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第63話 神聖王国への上陸と、腐敗した港湾都市の浄化

第63話 神聖王国への上陸と、腐敗した港湾都市の浄化

荒れ狂う竜鳴海峡の中央に、突如として姿を現した白亜の巨大な海上要塞都市『オケアノス』。

それは、トウヤの規格外の錬金魔法と、玄亀族の優れた造船技術、そして古代機巧メイドのアリアがもたらしたロストテクノロジーが融合して生まれた、決して沈むことのない「絶対安全圏」であった。

周囲を高さ五十メートルの防潮城壁で囲まれ、エルフのシルフィが展開した『大精霊の浄化防風・防波結界』によって、外の地獄のような暴風雨と高波は完全に遮断されている。城壁の内側は、春のような心地よい微風が吹き抜け、青々とした人工の芝生すら整備された、まさに海の上の楽園であった。

オケアノスの中央にそびえ立つ、純白の魔導コンクリートと防弾・防魔ガラスで構築された巨大なターミナルビルの最上階。

その広々とした大執務室では、トウヤを囲むようにして特務チームの面々と、新たに商会の保護下に入った神聖王国ルミナリアの聖女エレナ、そして彼女に絶対の忠誠を誓う聖騎士団長レオンが集まり、次なる目的地に向けた情報共有と戦略会議を行っていた。

窓の外では、依然として凶暴な嵐が吹き荒れ、巨大な波がオケアノスの防壁に打ち付けて凄まじい水しぶきを上げている。しかし、室内には獣人の少女ミアが淹れた、リラックス効果のある特製ハーブティーの芳醇な香りが漂い、外の狂気とは無縁の平穏な時間が流れていた。

「さて、エレナ殿。俺たちの『道』は、このオケアノスを中継地点として、さらに東へ、あんたたちの故郷である神聖王国ルミナリアへと真っ直ぐに伸ばす予定だ。だが、その前に、ルミナリアの現在の正確な情勢と、上陸地点となる港の情報を確認しておきたい。インフラを敷くには、まず地盤の調査が不可欠だからな」

トウヤが促すと、鼬人族イタチマンの情報屋リンが眼鏡を中指で押し上げ、手元の魔導端末を操作した。テーブルの中央に、神聖王国ルミナリアの巨大なホログラムマップが青白い光と共に展開される。

エレナは、温かいティーカップを両手で包み込み、少し悲しげな、しかし覚悟を決めた表情で口を開いた。

「はい、トウヤ様。……我が祖国、神聖王国ルミナリアは、教皇グレゴリウス聖下を頂点とし、数名の枢機卿が実権を握る宗教国家です。国土全体が『大聖結界』と呼ばれる古代の魔導結界に覆われており、魔獣の侵入を防ぐ『神に守られた安全な国』として長年栄えてきました」

「だが、それは表向きの顔に過ぎない。現実には、インフラの維持に失敗しているのだろう?」

トウヤの冷徹な、しかし的を射た指摘に、エレナは重く頷いた。

「その通りです。近年、結界を維持するための莫大な魔力鉱石が慢性的に枯渇し、結界の全体的な出力は年々低下しています。本来であれば、国を挙げて魔力鉱石の代替えエネルギーを探すか、西方大陸との交易で資源を確保すべきでした。しかし、実権を握る枢機卿たちは、あろうことか『自分たちが住む王都の中心部や、特権階級の貴族が住むエリアの結界だけを強化し、周辺の都市や下層民が暮らすスラムの結界への魔力供給を断つ』という暴挙に出ているのです」

エレナの声が、怒りと悲しみで微かに震える。

「結果として、辺境の都市やスラムでは結界の綻びから次々と凶悪な魔獣が侵入し、多くの善良な民の犠牲者が出ています。にもかかわらず、上層部はそれを『信仰心が足りないための神罰』として隠蔽し、貧しい民からさらに重税と魔力結晶を取り立て続けているのです。……私は聖女として、その惨状を見るに見かね、教皇聖下に何度も直訴しました。しかし、結果は……」

「結果は、体よく『親善大使』という名目で、成功するはずのない嵐の海峡横断を命じられ、事実上の追放処分にされたというわけか。……自分たちだけが安全な安全圏セーフエリアに引きこもり、弱者を切り捨てて私腹を肥やす。俺が最も嫌悪する、腐りきった権力者の典型だな」

トウヤの瞳に、絶対零度よりも冷たい怒りの色が宿る。

彼の掲げる【安全第一】死に戻り商人の異世界スローライフ~万能魔法と『リトライ』を駆使して完璧な物流網とインフラを整備し、のんびり隠居を目指します~ という理念は、すべての者に平等に安全と豊かさをもたらすものであり、決して一部の特権階級の支配欲を満たすためのものではない。

聖騎士団長レオンも、悔しそうに白銀のガントレットを軋ませるほど強く拳を握りしめた。

「我々聖騎士団も、辺境の民を救うために出撃を要請しました。しかし、枢機卿たちは『結界内の治安維持が最優先だ』と取り合ってくれませんでした。聖女様が西方大陸へ派遣されたのも、結界の綻びを憂い、民を救おうと奔走する聖女様が、彼らの腐敗した支配体制にとって目障りになったからに他なりません」

「大体の状況は把握した。……リン、マイロ。上陸予定地の港の状況はどうなっている?」

「へい、会長。我々がこれから敷設するハイウェイの直線上に位置するのは、神聖王国の西の玄関口である港湾都市『ポルタ・ルミナ』でさぁ。かつては西方大陸との交易で栄えた最大の港町ですが、現在は海峡の荒天により交易は完全に途絶し、街は衰退の一途を辿っていやす」

犬人族の地図職マイロが、ホログラムの港の部分を拡大する。

「さらに付け加えるなら」と、リンが冷たい声で補足する。

「現在、ポルタ・ルミナは枢機卿ルキウスの息がかかった『バルバス』という腐敗した代官が支配しています。彼は、わずかに入港する密輸船や地元の貧しい漁師から法外な入港税や保護費をむしり取り、逆らう者は『異端』として捕らえ、奴隷として売り飛ばしているという黒い噂が絶えません。港の治安は最悪、インフラは崩壊状態。まさに、掃き溜めのような場所です」

「腐敗した代官に、法外な税、そして奴隷狩りか。……俺たちが新しい市場に挨拶に行くには、ちょうどいいサンドバッグだな」

トウヤは、ニヤリと商人らしい、しかし底知れぬ冷酷さを秘めた笑みを浮かべた。

「俺たちの『世界一安全で快適なインフラ』を、あの傲慢な国に真っ直ぐに突き刺してやる。邪魔をする腐敗した輩は、俺たちが物理的、かつ経済的に完全に駆除し、ポルタ・ルミナの港を俺たちの『絶対安全圏』に書き換える。特務チーム、出航の準備だ。エクスプレスを前進させろ!」

「「「了解しました、会長!!」」」

トウヤの力強い号令と共に、安全第一商会の面々はそれぞれの持ち場へと勢いよく散っていった。

エレナはその背中を見つめ、自身の選択が間違っていなかったことを確信し、腐敗した祖国が浄化される日のために、静かに、しかし強い意志を持って祈りを捧げた。

オケアノスの巨大な防壁門が重々しい音を立てて開き、漆黒の紅蓮隕鉄装甲と黄金の意匠が眩しく輝く巨大な装甲列車『安全第一エクスプレス』が、荒れ狂う竜鳴海峡の後半戦へとその巨体をゆっくりと乗り出した。

列車の先頭には、ドワーフの機関技師ルミナと猫人族の魔導具技師ニアが徹夜で組み込んだ『海上・水陸両用ユニット』が展開され、波の抵抗を極限まで減らす流線型のシールドが張られている。

トウヤは列車の先頭デッキに立ち、再び彼の中に眠る、世界を書き換えるほどの規格外の魔力を解放した。

「これより、神聖王国へ至る最後の道を敷く!」

「『全魔法創造』――『超広域水・土・氷属性魔法複合・海溝隆起及び永久凍結(トレンチ・レイズ・アンド・アブソリュート・フリーズ)』、からの『錬金魔法・浮体式超重装甲・魔導ハイウェイ構築(フローティング・ヘビーアーマー・ハイウェイ・クリエイト)』!!」

カッ……!!!

凄まじい轟音と眩い閃光と共に、オケアノスから神聖王国の港湾都市ポルタ・ルミナへ向けて、純白の魔導コンクリートと紅蓮隕鉄で構成された、絶対に沈むことのない巨大な『浮体式・魔導ハイウェイ』が、まるで魔法の絨毯のように海を割って猛スピードで構築されていく。

エクスプレスは、自らが海の上に架けたばかりの真っ白な道を、暴風雨と高波を切り裂きながら滑らかに駆け抜けていく。シルフィの『大精霊の浄化防風・防波結界』が列車の周囲を完全に守り、外の荒れ狂う波や雷の音は一切車内には届かず、クラシック音楽でも聴きながら優雅に紅茶を飲めるほどの快適さが保たれていた。

「会長、レーダーに巨大な生体反応多数! 海峡の東側を縄張りにしている魔獣の群れが、下から急浮上してきやすぜ!」

マイロが魔導レーダーを見つめながら、緊迫した声で報告を上げる。

進行方向の海面が不気味に隆起し、黒く濁った海中から無数の巨大な触手が姿を現した。

それは、一本の触手が大木ほどもある巨大なイカの魔獣――『暴食海魔クラーケン・ロード』の大群であった。彼らは、自分たちの縄張りに突如として現れた真っ白なハイウェイと鉄の塊を外敵とみなし、これを破壊して食らい尽くそうと一斉に群がってきたのだ。

「ギシャァァァァァッ!!」

クラーケン・ロードの吸盤がついた巨大な触手が、ハイウェイの防壁に容赦なく叩きつけられようとした、その瞬間。

「俺たちの綺麗な道に、生臭い触手を這わせるな」

トウヤの冷徹な声が響き渡る。

実はトウヤは、数分前の『リトライ』によって、このポイントでクラーケンの群れが奇襲を仕掛けてくることを既に完全に把握しており、特務チームと防衛システムを完璧なタイミングで待機させていたのだ。

「対艦迎撃システム、起動。魔導ジャマー展開、ならびに高出力プラズマ・カッター、射出します」

列車の屋根に立つ古代機巧メイドのアリアが、瞳を赤く発光させ、無機質な声で告げる。

アリアの装甲から無数の小型魔導ビットが射出され、クラーケンの群れを取り囲むように空中に展開された。ビットから放たれた不可視の強力な妨害電波ジャマーが魔獣の神経系を直接狂わせ、彼らの動きを完全に麻痺させた。

そこへ、商会が誇る戦闘狂の特務チームが容赦なく襲い掛かる。

「オラァァァッ! イカ焼きの時間だぜ! 炭になるまで焼いてやる!」

人間の冒険者ザックのバスターソードが凄まじい摩擦熱で炎を纏い、クラーケンの太い触手をまるでバターのように次々と切り裂き、焼き焦がしていく。

「水には水だ! 竜の覇気、とくと味わえ!」

竜人族のリュウガが超高圧の螺旋水流刃を両手から放ち、魔獣の巨大な目玉と急所を的確に撃ち抜いていく。

「虎王の咆哮!! 海の底まで響け!」

虎人族のガレスの圧倒的な音圧を伴う咆哮が海水を吹き飛ばし、クラーケンの巨体を海上に強制的に露出させる。

「アリア、トドメだ。塵も残すな」

トウヤの静かな命令が下る。

「了解、マスター。古代兵装、主砲発射」

アリアの制御により、エクスプレスの先頭車両に新たに組み込まれた『対城塞殲滅用・エーテル・ブラスター』が火を噴いた。

極太の青白い閃光が海原を薙ぎ払い、クラーケン・ロードの巨体と周囲の海水を一瞬にして蒸発させる。光が収まった後には、魔獣の痕跡すら残っていなかった。

圧倒的な武力と完璧な防衛システム、そして『リトライ』による完全な予測の前には、海の覇者でさえも単なる道の上の小石に過ぎなかった。

エクスプレスは一切の減速をすることなく、魔獣の群れを完全に蹂躙し、神聖王国へ向けて一直線に進んでいった。

数時間後。

ついに荒れ狂う竜鳴海峡を完全に突破した『安全第一エクスプレス』と、それに続く純白の魔導ハイウェイは、神聖王国の西の玄関口、港湾都市『ポルタ・ルミナ』へと到達した。

しかし、エクスプレスの車窓から見えた港の光景は、神聖にして大国と呼ばれるルミナリアの玄関口としては、あまりにも悲惨で目を覆いたくなるようなものであった。

かつては白亜の美しさを誇っていたであろう港の施設は黒く薄汚れ、石畳はひび割れて雑草が生い茂っている。防波堤は崩れかけ、停泊している数隻の漁船はどれもボロボロで、今にも沈みそうだった。

港には活気がなく、痩せこけた下層の民衆や、首に奴隷の首輪をつけられた亜人たちが、重い荷物を運ばされて牛馬のように酷使されていた。

その一方で、港の中心にある豪華な税関の建物だけは無駄に金ピカに煌めき、肥え太った役人と、立派な鎧を着た騎士たちが、痛めつけられる民衆を見て下劣な笑いを浮かべながら偉そうにふんぞり返っている。

「ここが、神聖王国の港……。私が知っている美しいポルタ・ルミナではありません。これではまるで、盗賊に支配されたスラムです……!」

列車の窓から街の惨状を見たエレナが、信じられないというように口元を手で覆い、悔しさに震えた。

プァァァァァァァンッ!!!!

エクスプレスの巨大な汽笛が港中に鳴り響く。

海を割って一直線に伸びてきた真っ白な巨大な橋と、そこを走る未知の漆黒の装甲列車に、港の役人や騎士たちは腰を抜かさんばかりに驚き、パニックになって広場へと集まってきた。

「な、なんだあの巨大な鉄の化け物は!? まさか、あの嵐の竜鳴海峡を渡ってきたというのか!?」

豪華なシルクの衣装を着て、宝石をジャラジャラと身につけた豚のように肥満した代官、バルバスが、騎士たちを盾にしながら震える声で叫んだ。

プシューッという排気音と共にエクスプレスの扉が開き、トウヤが特務チームの面々と共に、堂々とした足取りで港の汚れた石畳へと降り立った。その後ろには、聖女エレナと聖騎士団長レオンも静かに続いている。

「俺たちは『安全第一商会』。西方大陸から、絶対安全な物流インフラを開通させるためにやってきた。……この港の責任者は誰だ?」

トウヤがスマートな、しかし目の奥が全く笑っていない商人の笑みを浮かべて尋ねると、肥満体の代官バルバスは、相手がただの商人だと知って、途端に傲慢な態度に豹変した。

「ふんっ! どこから湧いて出たか知らんが、ここは神聖王国の神聖なる領土だ! 勝手に巨大な建造物を造りおって! 入港したければ、積んでいる荷物の八割を『特別入港税』ならびに『教皇聖下への寄付金』として納めろ! それと、その鉄の乗り物も我々が接収して徹底的に調べる必要がある! 逆らう者は異端審問にかけるぞ!」

代官のあまりにも横暴で腐敗しきった要求に、ザックやリュウガたちがピキリと青筋を立て、武器の柄に手をかける。

しかし、それよりも先に、代官の背後にいた騎士の一人が、トウヤたちの後ろに立つエレナの姿に気づいて素っ頓狂な声を上げた。

「だ、代官様! あれは……聖女エレナ様ではありませんか!? なぜ西方大陸の商人と共に!」

「なに!? 聖女様だと!?」

代官が豚のような目を丸くしてエレナを見つめる。

エレナは、毅然とした態度でトウヤの隣に進み出た。

「その通りです。私は神聖王国聖女、エレナ。彼らは、嵐の海で遭難しかけた私を救ってくださった大恩人であり、国賓として最大の敬意を払って迎え入れるべき方々です。その無礼な態度を直ちに改めなさい、代官バルバス!」

聖女の凛とした言葉に、周囲で強制労働をさせられていた民衆たちが「聖女様だ!」「聖女様が帰ってこられた!」と希望に満ちたどよめきを上げる。

しかし、代官バルバスは一瞬驚いた顔をした後、醜く顔を歪めて下劣な笑い声を上げた。

「ゲハハハハ! 聖女様だと? 笑わせるな! 枢機卿ルキウス様から、すでに全国に極秘の通達が来ているのだよ! 『聖女エレナは、西方大陸の異端の商会と結託し、祖国を売ろうとした大逆人である。見つけ次第、異端審問にかけるため捕縛せよ』とな!」

「なっ……! ルキウス枢機卿が、私を反逆者に……!?」

エレナが絶句する。教皇たちは、自分たちの陰謀を隠蔽し、安全第一商会の技術を武力で奪い取る口実として、エレナを最初から使い捨ての駒として切り捨てるつもりだったのだ。

「おい、お前ら! その反逆者の女と、異端の商人どもを一人残らず捕らえろ! 抵抗するならその場で斬り捨てても構わん! あの鉄の船と積み荷は全て私のものだ!」

代官の命令により、数十人の武装した騎士たちが一斉に剣を抜き、トウヤたちに殺意を剥き出しにして襲い掛かろうとした。

「……なるほど。やはり腐ったミカンは、箱ごと焼き払って更地にするしかないようだな」

トウヤは、深いため息をつき、そして、絶対零度よりも冷たい氷のような瞳で代官を見据えた。

「ザック、リュウガ、ガレス、ヴォルグ。……ゴミ掃除の時間だ。この港に巣食う害虫どもを、一匹残らず駆除しろ。ただし、民間人には指一本触れさせるな」

「おうっ! 待ってました! 腐った役人の金で動く私兵なんて、斬る価値もねえがな! 峰打ちで十分だぜ!」

ザックが大剣を抜き放ち、騎士たちの群れへと猛然と飛び込んでいく。

「フン。神の名を騙る愚か者どもめ。真の力というものをその身に刻んでやる」

リュウガが冷笑を浮かべ、水圧の拳を構える。

「オラァッ!」

ザックの大剣の強烈な峰打ちが炸裂し、重装備の騎士たちがボーリングのピンのように次々と壁際まで吹き飛んでいく。

「グルァァッ!」

狼人族のヴォルグが目にも止まらぬ速さで懐に飛び込み、騎士たちの剣や槍を次々と素手で叩き折り、顎に的確なアッパーを叩き込んで昏倒させていく。

「ひぃぃぃっ!? な、なんだこいつらは!? 化け物か!?」

わずか数十秒。代官が誇り、恐怖で街を支配していた数十人の騎士たちは、一人残らず床に転がり、白目を剥いて気絶していた。

「ば、馬鹿な……。私のお抱えの精鋭たちが、一瞬で……!」

腰を抜かして石畳にへたり込み、ガタガタと震える代官バルバスを見下ろし、トウヤは冷酷な足取りで近づいた。

「俺は、俺の造り上げる安全な物流網を、己の私腹を肥やすためだけに利用しようとする輩を最も嫌悪する。……リン、ファラ。この豚が隠し持っている不正な財産と、溜め込んだ物資の隠し場所を全て洗い出せ」

「了解です、会長。すでに彼の屋敷に潜入し、金庫の暗証番号と裏帳簿のデータは全て押さえてあります。真っ黒ですね」

「隠し倉庫の場所も、特定済みですよ。いつでも差し押さえと民衆への還元が可能です」

リンと豹人族のファラが、代官にとって死刑宣告に等しい言葉を並べ、不敵な笑みを浮かべる。

「エ、エレナ様! お助けください! 私はルキウス様に命令されただけで、本意では……!」

見苦しくすがりついて命乞いをする代官に、エレナは冷たく、毅然と言い放った。

「貴方のこれまでの悪行、そして善良な民を苦しめた罪は万死に値します。もはや神の慈悲も届かないでしょう。レオン、彼を拘束しなさい」

「はっ!」

レオンが代官を荒々しく縛り上げ、無様に引きずっていく。

「さて、害虫駆除が終わったところで、この腐った港の『再開発』を始めるとしよう」

トウヤは、ボロボロになった港の施設と、すがりつくように、希望の光を見るようにして見つめてくる下層民や亜人たちを見渡した。

「皆、聞いてくれ。俺たちは安全第一商会だ。今日、この瞬間から、このポルタ・ルミナの港は、俺たち商会が完全に管理し、『絶対安全圏』へと作り変える。不当な税や奴隷労働は一切撤廃し、働きたい者には正当な高い賃金と、絶対に安全な衣食住を保証する!」

トウヤの宣言と同時に、エクスプレスの巨大な貨物車両が開き、山のような新鮮な食料、そして最新の建築資材が運び出された。

「ほ、本当か……? あの悪代官がいなくなっただけでなく、腹いっぱい飯まで食わせてくれるのか……?」

「俺たち亜人も、人間と同じように平等に扱ってくれるのか……?」

半信半疑だった民衆たちは、ミアが巨大な鍋で振る舞い始めた温かい肉入りスープの匂いに誘われ、やがて歓喜の涙を流して商会に感謝の言葉を叫び始めた。

「トウヤ様……。貴方様は本当に、一瞬にして絶望を希望に変えてしまうのですね」

エレナが、民衆の笑顔を見て感極まったように呟く。

「インフラを整え、経済を正しく回せば、人は自然と豊かになる。ただそれだけのことだ。……おっと、優秀な人材のスカウトも忘れてはいないぞ」

トウヤの視線の先には、港の隅で驚いたようにこちらを見ている、二人の亜人がいた。

一人は、青い髪と長い耳、水かきのある手を持つ『海エルフ』の女性。もう一人は、美しい羽根を持ちながらもボロボロの服を着た『鳥人族』の青年だった。彼らは優れた能力を持ちながら、この国では異端の亜人として迫害され、港で奴隷のように酷使されていたのだ。

「そこの二人。海エルフと、鳥人族だな? 俺たちの商会では、これから大規模な海洋交易と、大陸間の通信網を構築する。君たちの航海士としての腕と、空の通信士としての能力を見込んで、我が商会のスタッフとして迎え入れたい。どうかな?」

トウヤが優しく、しかし確信に満ちた声で手を差し伸べると、二人は信じられないというように目を見開いた。

「わ、私を、航海士として……!? この国では、亜人は船の舵を握ることすら許されないのに……」

「俺の飛ぶ力を、通信に使ってくれるっていうのか……!?」

「俺たちの商会に、種族の壁はない。実力と、安全を守る意志があるかどうか、それだけだ。もちろん待遇は保証する」

二人はトウヤの手を強く握り返し、涙を流して深く頷いた。

「はいっ! 私の航海術、すべて安全第一商会のために捧げます!」

「俺の翼も、あんたたちのために使うぜ!」

こうして、神聖王国の玄関口であるポルタ・ルミナは、わずか一日の間に、トウヤの圧倒的な武力とインフラ構築力によって、腐敗した支配から完全に解放され、難攻不落の『絶対安全拠点グランドターミナル』へと生まれ変わった。

東の大国ルミナリアへの上陸を果たし、強力な地盤と新たな仲間を手に入れた安全第一商会。

しかし、王都に巣食う教皇と枢機卿たちが、この事態を黙って見過ごすはずもない。

トウヤたちの鋼鉄のレールは、神の名を騙る腐敗した大国の心臓部へ向けて、さらなるトラブルと陰謀を粉砕しながら、力強くその道を伸ばしていくのであった。

【現在のステータス状況】

名前:トウヤ

年齢:18

職業:商人 / 冒険者(ランクS)

レベル:147 (荒狂う海峡を完全に突破し、港湾都市を制圧・浄化したことにより大幅レベルアップ!)

体力:1850/1850

魔力:88,000/100,000 (海溝隆起とハイウェイ構築により消費。アリアとのリンクにより急速回復中)

固有スキル:『リトライ(発動可能)』(※クラーケン・ロードの奇襲を事前に予測し、完璧なタイミングで迎撃するために一度使用)

魔法適性:全属性(火・水・風・土・光・闇・時空・無)

取得スキル:鑑定、算術、交渉術、全魔法創造、全武具習熟、気配遮断、錬金、空間把握、海洋環境制御、砂漠環境制御、要塞建築術、経済掌握術、毒物浄化制御、大規模地下掘削術、国家間交渉術、古代技術解析、広域インフラ防衛術、超高架建築術、深海・湖底インフラ構築術、地熱・極地環境制御術、古代機巧制御術、海上浮体建築術、超広域気象制御術

【仲間・後援者の状況】

ミア(獣人の少女):港で飢えていた民衆に温かい肉入りスープを大鍋で振る舞い、ポルタ・ルミナの民衆から「慈愛の女神」として崇められ始めている。

シルフィ(エルフの護衛):海上ハイウェイの結界を維持しつつ、港の淀んだ空気を風の魔法で浄化し、快適な環境作りに貢献。

ザック(人間の冒険者):腐敗した騎士たちを大剣の峰打ちで次々と吹き飛ばし、「弱すぎるぜ!」と少し物足りなそうにしている。

リュウガ(竜人族の戦士):神聖王国の騎士たちの練度の低さに呆れつつ、ルカ(海エルフ)に海の知識について質問攻めにしている。

ガレス(虎人族の戦士):港の崩壊した防波堤を自慢の怪力で一瞬にして組み直し、民衆から喝采を浴びている。

マイロ(犬人族の地図職人):ポルタ・ルミナの詳細な市街地図を作成し、隠し倉庫や地下水路のネットワークを完全に把握した。

ピピト(鳥人族の飛脚):新たに仲間に加わった鳥人族の青年と意気投合し、神聖王国全土の空の通信網構築に向けて飛び回っている。

リン(鼬人族の情報屋):代官バルバスの裏帳簿から、ルキウス枢機卿の資金源や人脈のリストを完全に掌握し、王都の経済を裏から支配する計画を練る。

ヴォルグ(狼人族の傭兵):拘束した代官の私兵たちを徹底的に尋問(物理)し、神聖王国軍の配置や弱点を聞き出している。

ファラ(豹人族の女戦士):夜のポルタ・ルミナを巡回し、治安を悪化させるゴロツキたちを影から次々と始末して街の安全を確保した。

セレン(セイレーン族の海先案内人):海エルフのルカとすぐに仲良くなり、海峡の安全な航路について情報交換をしている。

ルミナ(ドワーフの機関技師):港に放置されていたボロボロの漁船を、魔導エンジン搭載の最新鋭の小型輸送船に勝手に改造して楽しんでいる。

ニア(猫人族の魔導具技師):アリアの対艦兵器の威力にすっかり魅了され、「もっと火力を上げましょうにゃ!」と危険な改良を企てている。

アリア(古代機巧メイド):魔獣と腐敗騎士を無慈悲に制圧した後、「マスターの安全を脅かすゴミの清掃を完了しました」と無表情でトウヤに報告。

エレナ(神聖王国ルミナリア聖女):祖国の腐敗を目の当たりにし絶望するも、トウヤがもたらした希望の光に涙し、商会と共に国を根本から変革する決意を新たにする。

レオン(聖騎士団長):トウヤたちの圧倒的な実力と、民を救う行動力に深く感銘を受け、聖騎士としての真の誇りを取り戻す。

ルカ(海エルフの航海士):【新規加入(海洋航路管理部チーフ)】迫害されていたところをトウヤに救われ、商会の航海士として卓越した海流の知識を提供する。

インフラ状況:竜鳴海峡を完全に突破し、神聖王国の玄関口『ポルタ・ルミナ』に絶対安全拠点グランドターミナルを設立。港のインフラ再開発を開始。

資金:金貨7,800,000枚(代官バルバスの不正蓄財と隠し物資を全額没収したことにより、商会の資金がさらに増加)

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作もよろしく(*´∀`)ノ

しがらみだらけの人生に疲れたので、記憶を消して無人境へ転生します〜無限魔力の【万能創造】で理想の拠点を作ってたら、最強の魔獣たちが勝手に懐いて最高の家族になりました〜

https://ncode.syosetu.com/n3777mp/

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