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第2話 『小さき夢とロマン』
浦川口駅。
乗務を終えた二人は、改札内の通路を歩いていた。
人の流れは絶えない。
乗り換え客、空港へ向かう旅行者。
その中に、二人も紛れていく。
特に会話はない。
業務を終えたあとの、いつもの時間だった。
構内の端にあるベンチに腰を下ろす。
少し離れたホームに、列車が入ってくる。
減速。
停止。
そして、ドアが開く。
何度も見てきた光景。
それでも、仁十の視線は自然とそちらへ向いていた。
発車のブザー。
エンジンの音。
列車がゆっくりと動き出す。
そのまま速度を上げ、視界から消えていく。
ただ、それだけ。
それだけのはずなのに、視線はしばらく動かなかった。
「……好きなんですか」
隣から、星華の声。
少しだけ間を置いて、仁十が答える。
「まあな」
短い返事。
それ以上は続かない。
――小さい頃。
同じように、線路のそばに立っていた記憶がある。
通り過ぎる列車を、ただ見ていた。
名前も知らない。
行き先も分からない。
それでも、飽きることはなかった。
ただ走るだけのそれが、なぜか特別に見えた。
理由はない。
ただ、好きだった。
――それだけだ。
「……そうですか」
星華はそれ以上聞かない。
仁十も、続けて話すことはなかった。
しばらくして、立ち上がる。
「行くか」
「はい」
短い返事。
二人は再び、人の流れの中へ戻っていく。




