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P4TCHW0ЯK_W0R⧉D  作者: 哉守柚栞
第一章
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24/29

第八話 F4D⧉И⧉ ⧉Σ⧉Ƨ (3)


『気が付いたとき、俺様は窓からぶっ飛ばされ、中庭の井戸の前に転がっていた。儀式のクライマックスを見逃した俺様は地返しに巻き込まれてどうにかなっちまうのか肝を冷やしたわけだが、夜のうちに気を利かせたカイリスが拾い、眠りこけている主の部屋の机に置いてくれたって訳だ。つまり、細かい気配りができるあいつは秘書が似合う』

 それなりに長い付き合いになるガンターは、寝過ごしていたりするとウサ耳的に煩い音量で声をかけてくれるのですが、その日はそんな小言でイコナさんの素敵な目覚めを邪魔しようとしてくれました。

「……実はさっきからずっと起きてるんですよ。助けてくれませんか?」

 朝。旧時代の素敵なマットレスが敷かれたベッドの上で、薄着な私を抱き枕と勘違いして眠るのは、死にゆく運命を素敵少女の力で覆したばかりの竜のキメラ。

 薄水色の長い髪に、白いティアラのような角。整った顔立ちには民族的な化粧を思わせる形で白い鱗が浮き、閉じられた目には長いまつげ。私の右足を挟むように脚の間を通しているので、立派な白い尻尾の内側、水色の生々しい感触が足全体に感じています。

 ぴたりと吸いつくような鱗の感覚。冷たく気持ちが良いです。

『アマリはもう竜の力を失ったんだろ? お前でも振りほどけるんじゃないのか?』

「竜の力を失うとしか指定していないので、マナで増強されていた力が失ってるだけなのかもしれません。あとサービスしすぎました」

『あ? わかりやすく言ってくれ』

「一部の筋繊維が竜の状態で残ってるのか、あるいはその部分に別の生物の特徴が出ているのか……女の子としてはめっちゃ強い力です! ぜんぜんほどけません!」

 これだけ騒いでいるのに気持ちよさそうな寝息は変わらない。向きを変えられるのが救いですが…なんて幸せそうな寝顔! 起こすのも罪悪感を抱く覚悟が必要です。

 このまま好きなだけ寝かせてあげたい気持ちもありますが、喫緊の問題があり、なんとか彼女には起きてもらいたいところ。がんばって拘束を解こうともがいてみますが、本当に動かない。竜とゴリラのキメラか? 最強の組み合わせの一つですね。図鑑で見たことありますが、かっこいいですよね、ゴリラ。

「アマリー? 起きてください。今日は地返しの日ですよー?」

「んぅ………やだ…」

 身じろぎ、そのまま抱き寄せられました。やだって。

「わたし、もうドラコニアンじゃないもん……無茶できないから……今日はこのまま、姉さまと寝る…」

 夢の中から喋ってるような舌足らずな口調は魅了の力を秘めていましたが、私は彼女の腕の中でうにうにと動き、睡眠を妨害。

「甘えるなとは口が裂けても言いませんが、自由奔放が大好きなイコナさんは拘束されることが苦手です。というか本当に起きてください! 割と限界が近いので!」

「んぇー? どうしたの…?」

 拘束が解かれ、寝ぼけ眼をこする彼女を置いてベッドから飛び降ります。スリッパに足を通し、急ぎ足で部屋を後に。走るのは、危険かも。

 ドアを開ければ、次の障害が廊下で黄昏ていた次第です。カイリス。

「おはようイコナ、昨夜、ガンターが外に」

「その件はありがとうございます。では」

 階段へ向かおうとしましたが、腕を掴まれてしまいました。あぶな。尻尾だったら極刑ものでした。

「待ってくれ。人造アンカーの件なのだが」

「待ってほしいのはこっちです。今大変なんです。緊急事態なのです。離してほしいのです」

 捕まれた手を解こうとしますが、無理でした。え、もしかして儀式失敗してます? 竜の力二人とも残ってるのでは? 結晶の力でそこまで対価を減らせたんですか?

「少しで構わない。昨夜言っていた村の守護者とは元老院の事だろう? どういう事か教えてくれないか」

 逃すまいと掴む手は一般的な成人男性の力のものです。それすら振りほどけない自分の非力さに呆れてしまいますが、そもそも力が入れられない! そんな真剣な顔で問われても、今は答えられないのです!

 誰ですか、彼が細かい気配りができるため、秘書に向いてるなんて言った人は。私が今必死なのがわからないのか!

「元老院の事は元老院に聞いてください! なんでも話してくれますよ! アマリも連れて行ってみたらどうですか? お話だけなら私のラジオでもできるので、この! とりあえず手、離し…………あ」

「え」

 振りほどこうと、変に力を入れたのがいけませんでした。別の部分が緩むというか、変に力が入ったのか。こう、しょろっと。

 あとはまぁ、止まらないですよね。

「あ、やっ、やだっ! み、みるなぁ! わ、わあああああ!」

 顔を真っ赤にして、涙目で、音をかき消すようにわめいて。

 寝る前にお手洗いに行かなかったからとか、お風呂の前にたっぷり水分補給したからとか、実はエーテル中毒の影響とか、言い訳は嘘も本当もいっぱいあるんです。

 本体が錯乱してしまいましたので、冷静担当イコナさんが名誉を守るためにもご説明しましょう。響く色んな音は聞かないふりしてください。

 実際、エーテルの過剰供給は体の機能に影響を与えます。基本的にエーテルはマナに変換され、全身の血を媒介して保存されるわけですが余分なマナって処理しきれないと、体外に排出されるんです。マナは血に混じるという事は、血中の老廃物をこしとる器官が似た動きをするわけで、つまり余分なマナは通常の生理現象に交えて体外に排出されるわけです。汗とか呼気にも含まれますね。

 尚、今回の件に関しては取り込んだエーテルの密度や純度が桁違いでしたが、直前に体内のマナ濃度が極限まで減っていた事もあったから、寝ているうちに決壊するほどにはなりませんでした。それでも気配を感じて起こされる前に眠りから覚めたのです。

 ちなみに、エーテルやマナの過剰供給は内臓機能に負担がかかるので、最悪血が混じったり、重症化すると腹部に痛みを感じる事もあるとか。今回の私の摂取量だと十分にありえる事。儀式のために限界までマナを体の中にため込みましたからね。破裂しちゃうかと。

 音が止まり、現実を直視する時間。

 床に広がる、温かい濃度の高いマナ溶液。幸い、血は混じってませんが、代謝によって生成された量はそれなり。

 圧倒的知識量と規格外さを見せつけてきたイコナさんの完璧像、これで壊れちゃいましたね。

 ついでに、兄妹の絆にも亀裂入れちゃいました。ドア、開けっぱなしだったのです。

 床にへたりこんで、わけわかんなくなって泣きじゃくる私を見て、アマリがカイリスに放った一撃は、今まで見たのがお遊びだったみたいな強烈な一撃でした。威力は落ちてましたが、彼は窓の下で沈黙する事となってしまいました。

「ね、姉さま? だいじょうぶだよー、ほら、お風呂行こう?」

「う、うぅ……うん…」

 錯乱して子供のように泣く私に接するアマリはまるでお姉さん。

 こうして朝からお風呂に入る事になりました。不本意ながら。

 閑話休題。

 朝から突発的に発生した新規の問題を気まずさを抱えながらも適切に処理し、普段着という名の旅装に着替えた私は、昨夜の一件で荒れ果てた作業部屋のお掃除をしていました。

 普段着。つまり、シャツにショートパンツなんて呼ばれ方もする、尻尾用の穴の開いた短い黒ズボン。コルセットにブーツ、それと装飾布やポーチが一体となったベルトと金縁のハイソックス。それに、フード付きのほぼ黒の深緑のショートジャケット。仕上げに無骨な見た目の硬いブーツ。

 どれも特別素材の一級品。ジャケットはもしかしたらナイフくらいは防げるかもしれないです。

 このまま旅立ててしまうような格好で、床に散乱した紙を拾い集めていたら、カイリスが気まずそうにこちらを見て言います。

「まさかひっそりと旅立つつもりではないだろうね?」

 心配そうな彼の手には箒、足元には塵取りです。紙以外にも棚に収まっていた器やらが割れてしまっているのです。

「……回収したエーテル結晶が無くなったのは事実ですが、アンカーについては本当に心配ないです。今朝も言い…ましたが…」

 拾った無地の紙束に顔をうずめてしまいます。顔が熱い。

『俺様は専門外だが、この村を影から操ってた人工知能ちゃんは自分の存在が、村が漂流しちまう原因だと気づいたらしい。で、村のために自ら消える事を選んだんだとよ』

「……それは、どういう事かな」

 深呼吸を繰り返しているうちに頬の熱も収まり、紙束を隅の木箱に積みます。まだカイリスの顔はまともに見れないので、倒れた棚の中を整理しながらお答えしました。

「昨日の夕方、人工知能から接触があったんですよ。村の状況とかキャラバンが来てからの裏舞台とか語るだけ語った挙句、エーテル結晶を使ってアマリを救ってほしいとまで言われました」

 そのアマリですが、今は食堂の方に三人分の遅めの朝食を受け取りに行ってくれてます。この部屋には作業用の広いテーブルもあるので、ここでお話をしながら朝ごはんの予定。

 割れてしまった窓の外は中庭に面しています。遠くからはバリスタが稼働する音や、村人の掛け声が聞こえてきていました。

「元老院は、冷たく指示をするばかりの存在だ。そんな指示をするとは正直…」

「人工知能にしては人間味があると思いますけどね。自分の役目に忠実なだけで」

 倒れた本を直して、落ちそうだった割れ物もちゃんと立てて。

 次は壁に立てかけた横長の机を、部屋の中央に戻そうとすれば、カイリスが対面を持ってくれました。

「……カイリスは私の事、そんなに好きじゃないですよね?」

「それは、恋愛感情云々の話かね?」

「人付き合いとしてという意味で」

 こちらが机を持ち上げようとすれば、合図無しに彼も合わせてくれて、難なく机を配置できます。

 気難しい顔をして、彼は素直に答えました。

「知識をひけらかすあなたは、正直苦手だ。気楽にふるまっているように見えるくせに、その行動は論理的で合理的。おまけに未知の力を持ち、強大な獣をも従える。あなたはまるで住む次元の違う、魔女だ」

「畏敬の意味を込めての呼び方なのでしょうけど、あんまり嬉しくないです。イコナさんはこんなにも愛らしいというのに!」

 両手を上げて愛らしい者の威嚇のポーズをしてやりました。硬かった表情が少しだけ柔らかくなります。呆れるようなため息が添えられてましたが。

「言葉一つで先の事や、自分の事を見透かされるような言動は、人工知能に似ている。まさに盤上の駒のような気分になる。あなたは駒を動かすのが好きな人だろう?」

「ふっふーん! その通り! 厳密には駒の動きを把握して、あたふたしてるのを眺めるのが好きです。物語を読みながら、自由に介入できるそんな立場が好きですよ。今回のアンカーに関する一件は、中心に立ちすぎてて、ちょっと嫌な立ち位置なんですけどね」

 私の一言で村とキャラバンの抱える問題が一発解決、さらに少女一人の命を救うなんて、英雄的すぎますね。カイリスはもっと私に感謝すると良いでしょう。いや、感謝してるからこそ、難しい顔をしているのですね。

 掃除のために壁に寄せていた椅子を一つ取って、席に座ります。

「人造アンカーの件で、キャラバンを敵に回すことは無いです。だからこっそり旅立つ事もないし、アマリや自分を連れて行く交渉も必要ありません。あなたが今日する事は、嫌ってる相手とお話して先入観を取り払い、ついでにイコナさんに対する苦手意識を薄める事です」

 机に置いたのは、旧時代のラジオ。少しアノマリーに寄った歪んだ存在。

「……必要な事なのかい?」

「それはもう。人工知能のお化けなんて見たくないでしょう?」

 どうせ消えゆくなら、未練も無く穏やかに。彼女の心や命云々はともかく、私の手間を一つ省いてくれてるわけで、これくらいのお膳立てはしてあげます。

 そのタイミングでちょうど、いい香りが遠くから漂ってきました。

「おまたせー。食堂忙しくて、簡単なの作ってきたよ」

 アマリが運んできてくれたのは、パンに具材を挟んだ軽食。起きるのが遅かったので、お昼までそんなに間隔が無いし、丁度良い感じです。

 机は三人で広くスペースが使えるため、適当に距離を開けて座ります。焼いた卵に、少量の野菜と、塩漬け肉が厚切りのパンに挟まれてます。なんと贅沢な軽食か。

 脂のうまみとか、シャキシャキの葉っぱとか、小麦の香りの芳醇さとか、既に舌が肥え始めてる自分に、若干コロニーでの食生活が心配になってしまいます。

「姉さま今日はどうするの?」

 よく噛んで味わって、飲み込んでから返答。

「今日は石細工職人さんの所に向かう予定です。村のシンボルが決まったそうなので、それについての確認と、あとは、キャラバンにも話を聞きに行きますね。村の外の環境の固定は、彼らに都合の良い環境じゃないと困るので」

 人造アンカーについては、私がする事は本当に何もないです。元老院の正体、人工知能が自壊すれば、それだけで村の本来のアンカーが力を取り戻し、セトルメントは無事に小規模コロニーへとなるはずです。

 それでも表向きは私が人造アンカーを作ると周りは思っているので、シンボルの完成に合わせる必要がありますし、外の環境次第では、一週間見送る必要もありますね。

 その辺、元老院は理解してくれてるはず、なのですが。

「わたしも姉さまについて行ってもいい?」

「いいですよ、と言いたいところですが、二人は体の変化に気を配ってください。普通に生活して気付く違和感もあるはずです。それに、まずは色々話をする必要がありますし」

 机に置いていたラジオに手を伸ばして、ダイヤルはそのままで電源だけ入れます。

 アンテナを伸ばす必要はなく、ノイズが聞こえたのは最初だけ。すぐに感情の冷めた声が聞こえました。

『…おはようございます。カイリス、アマリ。それにイコナ様』

「……元老院。その端末で、本当に対話ができるのだね」

 警戒心を上げたカイリスに、ラジオは淡々と答えます。

『ラジオ端末は私の声を拾ってるに過ぎません。私は村で起きている事を把握する事が出来ます。時間をもらえるなら、私は二人に全てを話す準備があります。ですが、その前に』

 牙を晒してパンに噛り付いた私に振り返るような間を開けて、彼女は事務連絡のように言葉を紡ぐのです。

『イコナ様。人造アンカー作り偽装の件、承りました。私はあなたのタイミングで自己破壊を開始します。それと、アマリの件についても、感謝を。一部始終を観察させていただきましたが、まさしく竜の力。お見事でした』

 頭を下げる代わりに、口調に精一杯の感情を乗せたのがわかりました。褒められて尻尾がご機嫌に揺れちゃいます。

『あなたのおかげで村は安定期に入るでしょう。あなたのおかげで、私は心置きなく機能を停止できます』

「心…? キミにそんなモノがあるのかね?」

 敵意と警戒心をむき出しにしてラジオを睨むカイリス。彼女はそこにはいないのですが、声がする方って自然に見ちゃいますよね。私はガンターで慣れてますが。

『心の有無は私には証明できません。しかし、村の安定のために私の存在が障害になる事が判明した際、アマリの延命についてを考えました。それがカイリス、あなたの生きてきた理由だったからです』

「薬を理由に散々取引をしてきたのを忘れたのかね? 私が元老院に忠実だったのは、あくまでもアマリのためだ」

 憤りを視線に滲ませるに留める彼は理性の人。私とアマリがいる事を理解して、あるいは彼自身の性格からか、怒声を上げる事はありませんでした。

『私はあなたに好まれる必要はなかった。あなた達の出生は私の責任であり、恨まれるべき存在です。残酷な選択が必要なものだと信じていた。その代わりにせめてと、計画で産まれた全ての子に、私は特別な配慮をしていました。あなたには安定剤であり、アマリには、自由だった』

「それは、私が幼い頃にした契約だったろう…」

『肯定します。そして、来るべき時のための交渉材料でもありました。ですが、良くも悪くも、ドラコニアン計画は、断念しても問題なくなりました。私のしてきた選択は、間違いだった』

 カイリスが睨みつける目のまま視線だけを無関心を装って食事を頬張る私に向けます。怖いのでやめてほしい。

『自壊の選択肢が村の未来に繋がる事。それに気付いた時、アマリの体の事について最初に検討しました。彼女の事は計画を進めた私の責任だと感じたからです。故に、薬を用意できるだけ用意し、薬の製造法も検討しましたが……無駄でした。イコナ様の処置は適切に機能しています。安堵、というものを私はおそらく感じています。これは、ドラコニアン計画の優先度を引き下げた際にも感じた反応です。心の証明にはなりません。しかし、私が確かに感じたモノです』

 彼女は自身が中核型クラスターの要である事を知っています。自身が既に旧時代の遺産ではなく、意思を持つアノマリーである事に気付いているのでしょうか。

 いざ自壊の時になって、自身の命について未練が残ってたらどうしましょうかね。ガンターが煩そうです。

「あの、わたしよくわかんないんだけど」

 食事の手もとめて話の先を見守っていたアマリが小さく手を上げていました。

「元老院? 人工知能さん? は、わたしが生きられる事、喜んでくれるの?」

『肯定します』

 間髪入れずの即答でした。

『あなたに未来がある事を私は喜ばしい結果だと判定します。あなたが生き続ける事で、これまでの全てが報われる。あなたの存在が、無意味だった私の存在を、僅かでも肯定してくれる。そして、いつの日かあなたが、心の底から産まれてきてよかったと思える日が来る事を願っています』

 変わらない口調で紡がれる言葉には、感情が宿っているように思えます。

 この村の生い立ちは不明ですが、彼女自身の存在が村が漂流する理由ならば、彼女がいなければ村は今頃、立派なコロニーになっていたでしょう。

 村を守ろうとしていただけなのに、彼女自身が最初から最後まで村の障害だった。生の全てを否定された彼女に感情があるならば、生きた時間全てが耐えられない絶望として圧し掛かる。

 感情が無い人工知能でよかった。そう思えば済む話なのに、感情がある事に期待してしまう。

 人工物から派生したアノマリーが心を持ち、葛藤する。ロマンがありますね。私好みです。

 しかし、よそ者が居てはしにくい話もあるでしょう。会話が途切れたこのタイミングで立ち上がり、部屋を出て行きます。

「お話は納得されるまでゆっくりしてください。あと、そのラジオは深部で拾ったアノマリー化してる貴重品なので、絶対に壊さないでくださいね?」

「…もし壊してしまったら?」

 少しは落ち着いて話を聞く心構えができたようで、険しさが僅かにでも和らいだカイリスに、私は笑顔で言います。

「度重なる狼藉で一生イコナさんに頭が上がらなくなります。魔女の世話係はあなたも嫌でしょう?」

「……どうだろうね。考えておこう」

 ん? 拒絶しないって事はまさか、話の内容次第ではラジオ壊すかもしれないって事ですか?

 いっそ地下施設に移動して、直接お話してもらえばよかったです。

 若干の不安を抱えつつ、私は私のやるべきことをやりに行くのでした。


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