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第3話 『転轍』
浦川口駅。
乗務を終えた二人は、ホームを歩いていた。
夕方の空気。
人の流れは途切れない。
発車していく列車。
入れ替わる乗客。
同じ光景が、何度も繰り返されている。
特急「しらなみ」は、すでに出ていた。
次の列車が入線する。
減速。
ブレーキ音。
ゆっくりと停止する。
ドアが開き、乗客が動き出す。
その流れを横目に、二人は歩き続ける。
仁十の足取りは変わらない。
星華も隣を歩いていたが――
ほんの一瞬だけ、視線が線路の先へ向いた。
理由はない。
ただ、わずかに意識が引かれる。
見慣れたはずの景色。
それなのに、どこか引っかかる。
――冷たい感触。
鉄の床。
小さな何かが、落ちる音。
そこまでで、途切れる。
形にはならない。
思い出しかけて、消える。
「……どうかしたか」
仁十の声。
星華はすぐに視線を戻した。
「いえ」
短く答える。
それ以上は何も言わない。
仁十も、それ以上は聞かなかった。
二人はそのまま歩き続ける。
ホームの端。
次の列車が、発車する。
エンジンの音。
わずかな振動。
いつもと同じ。
何も変わらない。
日常の中の一コマ。
その中で――
星華の中の何かだけが、わずかに切り替わっていた。




