【全年齢】第四話:邪神教教祖をポテチで「新世界の神」にさせた話
プリシラ、オイに加えて、エクウスも聡介の家に住みついた。
今回は大場つぐみ先生・小畑健先生の名作『デスノート』をオマージュしたキャラクターが登場します。夜神月、魅上が混ざってますが愛嬌だと思ってください。ご存じでない方はぜひ「デスノート」で検索してみてください。
今回の話は飯テロ要素低めです。
※大場つぐみ先生、小畑健先生。尊敬してます。ごめんなさい。
灼々とした聡介の顔は、体内で吹き荒れる熱の嵐を物語っていた。かつてヴァルフェルト王国で深紅の戦乙女と称えられたプリシラ・スカーレットは、赤い長髪を後ろでまとめると、橋本聡介を見つめて心配そうな顔をしていた。その横では、魔導皇オイ・ヴォーレが氷を袋に詰めて縛っていた。
「プリシラさん、オイさん、申し訳ありません……どうやら熱があるみたいで……昼ご飯の準備ができそうにありません。カップラーメンが台所にあると思うので……それを食べてください」聡介がふらふらとしながら二人に提案した。
「ああ、それで構わん。聡介、無理をするな」プリシラは心配そうにうなずいた。
「カップラーメンは……包装から取り出して……ふたを開けて……中に入っている粉末スープや加薬を入れて……お湯を内側にある線まで注ぐ……あとは三分待てばできます……」聡介は息も絶え絶えで説明する。
「そんなに簡単な方法なのかの……」オイが聡介に質問する。
「はい……お湯はポットにあるので適当に作って食べてください」聡介はそう言い残すと寝室に向かい、扉を開けた。
扉の奥には漆黒の長髪をした青年が立っていた。
切れ長の瞳は静かに、しかし全てを見透かすような光を湛えていた。全身を覆う深紫の法衣は床まで届き、胸元には六芒星の紋章が金糸で刺繍されていた。首元には黒曜石の数珠が幾重にも巻かれ、右手には革装丁の分厚い巻物を携えていた。その立ち姿には威圧感よりも、むしろ穏やかな微笑みがあった。一目でただの人間ではないとわかる、底知れぬ叡智と信仰心を纏った教祖の風格があった。
「あなたは……誰ですか?」聡介は赤い顔を隠そうとせず、少し警戒をしながら声をかけた。
「私はテオス・ナハト。とある神をあがめる宗教の教祖です。あなたは?」その男は物腰柔らかく声をかけてくると聡介の名前を聞いた。
「ああ、私は橋本聡介です」聡介は警戒を緩めて答えた。
「ハシモトソウスケ。どのように書くのですか?」ナハトは巻物を広げ尋ねた。
「ああ、こう書くんです」聡介は机の上のペン立てからボールペンを手に取ると、巻物に『橋本聡介』と書いた。
ナハトは「計画通り……」と片方の口角を上げて小さな声でつぶやいた。
プリシラがノックをして部屋に入ってきた。
「聡介……大丈夫か……」
プリシラは、ナハトと巻物を見た。そして、大きな声を出した。
「な!?聡介!その巻物に真名を書いてしまったのか!」
「おやおや、深紅の戦乙女ではありませんか……奇遇ですね……」ナハトは今までとは表情を変えると不敵な笑みを浮かべた。
「プリシラさんどうかしましたか?」聡介は話についていけず、プリシラの方を見ていた。
「この男の前で名前を呼ぶな!この男の持つその巻物は死の巻物と呼ばれており、そこに真名を書かれた者は死ぬ!聡介、体は大丈夫か?」プリシラは心配そうに聡介に駆け寄った。
「くっくっく……邪神様はあなたの魂を所望している。名前を書いたのは二分前。あと三分でこいつの心の臓は止まって死ぬ……」ナハトは聡介を指差すとそう告げた。
「な……」プリシラがナハトを見て怒りで震えていた。
「そんなバカな、巻物に名前を書いたって死ぬわけないじゃないですか。マンガでもあるまいし」聡介は笑った。
そして、聡介がベッドから立ち上がろうとした。
聡介は「え……」と間の抜けた声を出すと、
ゆっくりと崩れ落ちて、
倒れた。
「そ、聡介!!」プリシラが駆け寄り、抱きかかえた。
「はっはっは……橋本聡介とかいったか。死んでしまったではないか」ナハトは高笑いをした。
「く……貴様……」プリシラはナハトをにらみつけた。
「ぜぇぜぇ……」という聡介の荒い呼吸音が響いた。
「ちょっと立ち眩みしました。ごめんなさい」聡介はそういうとふらふらと立ち上がりベッドに腰掛けた。
「聡介、だ、大丈夫なのか……」プリシラが顔を赤くしながら、聡介の膝に手を置き、心配そうに声をかけた。
「な、生きているだと……馬鹿な……!」
ナハトは死の巻物を手に取ると、「抹消……」とつぶやきながら『五秒後に橋本聡介は死ぬ』と書き込んだ。
五秒間の静寂が訪れる。しかし、五秒たっても何も起きない。
ナハトは息を吸った。
そして、
「抹消」「抹消」「抹消」「抹消」「抹消」「抹消」「抹消」「抹消ぉおおおお!」
そう叫ぶと死の巻物に
『橋本聡介は十秒後に焼け死ぬ』『橋本聡介は一分後に溺死する』『シブタクはバイク事故にあって死ぬ』『橋本聡介は血液を吸われて死ぬ』『橋本聡介は「このド畜生が!」と蹴り殺されて死ぬ』『橋本聡介は亜空間にばらまかれて、粉みじんになって死ぬ』『橋本聡介は止まった時の中で腹をぶち抜かれるが、時計台を破壊してから死ぬ』『橋本聡介は血の雫を垂らして一矢報いるが、時を消し飛ばされて死ぬ』『橋本聡介は加速した世界の中で娘を守ろうとして死ぬ』
そう書き殴った。
「あの……熱のせいでツッコむのしんどいので、徐々に奇妙な死因にしていくのやめてもらっていいですか。娘いないですし」ツッコむべきところはそこだけではないが、聡介は高熱のせいでキレがなかった。
静寂が帳を下ろす。さらに五分が経過した。だが、やはり何も起こらない。
ナハトは聡介の熱で赤くなった顔を見つめた。そしてハッと何かに気付くと叫んだ。
「邪神様ぁぁぁぁぁ!仰せの通りにぃぃぃ!!!」
そして、「抹消」とつぶやくと、死の巻物に『五秒後に聡介は高熱が出て倒れる』と書き記した。
ナハトは再び聡介を見つめた。聡介の呼吸は荒く顔が赤い。
「やはり神はいた!」ナハトは聡介の方を見てドヤ顔をした。
「いや、もともと熱は出てますから」聡介は呼吸を整えながら冷静に答えた。
ガチャリと扉が開く音がした。
「この世界で暗黒神の力を利用する呪術の類は使えんよ」オイがカップラーメンとフォークを手に持ちやってきた。
「な……なんだと。そんなわけはない。神は……神は確かにいる」ナハトが手を振り、オイをにらんだ。
「神とのパスがないからの。わしが精霊術を使うときはこの世界の精霊の力を借りておる。エクウスのように召喚獣のすむ世界のパスを開ける場合は別じゃが、魔術アイテムの類は使えんよ」オイは冷静に説明した。
「そんなはずは……これは罠だ……」
そうつぶやきながら死の巻物を見た。
聡介の顔を見た。
オイの顔を見た。
そして、すべてを理解した。
「私の……負けだ……」ナハトが崩れ落ちた。
「ところでヴォ…魔導皇様、カップラーメンはできたのですか?」プリシラがナハトを一瞥したのち、オイの手元を確認して質問した。
「ああ。これが最後の一個じゃ」オイはカップラーメンをフォークでつつきながら答えた。
「え!?全部食べてしまったというのですか!」プリシラが顔を真っ赤にして抗議した。
「待てども待てどもなかなか戻ってこんし、冷めてしまうからのぉ。しかし、このカップラーメンという麺料理、湯を注いで待つだけという簡易な手順で、あっという間に食べられる状態になるのは時を操る魔法のようじゃ」
オイは、そうつぶやくとフォークで麺をすくい、口に運び、無言で咀嚼した。
そして、目を見開くとまくしたてるようにしゃべりだした。
「蓋を開けた瞬間、ワシの顔面を直撃するのは、幾多の香辛料が複雑に絡み合った『禁断の錬金術』のごとき香り!
まずはこの謎の肉……! 噛み締めた瞬間に溢れ出す肉汁は、まさに獣の咆哮じゃ!噛めば噛むほど味が広がり、深みが出る。すべてを蹂躙するかのようなこの味わいは、まさに『茶色の戦鬼』じゃ!
次に、小ぶりながらも峻烈な存在感を放つ魚介。熱湯という名の『洗礼』を受け、一瞬にして鮮やかな紅蓮を纏って蘇ったその姿。噛みしめれば、プリリッとした小気味よい弾力とともに、凝縮された磯の香りが弾け飛ぶ! まさにスープの荒波を泳ぎ抜く、紅の突撃兵じゃ!」
そこまで言うとオイは一呼吸置いた。
「ごくりっ……そ……そんなにうまそうなものを一人で三つも……魔導皇……」プリシラは生唾を飲みながら瞳を潤ませた。
プリシラの様子を気にも留めずオイは続けた。
「そして、この卵!ふわふわと浮遊するその姿は、まるで天空に浮かぶ黄金の雲!やや味が濃い目のスープの刺激をその身に優しく抱きとめ、口の中でとろける瞬間に、暴力的な旨味をマイルドな慈愛で包み込む……! これぞ混沌としたカップの中における、唯一無二の『安らぎの聖母』じゃ!
最後の平打ちの縮れ麺! スープを余すことなく絡め取り、喉を通り抜ける瞬間に『音速の衝撃波』を巻き起こしておるわ!それぞれの具材が、計算され尽くした『四位一体の陣』を敷き、たった一つの器の中で、進化という名の『叙事詩』を謳い上げている!これはもはや単なる即席麺ではない……!人類が到達した、手軽さと快楽の『終末の日』じゃ!!うまい!うまい!うまいぞ!少年よ!」
オイは興奮したようにラーメンを食べるとスープまで飲み干した。
「ごちそうさまでした」オイは行儀良く手を合わせた。
「ああ!私の分が……」プリシラが大粒の涙を流し、そうつぶやいたそのとき、
「ぐぅ~~~っ」
静寂を切り裂くような腹の音が鳴った。聡介は重い体を起こし、プリシラを見た。
「いい加減に怒るぞ。あと、起きなくていい寝ていろ」
プリシラは顔を赤くしながらも、聡介に布団をかけた。
「そこの戸棚にポテチ、芋のお菓子があったはずですよ」聡介は荒い呼吸を整えながらプリシラに告げた。
プリシラは立ち上がると、戸棚を開けた。戸棚の中にはポテチが入っていた。
「これか?」プリシラが尋ねると、それをナハトが奪い取った。
「な……何をする」
「この世のものはすべて邪神様にささげる供物だ」ナハトはポテチの袋を裂き、一枚を手に取り食べた。
「ポテチを食べる!」ナハトがスタイリッシュにそう叫ぶと、サクッ!という軽快な音が響いた。
「このポテチという食べ物、一見すれば単なる薄っぺらい菓子に過ぎない。だが、袋を開けた瞬間に広がるこの芳醇な香気……!計算され尽くした塩気と、脳を突き抜けるような食感のコンボ。私は左手で死の巻物に異教徒の名前を書きながら、右手でポテチを食べる。世の中の腐った悪を裁きながら、至高の風味を堪能する……。見ろ、この完璧な黄金色の輝きを……」
そういうとスタイリッシュにポテチを食べ続けた。そして、ポテチの袋は空になった。
「こんなにうまいものがあるのか……そうか……この世に邪神様がいないというのなら、私がこのポテチを普及する神になろう。私は……この世界の神になる」
「そっちの世界の人たちはみんな大げさすぎるんですよね……」聡介は汗をかきながら苦笑いをした。
プリシラは、空になったポテチの袋と、カップヌードルの容器を見つめた。
「結局いつも何も食べられないではないか……くっ……こんなひもじい思いをするくらいなら、いっそ殺せーーーー!あと、作者はそろそろオチをちゃんと考えろ~!」
深紅の戦乙女の慟哭が家中に響いた。
その隣の部屋で青眼の決闘士がUNOを広げてルールブックを読んでいた。昼ごはん代わりのリンゴをかじると、つぶやいた。
「UNOって面白!!」
お読みいただきありがとうございました。
今回は大場つぐみ先生・小畑健先生のデスノートをオマージュしました。ポテチを食べながらデスノートに名前を書いたり、「計画通り」と呟くあのシーンへの愛です。ごめんなさい。
荒木飛呂彦先生もごめんなさい。ジョジョの奇妙な冒険は大好きすぎて並んでコラボスマホも買いました。
次回! 隣の部屋でUNOのルールを読んでいた青眼の決闘士。轟雷の奇術師との狂気の沙汰ほど面白い勝負が始まる……!ざわ…………ざわ……ざわ……その時エクウスに電流走る……
※筆やすめなので不定期更新です。ご了承ください。
※本作は各作品へのオマージュ・パロディを含みます。権利者の方でご不満がある場合はご連絡ください。




