第14話「これが、学生寮!?」
ブレイヴとは。
オリジン・ブレイヴとフォージ・ブレイヴとの違いとは。
ユーシヤ・ストーン(YS)とユーシヤ・ポイント(YP)とは何か。
アスカ先生は、そこまで解説してくれたあと、
「はい。じゃあ、あとはコンソールの中にある学園生活マニュアルを各自で読んで、どう過ごすべきなのか自分で考えてください。以上、解散!」
そう言って、授業を打ち切っちゃった。
アスカ先生は、「最初の授業だから、短めに切り上げた」と言っていた。
だけど、他の先生たちからは、さんざんな言われようだった。
「めんどくさくなって投げたわよ」
と、ソフィア先生。
「なんて、いい加減なやつだ」
と、クラウン先生。
「クズめ」
と、トウコ先生。
それで、アスカ先生が「うるさいよ!」と怒鳴る。
わたしたち生徒は、そんな先生たちの様子を苦笑しながら眺めつつ講堂から外へと出て行った。
「面白い先生たちだったね」
そう言うと、アンジェちゃんが笑った。
「そうね。相変わらず仲が良いのか悪いのかわからない人たちだったわ」
「授業中に、後ろからソフィア先生たちがツッコミを入れたりするの面白かったね。アスカ先生と漫才でもやってるみたいだった」
「本人たちには、そのつもりなんてないんでしょうけどね」
「しかし、おちゃらけてるように見えて実力も実績も半端ない偉大な先達です。敬意を持って接しましょう」
と、マナ。
「敬意かぁ。目の前で実力を見せてくれたら、すんなり敬意を持てるんだけどなぁ」
「まあ、学園生活は半年もあるんだし、その機会もあるんじゃない?」
そんなことを話しながら、講堂前の広場にやってきたとき、
「お~~い! 集合してくれ! これから、みんなを学園の寮に案内する! 全員、先輩であるこのセイラについてきてくれ!」
セイラ先輩が、大きな声を張り上げていた。
「学園の寮だって! どんなところなんだろう!」
「行けばわかるわよ」
「その通りです」
わたしは、アンジェちゃんやマナと一緒に、引率するセイラ先輩のあとについて行った。
他の生徒のみんなもだ。
学園の寮は、校舎のある高台の中腹から、少し歩いたところにあるらしい。
景色が良いといいなぁ。
「あっ! ほらほら、マナ! ジュンちゃんがいるよ!」
前の方をジュンちゃんとレアちゃんが、並んで歩いているのが見えた。
ふたりを指さしながらマナに教えてあげたけど、
「ああ、そうですか」
と、つまんなそうな反応をされた。
「あ、あれ……? そんな反応……?」
「どういう反応をしてほしかったんです?」
「い、いや……だって、マナってばジュンちゃんに助けてもらったとき、ちょっぴりジュンちゃんに興味ありげな瞳をしてたからさ。もっと、ときめいた反応をすると思ってたんだけど」
「はぁ……まあ、そうですね。あの乱暴者が投げつけた鉄球から守ってもらったとき、たしかに、すこしときめきましたよ。不覚にも。かっこいいなって」
「だったら、なんで今は反応が薄いの?」
「だって、あの人……フォージ・ブレイヴじゃないですか」
「……あっ」
そ、そうか……マナは、そういう子だった。
「フォージ・ブレイヴだったら、なんだっていうのよ?」
何も知らないアンジェちゃんが、マナに訊ねた。
「フォージ・ブレイヴなんて、アーキ・ヴェセルナーというおもちゃを着てブレイヴごっこをしてる偽りのブレイヴですからね。本物のブレイヴであるオリジン・ブレイヴじゃないのなら、なんの興味も湧きません」
「ちょっ!? あんた、そんなこと言うもんじゃないわよ……!?」
マナの言い草に、アンジェちゃんがびっくりしてる。
「鉄球を受け止め砕いたときに感じたジュンという人の波動は、シャルロットのようなオリジン・ブレイヴが放つ波動と波長が似ていたから、てっきりオリジンだと思ってました。ですが、さっきの授業でアーキ・ヴェセルナーを装着していたということは、フォージ・ブレイヴに違いないです。あ~~あ、フォージ・ブレイヴのくせに、紛らわしいことしないでほしいですね。自分のときめきを返してほしいですよ。まったく!」
ふん! と、鼻息を荒くするマナ。
「ま、マナ! 言葉に気を付けてよ! 周りにいる子たち、ほとんどフォージ・ブレイヴなんだからさ!」
「自分のぼそっとした声なんて、誰にも聞こえてませんよ。まあ、聞かれたとしても事実しか言ってないですし」
「だ、だから……! それが、危ないんだってば……!」
あ~~、ほんと……マナってば、困った子だよ。
「ね、ねぇ……この子って、もしかして……?」
アンジェちゃんが、小声で訊いてくる。
「う、うん……ちょっと、ブレイヴの見方に偏りがあるんだ」
「ま、まさか……ミラ……ああ、やっぱりいいわ。偏りがあるのね。まったく、あんたも難儀な友だちを持ったわねぇ」
「は、はははっ」
わたしは、乾いた笑い声を上げるしかなかった。
マナと学園生活を一緒にできるのは嬉しい。
だけど、マナの性格を知っているから、何か問題を起こさないか心配なんだよね。
「ねぇ……マナ」
「なんです?」
「マナにも、マナの考えがあるのはわかるよ。だけど……」
「わかってますよ。シャルロットの迷惑にならないよう露骨に態度には出しません」
「…………わたしの迷惑っていうか、う~~ん、なんて言ったらいいんだろう」
「そんなことより、なにやら賑やかな建物が見えてきましたよ」
マナが、前方を指さす。
そこには、ポップなカラーリングの可愛らしい建物が、ずらっと並んでいた。
「わ~~ぉ! あれが、学園の寮なのかな!」
建物の前には、噴水があってベンチやテーブルも並んだ広場になってる。
「みんな! ここが、キミたちが半年間暮らすことになる学生寮だ! ひとまず、手前の広場で集合!」
セイラ先輩が、学生寮の前の広場に、みんなを集めさせた。
生徒のみんなは、学生寮や広場の様子を「おお~~」と興味津々って感じに眺めながら、ぞろぞろと集まってくる。
「ふ~~ん? ちょっと、子どもっぽい造りだけど悪くない雰囲気だわ」
と、アンジェちゃん。
「まあ、こんなものでしょう。ちなみに、生徒の数より部屋の数が多いそうなので、自分もシャルロットたちと同じように寮で生活できるそうです」
と、マナ。
「…………そっか」
「だいじょうぶ。寮の中で、揉め事なんて起こしませんよ」
「…………うん」
……みんなと寮で暮らす中で、マナの偏りがほぐれたらいいんだけど。
「まず、寮について簡単に説明する。寮と言っても、それ一棟が2階建ての家のようなものだ。生徒のみんなには、4人でひとつの屋根の下で、半年の間、暮らしてもらうことになる」
「あの建物ひとつひとつが、寮の部屋ってこと!?」
わたしが、思わず声を上げると、セイラ先輩は「ふっ」と笑った。
「そういうことだ。中には、4人分の個室とリビングやキッチンもある。もちろん、シャワーやトイレも完備してある。普段、暮らしている自宅と、そう違いはないだろう」
す、すっごい……!
寮って言うから、てっきり大きな建物の中に、部屋がたくさんあって、その中で共同生活するようなのをイメージしてたのに……!
ここに並んでるカラフルな建物ひとつひとつが、寮なんだ。
視線を広場の先に向けると、まだまだ寮の建物は並んでる。
どれだけたくさんの寮の建物があるのかパッと見てわからないくらいだ。
ここに、300人以上の生徒が暮らすってなったら、それはもうひとつの小さな町みたいなものじゃん。
あらためて思うけど、すんごい学園だ。
「さて、それぞれが住むことになる寮のグループ分けなんだが……。事前に、先生方が生徒たちを割り振るはずだった。しかし、残念ながら作業は間に合わなかったそうだ。だから、いまからグループ分けをしようと思う」
セイラ先輩は、タブレット端末を片手にみんなに言った。
「え~~? いまからぁ?」
「これは、おそらくアスカ先生あたりが、めんどくさくなって投げましたね」
と、マナ。
「……なんてこったい」
「というわけで、いきなりで申し訳ないが、みんなで話し合って4人グループを作ってくれ! まだ、到着していなかったり姿を隠してしまった生徒もいるが、なんとかしてくれ!」
なんとかしてくれって……セイラ先輩も、意外とテキトーだなぁ。
「わたしたちは、わたしとアンジェちゃんとマナで、3人は決まりだね」
「……私が、あんたと同じグループなのは確定なのね。まあ、別にいいけど」
「自分は、学園の手伝いで留守にすることもあるかもしれませんが、基本的に生徒と同じように寮に住んで良いらしいので問題ないでしょう」
「うんうん。じゃあ、あとひとり……そうだ! 赤い稲妻のイケメン! あの子が良い!」
マナが、きょとんとする。
「赤い稲妻のイケメン……? なんですか、それは?」
そういえば、密航者騒ぎやレジーナちゃんとのケンカのせいで、マナには、まだ赤い稲妻のイケメンのことを話していなかったんだっけ。
「実は、こういうことがあってね」
わたしは、赤い稲妻のイケメンのことを話した。
「ははぁ、それは運命的な出会いの予感ですね」
「そうなんだよ! だから、同じグループになりたいんだ!」
「そうは言われましても、それらしい方は見当たりませんが。この惑星エンカにいるということは、学園の生徒でしょうに」
「そうなんだよ! それが、おかしいの! 講堂にも、いなかったし!」
「赤い稲妻ってやつが、あんたの夢や幻なんじゃないの?」
と、アンジェちゃん。
「そんなわけないよ! ちゃんと、見たもん! 槍で突かれた感触もリアルだったし!」
「だから、それが夢や幻だったんじゃないのって言ってるわけよ」
「そんなんじゃないってば!」
わたしたちが言い合ってると、セイラ先輩が様子を見に来た。
「どうした? 何を騒いでいるんだ?」
そうだ。
セイラ先輩なら、赤い稲妻のイケメンについて何か知ってるかもしれない。
「セイラ先輩! 実は……!」
わたしは、セイラ先輩に探している子のことを話した。




