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「うるさいなぁ、もぉ…」
倉庫の中に響くざわめきで意識が覚醒させられるが、夕べの盗賊騒ぎで二度寝になってしまったせいか目覚めの気分はスッキリせずに目を開けるのも億劫だった。
「おまえ達ふざけてないでさっさと起き上がれ!」
「だから体が言うことを聞いてくれないんだよ。どうしてなのかこっちが知りたいくらいだ」
「ふざけるんじゃないぞ、厳重に縛ったとはいえ足の自由までは奪ってはいない。さてはおまえ達この後に及んでまだ何か企んでいるのか」
「だから本当なんですってば。本当に動いてくれないんです」
「本当なんだよ。いくら力を入れても手も足も自由にならなんだよ」
「俺らも夕べからずっと試してるんだ」
「何かの祟りにでもあったとしか思えない。どうか助けてくれ」
「お願いです。どうか、どうか体の自由を返してください」
聞こえてくる会話をぼんやりと聞きながら薄らと覚醒していく意識の中ハッとして目を開ける。
(そうだ。彼らを拘束したままだった!)
施錠や解錠も可能な念動力のような能力は言わば魔力(?)を形にして使ったもので、具現化はされていないのでけして目には見えないが見えないが形あるものとしてその効力は私が消すまで続く。
なので夕べ念動力によって拘束した盗賊達はいまだに手足どころか体中をグルグル巻きにされて身動き一つ取れずにいたままだった。
目覚めたら逃げ出すものだと思って隷属させ、そして命令によって少しは世の中の役に立たせようと考えたのに、犯罪に手を染め自首する前に掴まってしまうことになったようだ。
何にしてもどうして夕べここに忍び込んだのか、どうやって忍び込んだのか、謎は残ったままなのでその解明ができるのなら良かったと思うしかないだろう。
私は慌てることなく起き出して、布団とベッドを亜空間に収納して結界を解いてから彼らの拘束も解いた。
「あ、あれっ」
「何だ急に体が軽くなったぞ」
「動く、体が動くぞ」
「ホントだ。動く。これで自由だ!」
「う、動いてくれた…」
拘束から解かれた盗賊達は体の自由が戻りみんなして心からホッとして喜んでいるようだった。
しかしこれから厳しい取り調べが行なわれ、今までの罪を洗いざらい打ち明けるとした夕べの命令の効力のままに罪を自白しきっと厳しい罰を受けることになる。
でもふと気付き少し不安が過った。あの命令の前に自首してと言う下りがあるので、効力が違っていたら困る。この場合自首じゃないので自白に繋がるかが心配になったので新たに命令を発動させる。
「自分達の罪は洗いざらい嘘偽りなくすべて白状しなさい」
周りの人に気付かれないように小声で盗賊達に向かって指差しながら改めて言う。
すると盗賊達は一斉に膝を地面に着け、まるで神にでも祈るようにして罪を告白し始める。
「俺たちはお頭に命令されただけなんだ」
「荷馬車から貴重な魔導具を盗んで来いと言う命令だ」
「ここに忍び込めるように手引きはしてあると言う話だった」
「ああ、ここで荷馬車を漁るまでは本当に何事も無く順調だったんだ」
「突然不可解な出来事が起こったんだ。何かに祟られたとしか思えない」
「ああ、分かった分かった。話は詰め所に行ってからゆっくり聞く。連れて行け」
お頭ってことはコイツらはどうやら盗賊団の一員らしい、それにここに入れるように手引きをした人が居ると言うのも重要な情報だし、何よりも貴重な魔導具を積んだ荷馬車があると情報を流した人が居ると言うことだ。
と言うことは、どう考えてもこの倉庫の管理者の中に情報を流し手引きをした人が居ると言うことだよね。本当に危ないというか信用できない世界だ。
「ほ、他にも罪を重ねています。どうか最後まで告白させてください」
「煩い! 続きはあとでゆっくり聞いてやる。さっさと連れて行け!!」
引き立てられながらもさらに罪を告白しようとしている盗賊を怒鳴りつけ、ちょっと偉いらしい衛兵が部下にイライラをぶつけるようにする。
もしかしたらこの衛兵も実はグルだったりするのかも知れない。だとしたらこの事件はそう簡単に解決しないだろう。
「に、荷物は無事ですか」
マキシムさんも騒ぎを聞きつけ慌てて駆けつけて来たようだ。荷物は無事なので問題なく出立できるだろう。
第一彼らが漁っていた荷馬車はマキシムさんのとは別の荷馬車だったし、まさかここで足止めなんてことにはならないと思いたい。
何にしても夕べはやっぱりここで休んだのは正解だった。荷物も無事守れたし、これで護衛の役割が少しは果たせた。
もっともそれもちょっとした自己満足だけれど、これでこれからも遠慮なく同行させて貰えると思うのだった。




