【全年齢】第八話三回目前編_騎士団長が飯のお供で「ズキュウウウン」された話
さあ……前書きの時間だ……
誰だろう?という顔をしているから自己紹介させてもらう……
僕は、深緑色の制服を着ていて、メロンみたいな自身の半身のような友達を持ち、サクランボをレロレロしたり、ココナッツは食べたらバキオレェッ!って感じでバックブリーカーをしてしまうくらい好きな、どこにでもいる普通の高校生だ。
今回の作品は作者が何千という作品に触れてきた中で最も愛してやまないといっても過言ではない、荒木飛呂彦先生の「ジョジョの奇妙な冒険」だ……その第一部に登場するディオ・ブランド―、および、第三部のDIOのオマージュキャラが登場する……
僕はこの作品の作者について考える。
「オマージュを、誰にも気づかせなくしてやる。そう! 原作の本質をつかみ、読者を感動させるため、完璧に違和感を消してやろう!」
「殺人鬼に爆破された初代作者と二代目作者のことを考えると背中に鳥肌が立つのはなぜだろう?それは、目的が一致したはじめての仲間だったからだ。読者をオマージュで喜ばせるというこの作品! わずかな時間だったが、気持ちがかよい合っていた仲間だったからだ」
そんなことを考えているんじゃないかと、この作品を見ながら感じるよ。
それでは本編だ……
くらえッ!半径20mくらいに敷き詰められた、笑いと感動の黄金のオマージュをッ!
芳々しき白米が炊ける香りの広がるキッチンの中で、かつてヴァルフェルト王国で深紅の戦乙女と称えられたプリシラ・スカーレットは、炊飯器から出る湯気を見つめる深紅の眼を、爛々とさせていた。
その隣では魔導皇オイ・ヴォーレが聡介が準備したご飯の友の解説を読んでいた。リビングのソファには死の巻物を腰に携え、シーザーサラダ味のポテチを食べる邪神教教祖のナハトの姿がった。
「聡介……ご飯はまだ炊けぬのか?」プリシラは聡介の方を向くと、身を乗り出した。
「あと、二十分くらいですかね……もう少し待っていてください。今日はちゃんと食べられるように炊飯器二台で炊きますし、お米もたっぷりありますからね! 安心してください」聡介は胸を張った。
「それは楽しみだな。ああ、想像しただけで体が熱くなる……」プリシラは顔を赤らめ、熱を帯びた。
「あの……カルボナーラ食べたときみたいなのはやめてくださいね」聡介は苦笑いをした。
「ん? 聡介、何を言ってるのだ? カルボナーラは美味しくいただいてしまったが……そうか、聡介の分を食べるなということだな? ちゃんと米はあるのであろう? 大丈夫だ。聡介も安心しろ」プリシラは、親指を立てて聡介に向けると胸を張った。
「ああ……そっちじゃないんですけど……大丈夫です」聡介は頬を掻いた。
聡介は二台目の炊飯器に米をセットすると手を止めた。
「あ……炊飯器の電源がなかったですね。ちょっと取ってきます」聡介は手を拭くと入り口の方に向かった。
「ああ……頼む」プリシラはその背中を見送った。オイはひたすらご飯の友を眺め、周囲に光の粒をあふれさせていた。
プリシラはその様子をみて、一抹の不安を覚えたが、考えるのをやめた。
――――
聡介は倉庫についた。一番奥にある大きな押し入れを開けると、その中、下段に人がいた。
男と目があった。
男は押し入れの上段と下段の仕切りに手を添えながら「KUAAAAA」と外に出ると、立ち上がった。
男は煌めく金髪と、紫のストールを巻いた貴族的な出で立ちに、腰には「Z」の文字と緑のハートが輝くバックルのベルトを締めていた。さらに、赤紫のズボンをブーツインした足元には、先が鋭く反り返った金色の尖った靴が合わされていた。野心と支配欲が融合した、禍々しくもカリスマ的な姿だ。
男は聡介に気付き口を開いた。
「お前の欲しいものは何だ」
「え……何言ってるんですか?いきなり」聡介は一歩後ろに下がった。
「質問を……」男は聡介をにらんだ。
「はい?」聡介は目を丸くした。
「質問を質問で返すな! このヌケサクがぁああ!」その男は突然叫んだ。
「じょ……情緒どうなってるんですか……ごめんなさい。えっと、欲しいものは炊飯器の電源です」聡介はいたって冷静に返した。
「フン……そんなものは持っていない。自分で探せ」男は腕を組んだまま聡介を見つめた。
「ええ……また、こういうタイプの人なの……ふぅー……」聡介はため息をついた。
「おい……貴様」男はまた聡介をにらんだ。
「今度は何ですか?」聡介は押し入れの中を物色しながら答えた。
「フーフー吹くなら俺のためにトランペットでも吹くのが似合っているぞ。このゼウスがこの世界に降り立った記念としてな……」ゼウスと名乗った男は、腰に左手を添え、右手の親指を自身の胸元に向けて突きつけた。
「ああ、そうですか。あ、炊飯器の電源ありました」聡介は相手にしないことを心に決めた。
聡介は無言でその場を後にしたが、ゼウスは聡介の後を追ってきた。
――――
「聡介、ようやく戻ってきたのか。遅かったな?」プリシラはイスに座ったまま、体を後ろに倒し、体ごと聡介の方をみた。
「ええ……なんか変な人に絡まれちゃって……」聡介は男の方に目線を送った。
「プリシラか……」ゼウスはプリシラを見つめていた。
「な……ゼウス……! お前もここに来てしまったのか!」プリシラは男の顔に驚いた。プリシラはその勢いで、後ろにイスごと倒れてしまった。
「危ない!」聡介は声を上げた。しかし間に合う距離ではなかった。
プリシラはゆっくりとイスごと倒れた。
衝撃はなかった。
その男がプリシラを受け止めていた。
「プリシラ、俺たちはこの世においても二人で一人……」男はプリシラを見つめていた。
「ゼウス……」プリシラも同じようにゼウスという男を見つめていた。
「……」静寂が二人の間を包んだ。
ナハトが食べるポテチの音が響いた。
サクサクという音が響いた。
次の瞬間……
頬を張るいい音がリビングに響き渡った。
「触るな! この変態め!」プリシラは右手を振りぬいていた。ただただ、振りぬいていた。
「頬を張るときに汗もかいていないし、呼吸も乱れていない。冷静だ……流石はプリシラ……」ゼウスは、張られた頬を愛でるように撫でていた。
「ちょっと! プリシラさんいきなりどうしたんですか? プリシラさんらしくもない」
「いや……よくわからないんだが、ゼウスに見つめられた瞬間、何かムラムラだとか、貧乳だとか変な言葉を投げかけられた記憶が脳裏に浮かんでな……う……頭が痛い」プリシラはふらふらと立ち上がると椅子に腰かけなおした。
「だ……大丈夫ですか? これ、お水です」聡介はプリシラにミネラルウォーターのペットボトルを手渡した。
ペットボトルを手渡す際に二人の指が触れた。
「すまない……聡介……」プリシラは頬を赤らめた。
二人の間に静寂が訪れた。
その静寂は体液を圧縮して、光線のように射出できそうな鋭い眼光に阻まれた。
「おい……ヌケサク」ゼウスは聡介をにらんでいた。
「何ですか?」聡介は少しひるんだが、睨み返した。
「俺のフィアンセに汚い手で触るんじゃあないぞ……」ゼウスは人差し指で聡介を差した。
「え……フィアンセ……?」聡介はプリシラを見た。プリシラは目が合うと下を向いてしまった。目を伏せたままボソボソと説明をした。
「こいつは魅惑の不死者と言われる吸血鬼だ。名は……ゼウス・インフェリウス。元人間だが、古い石の仮面をかぶって走っていたところを転んで頭をぶつけて流血した。その血液で石の仮面から飛び出した骨針を頭に打ち込まれて吸血鬼になった哀れでアホウな男だ……」プリシラはそこまで放すと、唇を少し噛んだ。
「あとは私の幼馴染であり……」プリシラは目を瞑った。指が震えていた。
「私の婚約相手だ……」プリシラは大きく息を吐いた。
「そ……そうですか……」聡介の目は泳いでいた。
「ま……まあ!異世界ですからいろいろありますよね! 吸血鬼の婚約者がいたんですね! 言ってくれればいいのに! おめでとうございます!」聡介は大声でそう言い残すと返事を待つこともなく、ふらふらとした足取りでキッチンの方に向かった。
「……ッ!」プリシラは聡介の言葉を聞いて目を潤ませた。
――おめでとう……か……ありがとう聡介。でも、なんでこんなに胸が痛むのだ……?
「プリシラ……」ゼウスはプリシラのその表情を見て肩に手を添えた。
「ゼウス……」プリシラはゼウスの手に指を添えた。
「会いたかったぞ……我がボディ……」ゼウスはプリシラの胸に手を当て微笑んだ。
頬を張る音がリビングに広がった。
「あ……やっぱりこいつのこと嫌いだ。こいつは昔からこういうことを平然とやるやつだった」プリシラは石仮面のような表情でつぶやいた。
プリシラは台所に向かう聡介のことを見た。
ただ、見つめることしかしなかった。できなかった。
胸の前で指を握りしめた。
その指先は白くなっていた。
聡介にはそのやり取りが届くことはなかった。
―――――
聡介は料理を作り始めた。
「さて……今日はいっぱいご飯があるから、飯のお供を作ります。いくつかは仕込んでありますが……プリシラさんのために赤飯でも作ればいいかな……」聡介は自分の言葉がチクリと胸に刺さるのに気付いた。
――おかしいな……喜んであげることなのに……
聡介が目を伏せていると、オイが聡介に近づいた。
「『勇気』とは『弱さ』を知ることじゃ。聡介が何を感じているかはわからんが……その気持ちの弱さに負けるのではないぞ。『勇気』があればより良い明日が必ず来る……」オイは聡介の方をポンポンとたたいた。
「料理中は危ないので近づかないでくださいね……ありがとうございます……」聡介はオイの方を向くこともなく鍋を手に取った。
――より良い明日か……俺にとって何がいいことなんだろうか……?
オイはそれを見てわずかに口角を上げた。
聡介は大鍋に大量の水と、塩を入れてお湯を沸かした。グラグラと煮立ち始めたところで、筋を取った枝豆を入れた。濃い緑色だった枝豆は、明るい黄緑色に色を変えていった。さっと下茹でをしたらザルに救い上げ、手早く氷水で締めた。
「これで甘みが増し、身が引き締まります」
聡介は枝豆を鞘から出すと、ボウルに移した。フライパンにオリーブオイルを引き、ニンニクをひとかけ分スライスしたものを投入する。強火で熱してぱちぱちという油が泡立つ音を立てながら、ニンニクは鼻腔をくすぐる香りを上げキッチンを包んだ。
フライパンにベーコンを投入した。ベーコンに焦げ目がつき始め、ニンニクがキツネ色になったタイミングで緑色の鮮やかな枝豆を入れる。塩コショウを少量パラりと全体にかけると火を止め余熱で火を通した。ニンニクの鼻を突きさす香りと、ベーコンの脂の野生的な香り、枝豆の甘い大地の香りが混ざりあい、プリシラたちを包み込んでいた。
聡介は、冷蔵庫を開けた。胡瓜を漬けておいた保存袋を取り出す。袋を開けると香ばしい胡麻の香りと、突き抜けるようなほのかな唐辛子の刺激的な香りが鼻の奥をくすぐった。
「食欲をそそる匂いじゃのぉ……これは白米にあいそうじゃ。どう作ったんじゃ?」オイは小さな光の粒を周囲にあふれさせた。
「胡瓜は封ができる保存袋に入れて、麺棒で小さく叩き、そこに砂糖、酢、醤油、いりごま、ごま油、輪切りの唐辛子を混ぜたものをもみこみ、一時間程度漬け置きにするだけでできます」
「そうか……これは運んでおくぞ?」オイは聡介が準備した小さな器に胡瓜の漬け物を移し食卓に運んだ。
「次は蒟蒻と蓮根のきんぴらを作ります。こんにゃくは薄く切って細切りにし、蓮根は皮をむいた後で輪切りにするのではなく、縦に繊維に沿って切ります。これで、シャキシャキとした触感が残ります」聡介は誰に説明するでもなく、つぶやきながら料理をしていた。
聡介はフライパンにごま油を引いて、蓮根を並べた。火をつけバチバチという音と胡麻の香りが室内を包むと、徐々に蓮根がキツネ色の焦げ目をまとっていった。蓮根をひっくり返し、もう片面も焼く、しばらくすると蒟蒻を投入し、醤油、みりん、少量の酒、カツオ節を入れて水分を飛ばしながら絡めていった。胡麻、醬油、みりん、カツオ節が混ざり合った和の香りが室内を包む。聡介はそれを小鉢に分けた。オイが戻ってきたのでオイに任せた。
「最後は、人参しりしりを作ります。人参のスライスを使った郷土料理ですが、今日は触感を残すために千切りにします」聡介はそうつぶやきながら人参を千切りにした。
ごま油を引き、人参がしんなりとするまで炒める。その後に、醤油、みりん、顆粒出汁、調理酒を加えて、水分を飛ばしながら味をなじませる。ツナ缶を少量の油ごと加え、軽く火を通すと溶き卵を加えて火を通す。ジュワジュワとした音を立て、ツナの磯の香り、醤油や出汁の和の香り、卵の甘い香りが重なり、食欲をそそる。卵がフワフワと形をなすと、オレンジ色の人参と恋人のように寄り添い、新たな色どりを生み出していた。
聡介はそこに白ごまを振りかけて完成させた。
「……」聡介はフライパンを洗っていた。
――ああ……なんか今日はもっといろいろ作る気だったけど。そんな気にならないな……あとは和歌山から取り寄せた梅干しでいいか。
聡介は、冷蔵庫から梅干しを取り出すと、食卓に運んだ。
食卓に座っていたプリシラは、聡介がリビングに戻ってきたのに気付き顔を上げた。二人は目が合った。
「聡介……何か手伝うことは……あるか?」プリシラは指を組んで右手と左手の人差し指をくるくると回していた。
「……お茶碗を出してご飯を準備してもらえますか?」聡介はプリシラに小さく微笑んだ。
「ああ! 手伝うぞ」プリシラは目を輝かせて立ち上がった。
ゼウスはそのやり取りを見て眉をひそめた。
「フン……」
to Be continued→
※筆やすめのため非定期更新ですが、大盤振る舞いで後編は同時公開です。
※本作は各作品へのオマージュ・パロディを含みます。権利者の方でご不満がある場合はご連絡ください。




