を舞う羽毛みたいに、するりと避けちゃったんだ。
「こ、この! ちょこまかと! 一発、殴らせろ!」
う、うわぁ……もう、ほとんどさっきのケンカの続きだよ。
誰が、扱い方を心得てるって……?
「乱暴者のヘボトカゲが他人様に危害を加えないように、私のグループでペットとして管理してやるって言ってんのよ。どうせ、自分でも制御きかないんだから、ありがたく申し出を受け入れることね。っていうか、あんたに拒否権なんてないから」
「く、クソ優等生! 誰が、お前らのグループなんかに入るか!」
「あら? もう一度、言うわよ? あんたに、拒否権なんてないの」
ギロっと、わたしとマナの方を睨んでくる。
「お前のグループって、あいつらも一緒だろうが! 俺様は、あいつらとケンカしたんだぞ! そんなやつらと同じグループに入れようだとか、お前、正気か! また、問題が起きるとか、フツ~~は考えるだろ!」
「あっ、別にわたしは構わないよ」
「まあ、シャルロットがいいのなら自分も構いません」
わたしとマナが、そう言うとレジーナちゃんは、舌打ちをした。
「お前らも、おかし~~だろ! さっきケンカした相手と、どうして同じグループになろうとか思えんだよ!」
「いや、だから別に構わないんだってば」
「そうですね」
「じょ、冗談じゃねぇ! 誰が、お前らと一緒のグループになるか!」
「だから、拒否権はないんだってば」
アンジェちゃんが、しれっと言う。
「お前に、何の権限があるんだよ!」
顔を真っ赤にするレジーナちゃん。
そこに、セイラ先輩が様子を見に来た。
「ははっ。お前たち、盛り上がってるな。えらく仲が良さそうじゃないか」
……どこをどう見たら、そう思えるんだろう。
「セイラ先輩、私のグループは決まりました。メンバーは、私とシャルロットとマナとレジーナです」
「お、おい! 勝手に!」
レジーナちゃんが、アンジェちゃんの肩を掴みかかろうとする。
だけど、またアンジェちゃんは、するっと避けた。
「あい、わかった。そのメンバーでグループ登録しておいたぞ。はははっ。賑やかなグループになりそうだな。みんな、仲良く頑張ってくれ」
セイラ先輩が、タブレット端末を操作しながら笑った。
「ええ~~~~!? 決まっちゃったのかよ!?」
レジーナちゃんは、目玉が飛び出すぐらい目を見開いて驚いている。
その様子が面白くって、わたしたちは、笑ってしまった。
レジーナちゃんは、不本意だったかもしれないけど、これで同じグループだ。
仲良くなれたらいいな。




