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結局馬の調子が良いということで次の街まで行くことになり、私はまた幌の上に陣取り、強くなった日差しを防ぐように着ていたローブのフードを深く被り手ぬぐいのような布をマスク代わりに顔に巻いた。
姿を認識されたら明らかに隠密と言うより不審者っぽい統一感のない格好だ。
行動も護衛と言うより素行調査をしている探偵にでもなった気分というか、これが日本だったならと明らかに非日常的なシチュエーションに妄想も交えちょっと楽しくなっていた。
そうして街道では何事も起こることなく暗くなる頃には次の街に着くことができた。
「本当に着けましたね」
「馬の調子が良いとは言えいつもなら二日掛かる行程なのに驚きです。いったいどうしたのでしょう」
「空の荷馬車を走らせたってこれほどではないですよね。本当に今日はどうしたんだ? 何かを察して無理をしてるのか?」
ジョンソンが馬の背を撫でながら馬を心配し尋ねるようにして声を掛けていた。
「心配も捨てきれませんが調子が良くて頑張ってくれたと思いましょう。お疲れ様でした。明日も頼みましたよ」
マキシムも労うように馬を優しく撫でる。
(うん、ごめんなさい、全部私のせいです)
いくら荷馬車を軽くし定期的に回復魔法を掛けていたとは言え、二人の様子を見ているとやはり無理をさせたのだと考えさせられてしまう。それに二人に余計な心配も掛けさせてしまった。
(明日からは荷馬車を軽くするのは少しだけにしておくよ)
いつもと違うというのはどうしたって余計な心配や不安を与えてしまうし、考えてみたらそんなに急ぐ旅でもなかった。
王都に居ると言う痕跡も王都を出たと言う痕跡もまだセイランは掴めていないはず。せいぜい王都中を探し回っている間にこの国を出られれば何の問題もないだろう。
馬と荷馬車を街の馬屋に預け二人は宿を探しに街へと消えていくが私はその場に残る。
王都では未成年の子供一人で泊めてくれる宿はなかったので多分この街も同じだろう。ましてや暗くなってから何件も泊めてくれる宿を探し歩くくらいなら初めから野宿を決め込んだ方がその分ゆっくりできる。
私は荷馬車置き場となっている体育館のような倉庫の空きスペースに絶対遮断結界ではなく普通の防御結界を張り、王都で買った簡易ベッドに貴賓室から持ち出した布団を引いた。
そして亜空間から適当な料理を取りだし食事を簡単に済ませると全身に浄化の魔法を掛ける。貴賓室には浄化水や浄化ボックスが備えられていたが、あれは浄化を使えない者達のための魔導具で、私はありがたいことに浄化の魔法も使えるので貴賓室を離れた今となっては魔導具に頼る必要もない。
全身はおろか着ている服まで綺麗さっぱり汚れを落としそのまま布団に潜り込む。ここは部屋ではないので何かあった時にすぐに対処できるように部屋着に着替えるのは我慢した。
幌の上は案外快適とは言えやはり疲れていたようで、今日は既にゆっくりまったりしたい気分だった。
何かを考えるのも面倒なのですべてを明日の私に丸投げし、今日はぐっすりと休ませて貰おうと決め込みちょっと早いが目を瞑る。と、そのまま本当に眠ってしまっていたようだった。
夜中ガサゴソと言う物音と人の気配に目を覚ます。
(誰?)
案外ぐっすり眠れたのか起きてすぐだというのに意識もしっかりし思考もクリアだった。なのですぐに探知機能と危険察知と暗視を発動させる。すると危険察知には何も引っかからなかったが五人の気配が探知された。
荷馬車の荷物を狙った盗賊らしい。八台並んだ荷馬車を手分けして漁るのではなく、明らかに中の一台を五人で漁っているところを見ると目的の荷物でもあるのかそれともただ単に一緒に金目の物を漁っているのかは分からない。
だけど馬屋の馬が騒がないので荷馬車を預かるここの警備の者達もきっと気づいていないのだろう。
それにしても倉庫の扉は閉められていたはずだ。どうやって入ったのだろうか。窃盗に遭ったとなったらこの預かり所も信用を失うことになるだろう。
そんなことははっきりって私にはまったく関係ないが、もしマキシム達の荷物が奪われ他国へ行かないとなったら困るのは私だ。それに彼らは私の安眠を妨害するという重罪を犯した。ならば当然罰は必要だろう。
私は彼らの元へと瞬間移動し次々とスタン魔法を発動させ盗賊達を戦闘不能状態にし、隠密術の念動力のような能力で念のために一同を拘束し、そして隷属魔法を一人一人に掛けて行く。
「さて彼らにはどんな罰が良いかしらね」
血の契約は説明しなくてはならないと言う制約があるので彼らが目覚めるのを待たなくてはならないが、隷属魔法の命令なら彼らが起きていようが寝ていようが関係なく発動させられる。ただ彼らはこれから私の命令に従い理由も分からずに行動が制限されるだけだ。
どちらにしようかと一瞬悩んだが、彼らに私の姿を晒す必要もないのだと思いつき血の契約は今回はやめておくことにした。
「今まで他人に迷惑を掛けた以上にこれからは他人の役に立つことをしなさい。勿論無償でよ。そしてもし次に犯罪に手を染めようとしたら絶対に自首して今までの罪を洗いざらい打ち明けることね」
私に関係のない窃盗犯に対する罰はこの程度で十分だろう。しかしもし次に私に直接何かしようとした者が居たならば、その時はもっと容赦なく罰を与えようと考えながら布団に戻るのだった。




