第十話 情報偵察班のとある一日
あーあの子可愛かったなぁと、イサークはとある町角の陰に身を隠しつつ、ぼんやり思いを馳せた。
別に彼は、家守のように薄暗い建物の陰が好きな訳ではない。目標物に気配を悟られないようにしつつ見張るのが、彼の仕事だからだ。
イサークは、特定非営利活動法人ゆうしゃの情報偵察班に所属している。
今もまた仕事の最中で、視線の先にいる勇者パーティーを町角の陰に潜みながら観察し、彼らがダンジョンに向かう気配がないか、はたまた彼らの旅が困難になるような異常事態が発生していないか、常に目を配っているのだった。
頭の中では一人の少女の姿を思い浮かべていたが、だからと言って彼の行動には少しの隙も鈍りも見られない。
今も抜け目ない青い瞳が辺りを見回し、研ぎ澄まされた神経が周りの気配を読み取り、勇者に関する情報はたとえ蟻の子一匹たりとも逃さない細やかさで拾い上げていた。まだ22歳と若いが、彼はやり手の偵察者だった。
真面目に仕事している傍らイサークの脳裏に浮かんでいるのは、先日廊下ですれ違った少女の姿だった。急いでいたため話をすることも出来なかったが――そもそも相手には自分の姿さえ見えていたか怪しいが――後からヴィクトリアに特徴を挙げて尋ねた限りでは、彼女は入ってきたばかりのエマという名の少女らしかった。
ちょっと変わったおさげの髪型をしていて、快活そうだが利発そうな瞳を持った少女でもあった。そして後で知ったことだが、イサークと同じ元盗賊という経歴を持っていることも気になる要因のひとつだった。
と言っても、イサークは元盗賊というより元義賊というのが正しかったが。
イサークの経歴は少し変わっている。そもそも何で自分はここにいるんだろうと、今でも不思議に思うことがある。だが、この仕事が肌に合っているのも事実だ。
目端の利く自分の能力を活かせて、その能力が結果民草の平和のために役立てて、その上ちゃんと給料まで貰える。言うことは無かった。
だから仕事にはいつだって全力投球だ。
「おっと、移動するみたいだな」
背をつけていた壁からよっと身軽に身を起こすと、勇者達の後を遠からず近からずの距離を保ちながらついていく。
飄々と歩く青年の姿を、その自然さと気配の抑え方の上手さゆえ、町行く人は誰も気には留めなかった。
※
イサークは元々、ただのちんけな盗賊だった。それが十代の後半から、思い立って義賊に変わった。
それまでは遺跡に財宝を探しに入るのが生業だったが、幾度も目にした貴族の横暴に腹を立て、悪どい貴族から金品を盗んで貧しい民に分け与える義賊に生業を変えたのだ。
と言っても、貴族と名の付く者をのべつまくなしに狙った訳ではない。
中には民のことを考えて慈悲深い配慮をする領主もいる。だから事前の情報収集は念入りに行った。
貴族の館に忍び込み、不正の証拠を掴み、確たる証拠を得てから盗みに入った。そして盗んだ品は全て、不当な税の取り立てや横暴な理由で財産を奪われた民達の家にこっそりと分け与えた。
それを繰り返している内に、いつしか救った民達に『ゼフォールの義賊』と讃えられるまでになっていた。
その風向きが変わったのは、前宰相でもあるヘルマン公爵の屋敷に忍び込んでからだった。
ヘルマンはその在任時代、思慮深く聡明な目で国の先を見通し、辣腕を振るった宰相として国の端々に知られていた。抜きんでた能力がありながらも決して目立とうとはせず、あくまで王や他の官達を立てる高潔な人柄でも有名だった。
そんな彼だが、ギルネドの町の近くにある森にどうも不審げな屋敷を持っているようだった。
多くの人間が出入りし何かしているようなのだが、詳細が不明。これは臭うとイサークは思った。後ろ暗い人間程、そうやって見えない場所で隠れて何かをしようとするものだ。
これまで彼が見抜いて来た性根の腐った貴族たちと同じで、ヘルマンも金策の為何か汚れた仕事をしていると思ったのだ。だから入念に準備して忍び込んだ。
そして結果――そこにいた職員達にあっさり捕まった。
イサークは驚いた。今まで数多の貴族の屋敷に忍び込んで、捕まることはおろか隙を取られることなど一度も無かったのだ。だが、あっけなくお縄になってしまった。
自分が手を抜いていたとは思わない。いつだってイサークはあらゆる対策を立て万全で臨んだ。その結果捕まったのだ。驚くしかなかった。
彼は、命乞いも言い訳もしなかった。たとえ民草のためとはいえ、自分のしていることは結局ただの盗みだとわかっていたからだ。嘆いている人がいるからと言って、自分が盗みに走っていい理由にはならない。それを理解していたし、腹をくくってもいた。
だから、殺すなら殺せと、それだけ叫んだ。
そうしたら何故か……奥から現れたヴィクトリアに、一緒に働かないかと勧誘された。
何故だ、と今でもイサークは思う。いや勧誘するのは自由だけど、あまりにも場所と状況を選ばな過ぎじゃね? と。
しかし結局、イサークはその勧誘を受けた。ヴィクトリアの説明を聞くに、自分の予測とは真逆にヘルマンのしていることは正に民の、引いては世界のためになる行動だったし、それに自分が少しでも役立てるなら乗ってみるのも一興だと思ったのだ。
そして能力の向きから、現在の職場――情報偵察班に配属されたのだった。
そんな不可思議な入社経歴を持ちつつも有能な彼だったが、恋愛に関しては超がつくほどの奥手だった。というか、自分がまともな恋愛ができるなんて露ほども思ってなかった。なぜなら。
「けど、俺みたいな格好悪いのに話しかけられても、あの子やだよなぁきっと……」
イサークはぼやいて、はぁっと溜息を吐く。
そういうからにはどれほど醜い顔立ちなのかと思えば、彼の容姿はなんとそれなりに整っていた。近付きがたいほどの美形という訳ではないが、町に立っていれば町娘が見惚れて頬を染めるくらいには整った顔立ちだ。
気さくな町の兄ちゃんと評すると近いだろうか。茶色の髪に青い瞳の、どこか飄々とした話しかけやすい雰囲気の美青年だ。
しかしイサークにその自覚は全くない。むしろ自分は一切もてないと思っている。事実、彼の人生でもてた事実はただの一度も無かった。
それは、彼の経歴が原因だった。
盗賊時代は勿論のこと、義賊時代も彼の周囲にいる仲間は荒くれ者の男達ばかりだった。子分達に慕われても、女性にもてよう筈もない。身近にいないのだから。
義賊になり盗みに入った時もそうだった。義賊など特に顔を見られては不味いのだから、いつも顔を布で覆って行動していた。だから貴族の令嬢からは「このこそ泥!」と罵られることはあっても、惚れられることなど一度も無かった。顔を覆う布を取っていたら、また違った展開があったかもしれないが。
そんな訳で、彼は自分を不細工だと信じていた。上背もそれなりにあり、すらりと街角に立つ姿は今も町ゆく娘たちの熱い視線を集めているというのに。
細身ではあるが程良く筋肉がついた長身に、元盗賊らしい軽快な装備はよく似合っていた。
そんな彼に目を留めた二人の少女が頬を染めて耳打ちし合い、彼に近付く算段をきゃっきゃと話し合っている。イサークはそんな彼女達の様子に気付かずに物思いに耽っている。
彼が察知するのはあくまで勇者パーティーの気配と彼らを狙う敵の殺気だけで、それ以外の毒にも薬にもならない気配までには気を配っていなかった。必要な情報以外にまで神経を張り巡らせるのは時間の無駄だったし、変に疲労するだけだからだ。
そういえば、とイサークは思い出す。
魔法補佐班のルイスから、気になる相手を振り向かせたくなった時にこれを読めと、呪文らしきものが書かれた紙を渡されていたのを思い出したのだ。
年が近く、友人というよりは悪友といった方が正しいルイスだったが、意外や友達思いの部分もあったらしい。
確か、出来るだけ人が多い所で読むと効果のある呪文だと彼は言っていた。今がまさにその時だった。
どれどれと、イサークは胸元から件の紙を取り出す。
四つに折り畳まれた紙を開くと、その呪文は古代語で書かれていた。これはかなり本格的だ。しかし、中位程度の解読スキルを持つイサークなら読み解けない内容ではない。
「えーと何なに……フツウ……ソウニ……ミエテ……」
そこに、漸く声を駆ける勇気が出たのか頬を染めた少女二人が頷き合い、イサークの背後に近付く。
イサークはそれに気付かず、呪文の続きをぶつぶつと読んでいく。
「オレハ……オトコガ……スキダ……カナリ……スキダ……」
棒読みで途切れ途切れに呟く彼に、少女二人がひっと怯えた声を上げる。紙を見つめ、平坦な声ながらどこか熱心に呟く彼は、少女達の眼に鬼気迫る様子に見えていた。
「キンニクガ……アレバ……ソレデイイ……」
いつの間にか少女達はイサークからかなり距離を取っていた。恋する熱っぽい眼差しは、いつしか魔物を見るような目に変わっていた。そのまま少女達はこそこそと耳打ちしつつ、そそくさと去っていく。
「キンニクサイコウ……って、なんじゃこりゃあああああ!!」
そこまで読んで漸く気付いたイサークが、力の限り紙を地面に叩きつける。叫びながらも何とか最小限に音量を留めたのは、さすが気配を殺すことに長けた情報偵察班といった所か。
「ただのたちの悪い悪戯じゃねーか! 人に何言わせてんだあいつは!! つーか古代語をこんなことに使うな、先人が泣くわ!」
一息にそこまで言うと、げんなりとイサークは片手で顔を覆う。
所詮、悪友は悪友だったと再確認しただけだった。物凄い時間の無駄をした気がする。
「あー畜生、覚えてろあの野郎……。つーか、そんな簡単に好きな子に振り向いて貰えたり、もてる方法なんかがある訳もねーわな」
今まさにもてるかも知れないチャンスだったのに、それを巨岩粉砕呪文並みの威力でぶち壊してしまったことにも気付かず、イサークは緩やかに首を振った。
いや、本当は振り向いて欲しいだとか、そんな高い望みまでは持っていない。
気になるあの子に少しでも気にかけて貰えれば、それでイサークは本望だった。彼の恋愛における喜びの融点は、かなり低い。一緒に出掛けられたら嬉しくて死んでしまうかもしれない。それぐらいのレベルだ。
「あーどうしよ。声かけたいけど、また『薄汚いこそ泥が!』とか言われたらなぁ。慣れちゃいるけど、ちょっと立ち直れねぇかも……」
盗みに入った先で貴族の令嬢に幾度か叫ばれた言葉を思い出し、イサークはうーんと腕組みをする。同じく元盗賊であるエマがそんな罵り言葉を言う筈もないのに、そう思ってしまう程にはイサークは女性に及び腰だった。
魔法を火属性や水属性に分けるのと同じように人間を属性別に分けるとすれば、イサークは確実に不憫属性とでもいうべき属性に分類されるだろう青年だった。
格好いいのに、もてない、報われない。性格に難がある訳でもないのに。
この世界の生物を創り司っていると言われる精霊神レネディアは、少しばかり彼の運を低く見積もって創ってしまったらしい。
そう思わずにはいられないほど、彼は無言で肩を叩いて励ましたくなるような人物だった。本人は全く気付いていなかったが。
※
「っと、次は武器屋か? 剣でも買い足すつもりかね」
変な呪文を読んだり紙を地面に叩きつけたりと、おかしな行動をとりつつも、イサークの研ぎ澄まされた神経は勇者達の行動から離れることは無かった。
すぐに彼らが向かう先に気付き、尾行する足を速める。
読み通り、勇者達三人は武器屋の中へと入って行った。
イサークも何度か足を踏み入れたことがあるが、雑多に商品が積み重ねられた狭い店内だった。中に入れば、確実に勇者達に顔を見られてしまうだろう。それで自分の身上がばれるとは思わないが、出来る限り危険は避けたい。
「さて、どうすっかねぇ」
壁に耳を寄せてみても、分厚い煉瓦の壁は頑丈で中の物音をわずかも通しはしなかった。かと言って、彼らの武器屋内の会話を聞かぬままというのも惜しい。一番ダンジョンの話題が出やすいだろう場所だというのに。
こういう時に便利なのが同僚のアニタの『隠密』スキルなのだが、生憎彼女は作戦参謀班の依頼により別の地域で仕事しており、今回自分達とは別行動だった。
とりあえず中に入ることは諦め、イサークは店の出入り口からやや陰になった場所で人待ち顔を装って壁に背を預けた。勇者達が店から出て来ても彼らからはこの位置が見えず、けれどイサークからは彼らが見える絶妙な位置で。
程なくして、買い物を終えた勇者達三人が店から出て来る。
彼らが賑やかに会話しながら通り過ぎるのを見計らうと、イサークは滑り込むように店内へと足を踏み入れた。
そこは記憶通りの雑多に商品が飾られた店内だった。だが、置かれている品はそう悪いものでもない。ありふれた武器の中に混じって、時折イサークの目を捉える物も並んでいる。
近くの棚に並ぶ商品を興味ある風に眺めながら、彼は店主のいる奥のカウンターへと足を進めて行った。
「いらっしゃい。どうだい、兄さんよ。何か目に敵う物でもあったかい?」
強面の店主が、逞しい腕をカウンターに乗せて奥から声をかけて来る。目つきの悪い彼に、イサークは僅かに惹かれる部分を見つけた短剣を手に取って答える。
「そうだな。この短剣なんて具合が良さそうだ。刃が綺麗に打たれてるし、柄の握り具合も良い」
「おっ、兄さんわかる口かい! そうなんだよ、そいつはうちでも一押しの品なんだ。柄の部分を見てみてくれ」
盗賊や義賊を生業としていただけあって、イサークは武器やアイテムに関してそれなりに目利きだ。世辞でなくきちんと見抜いて言った彼に、店主が強面の相好を崩す。
「へぇ、刀匠ゲルディの作か。こりゃいいな、一つ貰おう」
「ありがとよ! あんたみたいなわかる人に買って貰えて、こっちも嬉しいよ」
嬉しげに会計する店主に、イサークが何気無く切り出す。
「そういや親父さんよ。俺と入れ違いに若いのが三人出て行ったけど、あいつらもこれからダンジョンに向かう口なのかね」
「おっ、兄さんもダンジョン目的かい? いや、あの人らは明日向かうとか何とか言ってた気がするがね。何でも今日は別に用事があるとかで」
客の情報を口にした後、流石に少し何かが気になったのか、店主の眼が一瞬ぎらりと光る。
「――しかし、それがどうしたい?」
「いやぁ、俺はいっつも一人でクエストしてるもんでさ。さっきの奴らは見たら俺と年も近いし、パーティー組むなら丁度いいなと思ってさ」
ぽりぽりと髪を掻くイサークの、それ以上でもそれ以下でもない飄々とした様子に、すぐに店主も一時の警戒を解く。
「ああ、仲間を探してたって訳かい。まあ確かに職業も被ってなさそうだから、兄さんとはバランスが良いかも知れねぇな」
「そういう訳さ。けど、明日向かうってんなら予定が合わねぇな。急ぎなもんでさ」
そう言ってイサークは顔を顰める。
「大人しく酒場にでも行って相棒を探して来るわ。ありがとな、親父さん」
「おう、いい仲間が見つかるといいな。気張って行けや、兄さん」
片手を挙げ礼を言って店を出るイサークに、店主も鷹揚に笑って手を振った。
そして店を出たと同時に笑みを消し、イサークは辺りの気配に神経を張り巡らせる。探しているのは、勇者達三人の若者の気配。
彼らが歩いて行ったのは、確か東の方角だった。向こうには道具屋がある。幾度も彼らの町での行動を観察してきた経験から推測すれば、そこに立ち寄った可能性が高い。
そう判断し、イサークはスキルを使う。
彼の持つスキルの中でも特筆すべきものが、この『俊足』スキルだった。これを使えば、通常の五倍の速度で移動することが出来る。
元々足が速いイサークのこと。この俊足をひと度使えば、町行く人々は一陣の風が通り過ぎたとしか思わず、彼がこの一瞬の内に通り過ぎたことに気付きもしないだろう。
職場の廊下でエマとすれ違った時に使っていたのも、このスキルだった。
元々つかず離れずの距離を取るのが上手いイサークだが、その能力もあり、もし目標物から離れたとしても変に焦ることはなかった。すぐにスキルを使って間合いを詰めるだけだ。
だがだからといって彼は、そのスキルを無駄に多用することも無かった。使うべき所とそうではない所を、彼はよく理解していた。
だから今も、使ったのはほんの一瞬だけだ。
能力があるからと言ってそれに驕らない、頼り過ぎない。それが彼自身も気付かない彼の美点と言えた。
勇者達三人組――金髪の勇者、赤鋼の髪の戦士、黒髪の魔法使いの三人は、やはり読み通り道具屋に向かったようだった。
無事見慣れた三人の後ろ姿を見つけ、イサークはほっと息を吐く。そしてまた彼らの視界に入らない暗がりへ身を潜める。
と、その時だった。
「イサーク、御苦労だった。交代の時間だ」
後ろから声を掛けられる。足音ひとつ立てず彼に近付いてきたのは、同僚であり先輩でもあるビダルだった。
上下とも黒の服に身を包み、頭には黒い帽子を目深に被っている。そのひっそりした動きに闇のような姿も相まって、まるで影から抜け出て来たかのような男だった。
慣れた同僚の気配に、イサークは驚かなかった。
「ビダルさん、お疲れ様です。もうそんな時間でしたか」
「ああ。何か引き継いでおくことはあるか?」
ビダルの声は低く落ち着いている。静かで落ち着いた様子は四十代にも見えるし、皺の見えないのっぺりした風貌は二十代のようにも見える。どうにも年齢の判りづらい男だった。
「はい、勇者達はどうやら明日ダンジョンに向かうようです。今日は武器や道具を一通り揃え、前準備って感じですかね。それから、今日はまだどこかに向かう用事があるようです」
得た情報に予測を踏まえ簡潔に報告するイサークに、ビダルは頷いた。
「了解した。後の尾行は俺が請け負う。お前は宿で休むか、本拠地に戻るといい。ここ最近はずっと働き詰めだからな」
「わかりました。俺ちょっと本拠地に用事もあるんで、一旦戻ります。ここまでの経過も念の為、作戦参謀班に報告しときますね」
「ああ、頼む。――ではな」
そう最後に言うと、ビダルの姿はすぐに人混みに紛れた。彼に任せておけば後は間違いないだろう。名うての諜報員である彼の実力をイサークは心から信頼していた。
彼の背を見送ると、うーんと伸びをする。
「さて、じゃあぼちぼち戻るとすっかな。……あの馬鹿にも文句言ってやらなきゃだしなぁ」
イサークは悪友のへらりとした笑い顔を脳裏に思い浮かべる。今日もあの男は本拠地待機の筈だ。
柳に風のような奴だが、今日こそは一発言ってやらなければ。握った拳を掌でぱしんと受け止めふふふと低く笑うと、イサークは転移魔法陣のある方角へと足を向けた。
そして今日も彼の任務は、無事終わりを迎えたのだった。
≪特定非営利活動法人ゆうしゃ職員名簿≫
【登録名】イサーク(22歳)
【レベル】46
【所属班】情報偵察班
【称号】ゼフォールの義賊
【前職】盗賊(義賊)
【愛用武器】鎖鎌
【スキル・アビリティ】
『侵入』……屋内での行動の際、通常入れない屋根裏部屋などに侵入できる。
『トラップ回避』……高確率で罠にかからない。
『抜け目ない目』……戦闘終了時、手に入る金やアイテムが多くなる。
『解読』……古代語など、ある程度の特殊文字を解読できる。(高難度のもの除外)
『俊足』……通常の五倍の速度で移動できる。戦闘時に使用すれば、回避力+20。




