第6話 『巡回』
特急「しらなみ」。
浦川口を発車し、列車は南へ走っていた。
エンジンの音が一定に続く。
車内は落ち着いている。
座席はほぼ埋まっているが、騒がしさはない。
通路。
星華はゆっくりと歩いていた。
足音は小さい。
視線は自然に動く。
座席。荷物。乗客。
一つ一つを確認していく。
異常はない。
立ち止まることもなく、そのまま進む。
車端部。
デッキに出る。
ドア越しに、外の景色が流れていく。
すぐに折り返す。
再び車内へ。
「――ご乗車ありがとうございます。
この列車は、特急しらなみ、方南行きです」
落ち着いた声。
車内に広がる。
「途中の停車駅は――」
必要な情報だけを伝える。
長くはない。
終える。
マイクを戻す。
再び歩く。
通路。
乗客の間を抜けていく。
視線は変わらない。
静かに、確実に。
前方へ。
運転台の手前。
ドアを軽く叩く。
開く。
「異常ありません」
短い報告。
仁十は前を見たまま、頷く。
「了解」
それだけ。
ドアが閉まる。
星華は踵を返す。
車内へ戻る。
次の停車駅が近づく。
減速。
わずかな揺れ。
ブレーキ音。
星華はドア付近に立つ。
手をかける。
停止。
「ドア、開けます」
開く。
空気が入れ替わる。
乗客が動く。
降りる者。乗る者。
その流れを、目で追う。
急がない。
見落とさない。
一人、また一人。
最後の乗客。
間を置く。
問題なし。
「閉めます」
ドアが閉まる。
確認。
「出発、合図」
ブザー。
列車が動き出す。
振動が戻る。
星華はそのまま、少しだけ立っていた。
動き出した流れを確認するように。
やがて、通路へ戻る。
再び、巡回。
同じリズム。
同じ動き。
変わらない仕事が、続いていた。




