12. 契約
そのオーラは風を纏い、彼女を中心として少しずつ大きくなっていくのが見て取れた。
未だよく状況が分からないが、このまま近くにいたら確実に巻き込まれる事だけは直感で理解した。
賢治もそう感じたようで
「つ、月陽!ここにいたらヤバイよ!とりあえず早く離れよう!!」
と、僕に退避を促した。
彼の意見に即同感し、その場を離れようとして彼女の方を見た時、天を仰いだまま動かない彼女の胸に、先程砂浜で見つけた黒い石が、埋め込まれた状態で光っているのが見えた。
いや、これは「視えた」という表現の方が正しいかもしれない。
なにせ、最初に見た時に現れていた虹色の模様が、石が動いてもいないのに、まるでシャボン玉の表面の様にウネウネと動き回っているように視えたからだ。
そして、その石を視認した途端、頭の中で誰かの声が響いてきた。
『その ・・を ・・みなさい』
えぇ?なんだって!?
『 その石を、掴みなさい!! 』
その声をハッキリと聞いた瞬間、何故かは分からないけれど、僕はそれが正しい行動であると直感し、これまた何故か自動で動く―いや、動かされている―身体に身を任せながら、ゆっくりとオーラの爆心地たる石に向かって突き進んだ。
僕のこの唐突な自殺行為に、賢治が肝を潰したのは言うまでも無い。
「月陽!?どうしたの!?何をする気!?」
彼は慌てて月陽を止めようとするが、オーラの放つ爆風に阻まれて歩く事すら叶わず、その伸びた手が虚しく空を掻く。
そして、彼の悲鳴に近い呼び声が、月陽に届くことはなかった。
次第に強くなる爆風に阻まれながらも、僕は何とか石の傍まで辿り着いた。
石の虹色模様は、先程よりも激しくうねり、よりその輝きを増している。
ここで、更に頭に声が響く。
『 掴んで、強く、念じなさい。君の「願い」を。
さすれば 新たな「契約」が結ばれんー! 』
同時に、呪文のような言葉を綴り続けるその声に導かれるまま、僕は石に血濡れた左手を伸ばし
しっかりと石を掴み
ただ一つ
『 止まれ!!! 』
と、強く願った。
その瞬間
ヘビ人間の胸から、ボコッと歪な音を立てて石が外れ
その石を持ったまま、僕は彼女と一緒に光に包まれた。
その眩い輝きの中で刹那
『 ・・・・後は 君次第だ 』
と囁く声が 聞こえた 気がした
―――その後暫くの間の事は、あまり良く憶えていない。
うっすら、そして朦朧とした意識の中、僕の名前を叫ぶ賢治の声と、僕を抱えるように介抱する誰かの姿。
そして、その人が呟いた
「・・・・さぁて、どうしたもんかね、この『語り部』ちゃんは・・・・」
という言葉を耳にしながら、僕の意識は脳の奥深い所に沈んでいくのだった。
―――こうして、僕の離島生活最初の1日は、不覚にも想像の遥か斜め下、地面を突き抜け地獄に届くかもしれない展開となってしまった。
そしてこの日から
僕の『語り部』としての、不可思議で波乱万丈な高校生活が、始まったのである。
11話と合わせて投稿。
これでコミケに出した分、序章はすべて投稿となります。
続きは前話で記載した通り遅々として進んでおりませんが、どうにかまとまれば引き続き投稿していく予定です。
とりあえず、このあとの幕間的な話(短いですが)を合わせて投稿します。
そちらもよろしければご覧ください。




