表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/6

【全年齢】第三話前編:召喚士団長をお好み焼きで「粉砕・玉砕・大喝采」させた話

プリシラに加えて、オイも聡介の家に住みついた。


なお、聡介の家は父の遺産として受け継いだ戸建てで、数えきれないほどの部屋がある。(これは急遽思いついたキャラ増加に合わせた後付け設定ではなく、最初から決まっていたことをここに明記しておく)


今回はアニメ版遊☆戯☆王の海馬瀬人をオマージュしたキャラクターが登場します。「粉砕・玉砕・大喝采」「強靭!無敵!最強!」などのセリフにピンときた方はニヤリとしていただければ幸いです。ご存じでない方はぜひ「遊戯王 海馬瀬人」で検索してみてください。

※高橋和希先生。尊敬してます。ごめんなさい。

燦燦(さんさん)とした太陽の光に照らされる庭の一角で、かつてヴァルフェルト王国で深紅の戦乙女クリムゾン・ヴァルキリーと称えられたプリシラ・スカーレットは、赤い長髪をなびかせながら、愛刀の深紅の大剣を振っていた。軒先では、魔導皇インペリアル・マジックオイ・ヴォーレが聡介の書棚にあった小説を運び出し、読み漁っていた。


「プリシラさん、オイさん、そろそろ昼ごはんにしませんか。お好み焼でも作ろうと思うのですが」聡介が外に出てきて二人に声をかけた。


「オコノミヤキ……不思議な響きだがどんな料理だ、それは……」プリシラが質問したその時、寝室の方から物音が聞こえた。


「ヴォーレ様、聡介、また何か来たかもしれん」プリシラは、寝室の方に駆けると扉を乱暴に開け、愛刀の大剣を構えた。


扉の奥には紺碧の長髪をした男が立っていた。髪の色と同じ紺碧の瞳をした長身の青年。はるか遠い未来を見据えるような鋭い眼光(がんこう)であった。肩まで流れる外套(がいとう)は、夜空を閉じ込めたような深い青で、物理法則を無視したような高い襟、胸元には幾何学(きかがく)的な紋章が刻まれていた。腰には召喚陣の刻まれた細長い杖を携え、その立ち姿には隙がなかった。一目でただの術士ではないとわかる、傲岸不遜(ごうがんふそん)な天才の風格があった。


「な、お前は青眼!お前まで来てしまったのか。来なくてよいのに」プリシラは剣を下ろすと吐き捨てるように言った。


「ふぅん、深紅、それに魔導皇か。ところでそこの凡骨(ぼんこつ)。お前は何者だ」男は腕を組むと聡介に質問をした。


「いきなり失礼な人ですね。俺は橋本聡介(はしもとそうすけ)、この家の家主です」プリシラの後ろから顔を出し、寝室に入る聡介。


「ふぅん。凡骨の癖に家を持つとは生意気だな。ここはどこだ」男は腕を組んだままあたりを見渡した。


「誰なんです?この人」聡介は振り返り、プリシラに聞いた。


「この男はエクウス・マリヌス。私の騎士団と並ぶ召喚士団を束ねる青眼の決闘士ブルー・アイズ・デュエリストといわれる団長だ。何かと私に絡んでくる失礼な男だよ。無視していい」プリシラは(まゆ)をひそめながら聡介に説明した。


「ふぅん。深紅よ。この俺に向かってそんな口をきいていいのか」エクウスは腕を組んだままプリシラをにらみつけた。


「これこれ、若い者同士仲良くせんか」オイがフォローに入ろうとした。その時、


「ぐぅ~~~~~!」地面を鳴らすような大きな音が聞こえた。聡介はプリシラの方を見た。


「な、聡介!お前は毎回私の腹の虫が鳴ると思っているのか!不敬だぞ!」プリシラは顔を赤らめながら地団太(じだんだ)を踏んだ。


「ふぅん……」エクウスは腕を組んだまま微動(びどう)だにしない。


「エクウスさん、お腹すいたんですか?今からご飯作るんですが食べますか?」聡介が確認する。


「凡骨よ。貴様がどうしてもというのであれば食べてやってもいいぞ」エクウスは腕を組んだまま聡介を睨んで答えた。


「うわぁ……この人むかつくぅ……まあいいですけど。最近そういう扱いには慣れてきましたけど」ぶつぶつといいながらキッチンに向かう聡介。プリシラ、オイ、エクウスがそのあとに続いた。


「急げ!全速前進だ!」エクウスが叫んだ。


「どれだけ腹減ってるんですか。あなた」聡介は呆れたように言った。


聡介は今回はキッチンではなく、リビングのテーブルに立った。既に食材は準備をしてあり、ホットプレートで調理をする。ボウルにはお好み焼き用の生地があらかじめ準備してあった。


「今回は広島で主流な方のお好み焼にしますね。学生の頃住んでたんです」そう説明するが理解する人はこの場にはだれもいなかった。


聡介はホットプレートに油を薄く引いた。油がぱちぱちといい始めると、生地をお玉で軽く1杯すくい、ホットプレートに流した。ジュワッという音とお好み焼粉に入った、鰹や昆布の出汁粉の匂いが広がり、鼻腔(びくう)を刺激する。聡介は慣れた手つきで生地を中心から外へ円を描きながら薄くのばしていった。


「ふぅん……魔法陣を描くような円運動だな。凡骨にしてはやるな」エクウスは腕を組んだまま褒めた。


聡介はそれを無視して焼いた生地の上にキャベツをのせると、空いたスペースで薄切りの豚肉を軽く熱した。


ジュウジュウという豚の脂が溶け出した匂いが食欲をそそる。豚肉が焼きあがるとキャベツの上に重ね、生地を少量全体にかけ、裏返してへらで押さえた。


ジュゥーっという生地と豚肉が焼ける音とともに、豚と出汁の匂いが広がった。


「ああ……なんという香ばしい香り……早く……早くしてくれ……」プリシラが頬を赤らめ、震え始めた。


中華麺を調味油(ちょうみゆ)で炒め、ソースで軽く味付けをする。ジュワジュワとソースが焦げる甘い香りが周囲を満たす。


「これは、先日食べたトンカツのソースとはまた違う奥深い香りがするのぉ」オイは噛みしめるようにその匂いを嗅いだ。


聡介はその焼きそばを先ほどひっくり返した生地のキャベツたちの上に乗せた。さらにヘラで押し水分を飛ばす。


となりに卵二個を割り落とし、へらで卵の黄身をつぶして広げる。魚粉、豚の脂、ソース、そして卵が焼ける匂いの四重奏(カルテット)が部屋中を満たす。


焼いた卵の上に焼きそばたちをひっくり返してまんべんなく火を通す。卵が焼けたら表に返して表面にソースを塗り、マヨネーズを全体にかける。青のりと鰹節(かつおぶし)をまぶすと、鰹節が踊りだした。これで出来上がりだ。


「誰から食べますか?」聡介がヘラでお好み焼きを持ち上げると三人を見た。


「ふぅん……俺様から……」エクウスがそういったところでプリシラが割って入る。


「年長者のヴォーレ様に決まっている」


「すまんな。先にいただくぞ。では、実食……」そういうとオイはフォークを取りお好み焼きを切った。フォークに差し、口に入れると無言で咀嚼した。そして目を見開いた。周囲に淡い光が漂い始め、空気が揺れた。エクウスがその光をじっと見つめていた。


「うーーー……」オイが叫びそうになったその時、聡介が遮るように注意をした。


「あ、大声出したり光ったりしたら、ご飯抜きですからね。先日、町内会に怒られたので勘弁してください」


「何……それは困るのぅ」オイは勢いを押さえ感想を言い始めた。


「まず何といってもこの緑の葉野菜、奥深い甘みの中にコクがある。しっかりと火が通っているにも関わらずシャキシャキとした歯ごたえが残っておる。そこに肉の野生的な味わい、卵も焦げ目のサクサクした触感があるにも関わらず、一部はトロっと半熟でそれがまたアクセントになっている。プチプチプチとちぎれる麺、これがまた憎い。ほんのり塩と胡椒の味がついた調味油が絡み合うことによって全体の味を調和させておる。最後に野菜を煮詰めた黒いソースの甘み、白いソースが混ざり合って塩味と甘みが絡み合い、まろやかな味わいが口に広がる。たまらん!たまらん!たまらんぞ!少年」オイはそういうと猛烈な勢いで一皿を平らげた(たいらげた)


「ごちそうさまでした」手を合わせ深々とお辞儀をした。


「お粗末様でした。それでは二枚目を焼きますね。こっちは味変します」聡介はそういうと同じような手順でもう一枚のお好み焼を焼いていく。途中つぶしたニンニクとキムチを麺と一緒に炒めた。


慣れた手つきでお好み焼きをシュッとひっくり返し、焼き上げると辛口のソースを全体にぬり、辛子マヨネーズ、フライドガーリック、青のり、鰹節をかけて完成だ。


「ふぅん、今度こそ俺様がいただくとしよう。ドロー!」そういうとフォークを手にし、口に運んだ。甘辛いソース、ニンニクの香りが鼻腔を突き抜け、エクウスは叫んだ。


「フン、凡骨……貴様の作ったこのお好み焼き、面白いッ!鼻を突く暴力的な香気……口の中を蹂躙(じゅうりん)する甘辛いソース、シャキシャキとした歯ごたえの酸味の効いた野菜。どれも個性的な味わいだ。だが、これこそが俺の求めていた食のロード()だ!この辛口ソースが舌の上で弾ける瞬間、全身を駆け抜ける衝撃が今までの食の常識を粉砕!玉砕!大喝采!貴様の料理には、俺の知性を持ってしても侮れぬほどの誇りを感じるぞ。ワハハハハ!!」エクウスは両手を広げ、叫ぶとあっという間に一皿を平らげた。


「ふぅん」エクウスは口についたソースを拭う。


「しかし、聡介、上手にお好み焼をひっくり返すのだな。どこで身につけたのだ」プリシラは身を乗り出して聡介に聞いた。


「いや、お好み焼きを焼くこと自体はそんなに難しくないですよ。やってみますか?」聡介はへらをプリシラに差しだした。


「そうなのか?ではやってみよう。さっきの手順でよいのか」ヘラを受け取るプリシラ。


「ええ、そうですね。同じように作ってみてください」


プリシラは聡介の説明をうけながらお好み焼きを焼きあげていく。そしていよいよひっくり返す場面になった。


「少し、緊張するな。騎士団に入団するときの試験を思い出すな」プリシラは息をのんだ。


「そんな大げさなことではないですよ」


「ふぅん……深紅は一度入団試験に落ちているからな……負け犬だ……」エクウスが腕を組んでプリシラの後ろに立っていた。


「な!青眼!今その話をするでない」プリシラは焦るようにエクウスの顔を見た。


「プリシラさん、焦げちゃいますよ」


「む……そうか。ええい!ままよ!」


プリシラがヘラでお好み焼きをひっくり返した。お好み焼きは見事な放物線(ほうぶつせん)を描き、ひっくり返ったが、端が少し崩れてしまった。


「ああ……崩れてしまった」


「見ろ、この無残な焼け跡を!表面は焦げ付き、形は崩れている……まさに貴様の騎士道と同じく、中身の伴わぬハリボテよ!深紅、貴様は戦場では剣を振るえても、鉄板の上では無能な負け犬(負けデュエリスト)に過ぎん!お好み焼きとは、素材と火加減が織りなす究極の黄金律(コンボ)……!それを貴様は、あろうことかひっくり返し方一つでその黄金律を破壊した。貴様に必要なのは騎士の誇りではない、調理実習からやり直す謙虚さだ!この鉄板に刻まれた失敗という名の傷跡……一生恥じるがいい!その醜い残骸(お好み焼き)と共に、今すぐ俺の視界から消え失せろ!ハッハッハッハー!ワーハッハッハッハッハーッ!!」


「くっ…騎士道の恥……殺せ……いっそ……殺してくれ……」プリシラが崩れ落ちた。


「ちょっといいすぎですよ。そこまで言うのであればあなたはちゃんと焼けるんですよね?」聡介がエクウスをにらみヘラを差し出した。


「フゥン!愚問だな!このオレに焼けないものなど存在しない!貴様の矮小(わいしょう)な常識でオレの完璧な火加減を測るな。跪いて(ひざまずいて)見ているがいい、鉄板の上に降臨する最高にして最強の黄金律を!」


そういうとヘラを手にしながらエクウスが叫んだ。


「オレのターンだ、ドロー!」

お読みいただきありがとうございました。


お好み焼き対決(デュエル)の決着は後編へ続きます。後編は作成済みですので近日中に投稿予定です。


※筆やすめなので不定期更新です。ご了承ください。

※本作は各作品へのオマージュ・パロディを含みます。権利者の方でご不満がある場合はご連絡ください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ