第12話「オリジン・ブレイヴとフォージ・ブレイヴの違い!」
授業は、まだ続くらしい。
アスカ先生が、壇上からわたしたちを見下ろしている。
「え~~~~、まずブレイヴについてです。ここにいる生徒の諸君ならば、すでに知っていることと思うが、ブレイヴにも2種類いる。みんなならわかるね?」
「はい! オリジン・ブレイヴとフォージ・ブレイヴの2種類です!」
わたしは、びしっと挙手して答えた。
「元気な回答、ありがとう。その通り。ブレイヴにも、オリジン・ブレイヴとフォージ・ブレイヴの2種類が存在する。そのふたつが、どう違うのか。具体的に見ていこう」
アスカ先生は、わたしに手招きをした。
「キミと……あと、そうだな。ああ、そっちの黒髪のキミ。舞台まで上がってきてくれ」
「え? わたしとジュンちゃん?」
指名されたのは、わたしと斜め後ろにいたジュンちゃんだ。
「いよ! ジュンちゃん! 一発、かましちゃって!」
「何をだよ」
隣のレアちゃんって子に、やんやと囃し立てられながらジュンちゃんが立ち上がって舞台まで歩き出した。
「シャルロットも、一発、かましちゃってください」
「何をさ」
マナも、ぐっと両手を握りながらわたしを送り出してくれた。
「えへへ……いやあ、前をすみません。えへ、へへ」
わたしとジュンちゃんが、舞台まで上がるとアスカ先生も壇上から離れた。
「わざわざ、ありがとう」
アスカ先生は、わたしとジュンちゃんの間に立ち、そっと肩に触れた。
「さて、ここにいるふたりが、それぞれオリジン・ブレイヴとフォージ・ブレイヴの卵だね。綺麗な青い髪のシャルロットくんがオリジン・ブレイヴ。黒髪でクールな目つきのジュンくんが、フォージ・ブレイヴだ」
講堂中が、ざわっとなった。
「あの青髪の小さな子が、オリジン?」
「見かけによらないものなのねぇ」
「でも、あたし見たよ。あの子が、ナイフを食べるとこ」
「じゃあ、やっぱりオリジンなんだ」
「っていうか、ナイフを食べるってどういうことよ」
どうやら、みんなが騒いでる原因は、わたしみたい。
なにさ、わたしがオリジンだからって、そんなに不思議?
「生まれながらに、特殊な能力を持った人たちのことを、この世界ではオリジンと呼んでいる。そして、そんなオリジンがブレイヴになったとき、オリジン・ブレイヴと呼ばれるんだ」
アスカ先生は、ジュンちゃんの背中に手をやり、少し前に押し出した。
「そして、オリジン・ブレイヴの能力を再現したガジェット――アーキ・ヴェセルナーを装着したブレイヴのことをフォージ・ブレイヴと呼ぶんだ」
そうか、わたしとジュンちゃんが指名されたのは、オリジン・ブレイヴとフォージ・ブレイヴを並べて比較するためだったんだ。
「だが、みんなもいま目にしている通り、見た目からは、オリジンなのかフォージなのか、判断はつかない。ここにいるふたりにも、違いがあるように見えないだろう?」
わたしは、チラっとジュンちゃんの方を見た。
ジュンちゃんも、わたしの方を横目で見てる。
アスカ先生が言うように、わたしとジュンちゃんを比べても、なんの違いもないように見える。
「……キミ、変身はできるかい?」
アスカ先生が、小声で訊いてきた。
「そんなに見た目は変わんないけど、いちおう」
「それでいいよ。合図したら、変身して」
こくんとうなずくわたし。
「そっちのキミも、合図したらアーキ・ヴェセルナーを装着してくれるかな。キミのリード・ブレスレットに、すでに支給品のアーキ・ヴェセルナーがプリセットしてある」
「わかりました。いつでも、どうぞ」
ジュンちゃんも、こくんとうなずいた。
「しかし、オリジン・ブレイヴとフォージ・ブレイヴには、やはり大きな差がある。いま、それを見せてあげよう。ふたりとも、いまだ!」
よし! アスカ先生の合図だ!
「ブレイヴ・チェ~~ンジ!」
わたしは、両手を振り上げて叫んだ。
「ブレイヴ・チェンジ!」
ジュンちゃんは、短く力強く声を上げた。
きら~~~~ん――!
光が、わたしを包み込んでいく。
その光景をわたしは、頭の中でイメージとして眺めることができた。
きら~~ん――!
わたしの身体に、キラキラした粒子が集まって、学生服から青いシャツと短パン姿に変わった。
そして、頭に小さな王冠みたいなのが現れる。
それから、背中には青いマントが、右手には丸いお鍋の蓋みたいな盾が、腰にはビー玉がはめ込まれたベルトが、足には羽の生えたブーツが、次々に現れた。
そのあと、ぱぁ~~んと光が弾けると、そこには勇者の姿に変身したわたしがいた。
どぉ~~ん――!
変身した拍子に、わたしの全身から青いオーラが噴き上がる。
ちょっと気合を入れたもんだから、衝撃波が講堂の中を駆け巡ることになっちゃった。
「ひえ~~~~!」
「なにこれぇ!」
「きゃ~~! 台風みたいだわ!」
ありゃ……ちょっと、やり過ぎたかな。
ざわつくどころか、悲鳴まで上がっちゃってるよ。
「そ、それが……あんたの変身姿……なのか?」
ジュンちゃんが、口元をぴくぴくと引きつらせながら、わたしを見てた。
そう言うジュンちゃんの姿も変身してる。
スクール水着のようなインナーの上に、黒っぽい色の装甲フレームが装着されていて、背中には、バックパック型のスラスターが付いてる。
手には、銃身が短いタイプのライフルとシールドが握られていた。
「おお~~! か、かっこいい! それが、ジュンちゃんのアーキ・ヴェセルナーなんだ!」
「ああ、まあ……学園の支給品だけどな。しかし、なんだな。お前の……その姿は、個性的というかなんというか」
ジュンちゃんは、まるで笑いを堪えてるかのようだった。
わたしが、きょとんとしていると、
「ぷ~~!」
「なにあの、格好!」
「幼稚園の学芸会みたい!」
さっきまで、悲鳴まで上げて騒然としていたみんなが、今度は爆笑してる。
しかも、みんなの視線は……わたしに集中してた。
はっ!?
わたしは、いまの自分の姿を思い出した。
変身した後の姿は、折り紙で作った王冠を被り、お母さんのスカーフをマントに見立て、お鍋の蓋を勇者の盾だと思いながら構え、ビー玉を接着したよれよれのベルトを腰に巻き、よそ行きのブーツにニワトリの抜けた羽を飾りにつけたイメージが、そのまま反映されちゃってるんだった……!
こ、こんな格好じゃ……笑われちゃうよ!
「ええっと! こ、これは! その! まだ、ちゃんと変身した姿を想像できないから、仮の姿なの! ほんとは、もっとカッコイイ感じになるはずなの!」
なんとか言い訳するけど、みんなの笑い声は止まらなかった。
「オリジンって、もっとすごい人たちなのかと思ったのに!」
「あんなおかしな格好に変身するなんてウケる!」
むきぃ~~!
だんだん、腹が立ってきた!
「お前ら、うるっせぇ~~よ!」
講堂が揺れるくらいの大声で怒鳴ったのはレジーナちゃんだった。
え? れ、レジーナちゃん?
「なに、笑ってやがんだ! 見てくれは珍妙でも、そこじゃね~~だろ! オリジン・ブレイヴは、見た目や装備を自分たちの能力で変えられるってところが、フォージ・ブレイヴと違うところだっつ~~実演だろうが! 見た目は、くそ笑えるけどよ!」
レジーナちゃん……わたしのことをフォローしてくれてるようで、ちょっとけなしてるような気もする。
でも、笑ってるみんなのことを怒るなんて、すこし意外だったな……。
「はいはい!みんな、静かに!」
ぱんぱん! と、手を叩くアスカ先生。
「いま、そこの彼女が言ったように先生が言いたいのは、オリジンとフォージの違いについてだ。オリジン・ブレイヴは、自らの能力で武器や防具も生み出せる。中には、自分の姿そのものを変えられるオリジンもいるんだ。さらに、オリジン・ブレイヴは、こんなこともできる」
ホログラムの映像が、講堂のいろんなところに現れた。
その映像には、手から光線を放ったり、炎の球になって体当たりしたり、他にも氷の刃を飛ばしたりするブレイヴの姿が映っていた。
「映像は、オリジン・ブレイヴの能力のごく一部だ。こんな風に、オリジン・ブレイヴには、様々な属性を操る能力や特異な身体能力がある。そして、フォージ・ブレイヴは、オリジン・ブレイヴの能力を再現した機械仕掛けのガジェット――アーキ・ヴェセルナーを身に着けることで、オリジン・ブレイヴに負けない力を発揮するわけだ。この両者の違いについて、わかってくれたかな?」
みんなは、「お~~」と唸りながら、うなずいた。
「オリジンに生まれなくても、誰でもアーキ・ヴェセルナーを装着すればブレイヴとして活動できる。まあ、もちろん星域によってはライセンスが必要だったりするが、基本的に、誰しもブレイヴになれるわけだね。そのため、みんな一度は、ブレイヴを経験すると言われているんだ」
そうなんだよね。
ブレイヴは、何も選ばれた人たちがなるわけじゃない。
誰でもなれるし、ならない道を選ぶこともできる。
だけど、みんながみんな、イサミちゃんやジュリアンさんのような有名なブレイヴになれるわけじゃないんだよね。
わたしは、どうせならイサミちゃんのような歴史に名を残せるようなブレイヴになりたい。
いや、きっとなるんだって、そう決めてるんだ。
「大昔は、オリジン・ブレイヴばかりだったそうだが、いまやその数は減り続け、フォージ・ブレイヴがブレイヴの大多数を占めている。ここにいる生徒たちも、ほとんどがフォージ・ブレイヴの卵だろう」
アスカ先生が、そう解説しているとき、マナが「ムッ」と顔をしかめたのをわたしは見逃さなかった。
……お願いだから、大人しくしててねぇ。
「だが、そのどちらも広い意味では同じブレイヴだ。そこに上下はない。まあ、何が言いたいかというとオリジンとフォージで違いはあるし、ここに集ったみんなにも主義や主張の違いもあるだろう。だが、みんな同じブレイヴを目指す生徒だ。お互いを尊重し合い仲良く学んでいってほしい。トラブルは、みんなが損をするだけだから、くれぐれも揉め事を起こさないように! わかったね!」
そうアスカ先生は、締めくくった。
「結局、言いたかったのは対処する自分が面倒だからトラブルを起こすなってことね」
と、ソフィア先生。
「それでも、教師か」
と、クラウン先生。
「クズめ」
と、トウコ先生。
「う、うるさいなぁ! 綺麗に、締めただろう!」
後ろを振り返り怒鳴ったアスカ先生は、くるっとわたしたちに向き直り、
「はあ……まあ、なんだ最初の授業『オリジン・ブレイヴとフォージ・ブレイヴ』の違いについては、だいたいわかったかな?」
は~~い、とみんなが返事をするとアスカ先生も、満足そうに笑った。
「では、次は学園での生活についての説明を始めるよ。みんなも、めんどくさいだろうが、もう少し耐えてくれ」
と、アスカ先生。
「あなたが一番、めんどくさそうじゃない」
と、ソフィア先生。
「やる気がないくせに、教師なんか引き受けるからだ」
と、クラウン先生。
「クズめ」
と、トウコ先生。
さんざんな言われようなアスカ先生だった。
さあ、次は学園の生活についてのお話なんだってさ。




