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作戦を考えると言っても私に思いつくのは先手必勝で隷属魔法を掛け、私に危害を加えられないようにするくらいのことで、そのためにどこで迎え撃つかを考えるだけだった。
あまり人の多いところだと万が一戦闘になり他の人に危害が及ぶ事があっても困るし、かと言って荷馬車を駆け足で追える彼らを姿を見せて人気の無いところまで上手く誘導できる自信はない。
だからあくまでも気付かれないように近づいて知らぬ間に隷属させ、それから姿を見せてじっくり話を聞くしかないだろう。
セイランが何を考えているかやどうしてマキシムさん達と一緒に居るのがバレたか、そしてナリスの能力はどんなものなのか聞きたいことはかなりある。
私はマキシムさん達が荷馬車を預かり所に預け宿に向かうのを見届けてから街の外へ急いだ。
ナリス達は適度に距離を取っていたのでまだ街の外で様子を窺っている。多分ナリスも何かしらの探知能力を持っているのだろう。
ナリスの姿を確認した私はすぐさま瞬間移動でナリスのすぐ隣に移動し、隷属魔法を掛けるべく右手をナリスの胸に当てた。
バチッ!!
驚いたことに私の隷属魔法はかなり派手な音を立てて何か強力な力によって弾かれた。
「そこに居るのですね」
音が派手だっただけで他に何も異変は無いが、隷属魔法を掛けるのに失敗しただけでなく、姿はいまだに確認できていないようだけれど私がここに居るのがすっかりバレてしまった。
「ナリス様、すぐ隣に居ます右隣です」
もう一人の青年がまるで私の姿が見えているようにナリスに私の居場所を告げるので、私は慌ててナリスから距離を取った。勿論瞬間移動でだ。
「移動したようです。今居場所を探ります」
ナリスのナイフが空を切った所で彼がまたもやナリスに告げる。
(?)
青年の言葉からすると彼も完全に私の姿を捕らえている訳ではなさそうだ。
それならばと瞬間移動酔いを避けるために早足でグルグルと動き回り、居場所を特定されないようにしながら考えた。
多分隷属魔法を弾いたのは魔法を弾く効果のある装備品か魔導具を装備しているのだろう。隷属魔法がまさか弾かれるなど考えてもいなかったのでこの先どう対処すべきか咄嗟には思いつかない。
それに他の攻撃魔法もきっと同じように弾かれてしまうだろう。となったら魔法での戦闘は難しい。一応剣術や体術も歴代召喚者から受け継いではいるが、対人戦でましてやナリス相手に勝てるかどうか自信はない。
姿を見せて戦うにしてもナリスの実力がどの程度か分からない事には負けて掴まる覚悟も必要になる。隷属魔法を警戒して対処をして来たように私を逃がさない秘策もきっと考えているだろう。多分絶対セイランの差し金だ。
となったら今私に取れる手段は、先手必勝とばかりに先に手を出しここに居るのがバレてしまった以上勝つか逃げるかの二択しかない。
そして逃げるとなったらもうマキシムさん達と同行することは叶わなくなる。まさかいきなり姿を晒しマキシムさん達に今までのことをすべて打ち明け、さらにこの先も逃げる手助けをしてくれとはさすがに頼めないからね。まだ何のお礼らしいお礼もしていないのにできればそれは避けたい。
しかし上手く逃げたとしてもマキシムさん達は私のことなど何一つ気づいていないのに、私が逃げたあともし逃亡の手助けをしたと掴まるようなことになったら、私は一生後悔することになるだろう。
それにセイランならきっとそれくらいのことはして私をおびき出そうと考えるかも知れない。
となったら私は何が何でもここで勝つしかないのだ。たとえどんなことをしても。
「モーリまだか!」
「移動速度が速くて特定が難しいです」
「逃げる気がないならそれでいい。ここまで来て逃げられるのだけは避けたいからな」
「逃げる気はないようです」
「分かってるじゃないか、もし逃げたらおまえの逃亡を手助けしたヤツらがどうなるか覚悟するが良い。そうとなったら持久戦だな。おまえの体力が持つか私達の集中力が切れるかどちらが先か楽しみだ」
ナリスは余程自分の能力と集中力に自信があるようだった。
それに青年の能力だ。多分探知に優れてはいるのだろうが、それにしてもはっきりと姿を確認し場所を特定できていないのに私の考えが読めるとはなんと不気味な能力だろうか。
私の読心術と同じ能力なのかもしれないが、そこそこの速度で移動を続ける私の考えを読みながら探知も続けるとは驚きだ。試したことは無いが多分かなり難しい筈。
(こうなったら彼の方を先にどうにかするしかないか…)
「無駄ですよ。私に手を出そうとした瞬間に私はあなたをきっと拘束してみせます」
自信満々のモーリの言葉に私は唖然としてしまう。思った以上に的確に私の考えが読まれているし、やはり私を拘束するための手段を考えてきているようだ。
それにしてもモーリに手を出したら拘束されるとは、それはいったいどんな方法なのかなんだかとても気になる。
この際一度掴まって油断させてからもう一度逃げ出すとか反撃に出るなどの方法も考えるべきかと迷うのだった。




