第56話 北方水都アクアリアへの道と、迷いの森の獣人衆
第56話 北方水都アクアリアへの道と、迷いの森の獣人衆
軍事国家ヴァルカン帝国の理不尽な侵略を、規格外のインフラと圧倒的な防衛力で完全に退けた『安全第一商会』。
国境の城塞都市アイゼンでの大勝利は、瞬く間に西方大陸全土へと知れ渡った。かつては深刻な異常気象による飢餓と、隣国ヴァルカンからの武力による脅威に怯え、滅亡の淵に立たされていたゼフィラス王国は、今やトウヤが敷設した『魔導ハイウェイ』と『クリスタル・チューブ鉄道』によって莫大な物資が血液のように循環する、西方大陸における最大の安全地帯へと変貌を遂げていた。
帝国の十万の大軍がアイゼン要塞の前に手も足も出ずに敗走したという事実は、これまで強者の暴力に虐げられてきた多くの国々や都市に希望を与え、同時に、安全第一商会の名を「世界を創り変える神の如き組織」として広く知らしめる結果となったのである。
王都ゼフィリアの中心にそびえ立つ、純白の魔導コンクリートと透明なクリスタルガラスで構築された巨大要塞『ゼフィリア・グランドターミナル』。
その最上階にある、王都の美しい街並みを一望できる豪奢な大執務室では、トウヤと商会の主要メンバー、そしてゼフィラス王国の第一王女クレア・フォン・ゼフィラスが集まり、西方大陸の巨大なホログラムマップを囲んで、次なるインフラ網の拡張会議を開いていた。彼らが掲げる【安全第一】死に戻り商人の異世界スローライフ~万能魔法と『リトライ』を駆使して完璧な物流網とインフラを整備し、のんびり隠居を目指します~ という絶対的な理念は、ヴァルカン帝国の崩壊によって、さらにその重要性と説得力を増していた。
「さて。西の国境線はアルベルト辺境伯とアイゼン要塞の鉄壁の守りで完全に安定した。ヴァルカン帝国は自滅の道を辿り、こちらに手を出せる状態ではない。当面は内部の暴動鎮圧と経済崩壊の対応で手一杯だろうな」
トウヤは、淹れたての芳醇な香りのコーヒーが入ったマグカップを片手に、広大なホログラムマップ全体を見渡した。
「だが、ゼフィラス王国を真の『絶対安全圏』にするためには、まだ物流のパイプが足りない。南方大陸エルドラドからの食料と物資に完全に依存しすぎるのも、リスク管理の観点からは決して好ましくない。この西方大陸の内部で、新たに豊かな資源を持ち、相互に物資を供給し合える安全な交易都市を開拓する必要がある」
トウヤの言葉に、鼬人族の情報屋リンが眼鏡をキラリと光らせ、手元の魔導端末を素早く操作した。ホログラムマップの北側、巨大な湖に面した美しい青色の都市がハイライトされる。
「それならば、王都ゼフィリアから北へ五百キロほど離れた場所に位置する独立都市、『北方水都アクアリア』が最適です。アクアリアは巨大な淡水湖『レムリア湖』の上に築かれた歴史ある水上都市であり、豊富な水産資源と、湖底から採掘される希少な水属性の魔法鉱石『蒼海晶』の産地として知られています。もしここを我々の物流ネットワークに組み込むことができれば、ゼフィラス王国の水不足問題は完全に解決し、さらに莫大な利益を生む交易の要所となるでしょう」
「なるほど、水産資源と魔法鉱石か。それは非常に魅力的な市場だな」
トウヤが深く頷くと、傍らにいた犬人族の地図職人マイロが、少し困ったようにふさふさの尻尾を垂らして、地図の別の部分を肉球で指差した。
「へい、会長。魅力的なのは確かなんですが、王都からアクアリアへ続くルートには、とんでもない難所が待ち構えていやす。王都とアクアリアの間には、鬱蒼と茂る『幻惑の樹海』……通称『迷いの森』が数百キロにわたって広がっているんでさぁ。ここは一年中、方向感覚を完全に狂わせる不気味な濃霧と、吸い込めば発狂する幻覚を見るという致死性の毒花粉が充満していて、一歩でも足を踏み入れた行商人や冒険者は、誰一人として帰ってきやせん」
クレア王女も悲痛な面持ちで同意する。
「マイロの言う通りです。かつては王都からも飛竜便や、森を大きく迂回するキャラバンを使って細々と交易を行っていましたが、近年の異常気象の影響で樹海の魔力が暴走し、空すらも毒の濃霧に覆われてしまいました。今、アクアリアは完全に陸の孤島となり、外部との連絡が完全に途絶えている状態です。彼らには豊富な資源があっても、それを外に運び出す術が全くないのです。おそらく、街は深刻な物資不足に喘いでいるはずです」
「……つまり、インフラが完全に死んでいるというわけだな」
トウヤの瞳に、インフラ構築に対する並々ならぬ執念と、商魂の炎が激しく宿る。彼にとって「危険で通れない道」とは、忌避すべきものではなく、「自らの手で絶対に安全な道に書き換えるべき対象」に他ならないのだ。
「道がないなら、造ればいい。毒花粉や濃霧が道を阻むというなら、それらを完全に無効化する『絶対安全な道』を空に架けるまでだ。リン、マイロ。直ちに水都アクアリアへのインフラ敷設計画を立案しろ。目標は『幻惑の樹海』の完全なる上空突破だ」
「「了解しました、会長!」」
「フフッ、毒や幻覚の森ですか。私の風の浄化魔法と、結界維持の腕の見せ所ですね。車内の空気は、大精霊の息吹で絶対に清浄に保ってみせます!」
エルフの護衛シルフィが、やる気に満ちた美しい笑顔を見せる。
「森を切り拓くなら、私とルミナで開発した新型車両の出番ですにゃ! 超大型の伐採&架橋コンテナ『ヘビー・ブリッジ・ビルダー』の最終調整は完璧に仕上げておきましたからにゃ!」
猫人族の魔導具技師ニアが、ドワーフの天才機関技師ルミナと嬉しそうにハイタッチを交わす。
「よーし! それじゃあ、過酷な長旅とインフラ工事の前の腹ごしらえに、今日はゼフィラス王国で採れたての新鮮なお野菜と、お肉をたっぷり使った『特製・大地の恵みゴロゴロポトフ』と、エルドラド産の香ばしいふかふかパンを用意するね! みんな、しっかり食べて栄養をつけてね!」
獣人の少女ミアが、魔導キッチンから元気いっぱいに声を張り上げた。
じっくりと煮込まれた肉の旨味と、野菜の甘さが溶け出したポトフの豊かな香りが大執務室いっぱいに広がり、安全第一商会の特務チームは、次なる未開の地への開拓に向けて、士気と食欲を最高潮に高めていった。
* * *
翌朝。ゼフィラス王都のグランドターミナルから、漆黒の紅蓮隕鉄装甲と黄金の意匠が眩しく輝く巨大な魔導装甲列車『安全第一エクスプレス』が、大地を震わせるほどのけたたましい汽笛と共に、北へ向けて力強く発車した。
今回の列車には、ルミナとニアが共同開発した新型のインフラ敷設用特殊車両『ヘビー・ブリッジ・ビルダー』が先頭に連結されている。これは、どんな悪路や深い谷底であろうとも、列車の進行方向に瞬時に強固な魔導コンクリートの橋脚を地中深くに打ち込み、巨大な高架橋(空中ハイウェイ)を全自動で空中に架けていくという、常識外れの重機車両であった。
王都を出て数時間。荒涼とした平原を抜け、エクスプレスの前方に、天まで届きそうなほど巨大な緑の壁が立ちはだかった。
「会長、見えてきやしたぜ。あれが『幻惑の樹海』……通称『迷いの森』です」
マイロが双眼鏡を覗き込みながら、緊張した声で報告する。
視界を完全に覆い尽くすほどの巨大で奇怪な植物が密生し、森の深部からは、白く濁った不気味な濃霧がとめどなく溢れ出している。鳥人族のピピトが上空からの偵察を試みようと飛び立ったが、霧は上空数百メートルまで分厚く立ち込めており、「霧の中に無数の不気味な影が蠢いている」と、顔面を蒼白にしてすぐに戻ってきた。
「……確かに、並の行商人や冒険者では一歩足を踏み入れただけで方向感覚を失い、幻覚に狂って魔獣の餌食になるだろうな。まさに死の森だ」
トウヤは列車のデッキに立ち、禍々しい魔力を放つ森を冷ややかに見据えた。
「だが、俺たちは迷わないし、足も止めない。森の中に危険が潜んでいるなら、森の木々よりも遥か上空に、俺たちの『絶対安全圏』を敷設する」
トウヤが両手を広げ、彼の中に眠る、世界を書き換えるほどの莫大な魔力を解放した。
「『全魔法創造』――『超広域土・木魔法・基盤隆起』、からの『錬金魔法・超高架式魔導ハイウェイ構築』!!」
カッ……!!!
トウヤの両手から放たれた目も眩むような黄金の魔力波が、幻惑の樹海の大地を激しく揺るがした。
ドゴォォォォォンッ!!!
森の巨大な木々を縫うようにして、大深度の地下から巨大な岩盤が天に向かって凄まじい勢いで隆起し、巨大な橋脚を形成していく。その上に、ルミナの『ヘビー・ブリッジ・ビルダー』から射出された純白の魔導コンクリートが滝のように流れ込み、瞬時に硬化。森の樹冠よりもさらに高い上空に、幅五十メートルにも及ぶ一直線の『空中魔導ハイウェイ』が、まるで魔法の絨毯のように前へ前へと形成されていくのだ。
エクスプレスは、自らが空に架けたばかりの真っ白な道の上を、猛スピードで滑らかに駆け抜けていく。
眼下には、毒の霧が渦巻く不気味な樹海が海のように広がっているが、高架の上にはシルフィが展開した『大精霊の浄化防風結界』がドーム状に張り巡らされており、有毒な花粉も幻覚を見せる霧も、一切列車には届かない。車内はミアが淹れたハーブティーの香りが漂うほど、快適で安全な空間が保たれていた。
「す、すっげえ……! 森の上に、一直線の巨大な橋を架けちまうなんて……! これなら迷う心配なんて全くねえな!」
人間の冒険者ザックが、列車の窓から眼下の絶景を見下ろしながら目を輝かせる。
「フン。地を這う虫けらどもの森など、我らが見下ろして進めばよいだけのことだ。トウヤの力は、まさに真の竜のごときスケールだな」
竜人族のリュウガも、腕を組みながら満足げに頷いた。
しかし、森の主たる魔獣たちも、自分たちの頭上に突如として現れた巨大な異物に黙ってはいなかった。
「会長! 下の樹海から、何かが猛スピードで橋脚を登ってきやす! こいつは……ただの魔獣じゃねえ!」
マイロが魔導レーダーを見つめながら叫んだ。
ズザザザザザッ!!!
巨大な魔導ハイウェイの橋脚を不気味な摩擦音を立ててよじ登り、高架の上に次々と姿を現したのは、全身が太い植物の蔓と鋭い棘で構成された巨大な人型の魔獣――『暴走食人花』の群れであった。
彼らは美しい女性のような顔の上半身を持っているが、下半身は巨大な食虫植物の顎になっており、その口からは鋼鉄をも溶かす強酸性の消化液をポタポタと垂らしている。
「シャーッ!!」
アルラウネの群れが、走行するエクスプレスに向かって、強酸の液と、幻覚作用のある極彩色に光る毒花粉を大量に噴射してきた。
「チッ、インフラの進路を塞ぐ害虫どもめ。この美しく安全な道を汚す前に、全て刈り取るまでだ!」
トウヤの冷徹な号令と共に、戦闘狂の特務チームの面々がデッキへと飛び出した。
「オラァァァッ! 雑草ども、俺のバスターソードで綺麗に剪定してやるぜ!」
ザックの紅蓮隕鉄の大剣が炎を纏って閃き、アルラウネの硬い蔓の胴体をスパッと綺麗に両断する。
「水破竜巻!! 毒の粉など、我が水流で洗い流してくれるわ!」
リュウガの放つ超高圧の螺旋水流が、空中に舞う毒花粉を完全に吹き飛ばし、アルラウネたちを高架の上から次々と弾き落としていく。
「虎王の咆哮!!」
虎人族のガレスの圧倒的な咆哮が植物魔獣の動きを本能的な恐怖で鈍らせ、その隙を突いて、豹人族のファラの双剣と狼人族のヴォルグの戦斧が、的確に彼らの弱点である胸部の魔石を破壊していった。
「ふふん! 寄ってくる不快な虫にはこれですにゃ! 『自動迎撃・魔導火炎放射器』起動!」
ニアが列車の操作パネルを肉球で勢いよく叩くと、列車の側面に無数に設置された防衛兵器が一斉に火炎を噴き出し、這い上がってくるアルラウネたちを瞬く間にチリチリの灰へと変えていった。
圧倒的な武力と完璧な防衛設備により、魔獣の群れはあっという間に駆除され、エクスプレスは順調に、そして安全に幻惑の樹海の上空を突き進んでいった。
* * *
樹海の中心部付近に差し掛かった時だった。
「会長! 前方の森の霧が少し開けた場所に、何やら巨大な生体反応が集中しています! どうやら、魔獣同士が争っているようで……いや、違います! あれは……人型の亜人の集落が、巨大な植物魔獣に襲われているんです!」
ピピトが上空から急降下してきて、切羽詰まった声で報告を入れた。
「なんだと? この死の森の中に、亜人が住んでいたというのか?」
トウヤが列車の速度を落とし、眼下の樹海を見下ろすと、確かに霧が少し晴れた盆地のような場所に、巨大な木々を切り出して作られた荒々しいが頑丈そうな集落があった。
そして、その集落を完全に包囲するようにして、先ほどのマッド・アルラウネの数十倍はあろうかという、全高三十メートルを超える超巨大な『大食人樹』が三体も暴れ回っていたのだ。
その絶望的な状況の中、集落を守るようにして必死に戦っているのは、筋骨隆々の分厚い肉体に丸い耳、そして全身をふさふさの茶色い体毛で覆われた――『熊人族』の戦士たちであった。
彼らは身の丈ほどもある巨大な丸太の戦鎚を振り回し、凄まじい怪力で食人樹の触手や棘を打ち砕いているが、圧倒的な体格差と無限に湧き出る毒花粉の前に、次々と体力を奪われ、倒れ伏していく。
「ガァァァッ! 負けるな! 誇り高き熊人族の森を、こんな化け物植物どもに奪われてたまるかぁぁっ!」
一際巨大な体躯を持ち、顔に大きな十字の傷がある熊人族の族長らしき男が、血まみれになりながらも凄まじい気迫で戦鎚を振るって部族を鼓舞しているが、状況は限界に達していた。
超巨大な食人樹の一体が、族長を丸呑みにしようと、鋭い牙の生えた巨大な顎を大きく開いて上空から襲いかかった。
「……あんな過酷な環境で生き抜く強靭な肉体と、巨大な木を軽々と切り倒し加工する腕力。彼らは、俺たちの商会における最高の『専属土木作業員』になりそうだな」
トウヤは、眼下の悲劇的な状況を見ながらも、商人の顔でニヤリと笑い、特務チームの面々に振り返った。
「みんな、出番だ。あの熊人族たちを救出する。商会の新たな従業員(仲間)を増やす大チャンスだぞ!」
「おうっ! 人助けなら任せときな! 派手に暴れてやるぜ!」
「フン、恩を売って労働力にするとは、相変わらず悪どい主だ。だが、あのデカブツを叩き潰すのは嫌いではないぞ」
ザックやリュウガたちが、獰猛な笑みを浮かべて武器を構える。
「シルフィ、ニア。列車の防衛と結界の維持は任せた。俺たちは直接下に降りて害虫駆除を行う」
トウヤは列車のデッキから、数十メートル下の集落に向かって躊躇いなく飛び降りた。
空中で、トウヤの周囲に凄まじい熱量の魔力が渦巻く。
「『全魔法創造』――『超広域火属性魔法・紅蓮の極大浄火』!!」
上空からトウヤが放った、太陽のように眩く輝く極大の火属性魔法が、族長に襲いかかろうとしていた超巨大な大食人樹の頭上に直撃した。
ドッゴォォォォォォォンッ!!!
鼓膜が破れんばかりの凄まじい轟音と爆炎が巻き起こり、鋼鉄の強度を持つと言われる食人樹の巨体が、一瞬にして芯から炭化し、黒い灰となってパラパラと崩れ落ちた。
「な、なんだ!?」
死を覚悟して目を閉じていた熊人族の族長が、驚愕して空を見上げる。
そこへ、トウヤと特務チームの面々が、風の魔法でフワリと、神の使いのように舞い降りた。
「初めまして、熊人族の皆さん。俺は安全第一商会のトウヤだ。……ずいぶんと分が悪い泥遊びをしているようだが、少し手を貸そうか?」
トウヤが涼しい顔で告げると同時に、ザックの大剣が炎を纏って二体目の食人樹の胴体を完全に両断し、リュウガの超高圧水流とガレスの拳の連携攻撃が、三体目の食人樹を跡形もなく粉々に打ち砕いた。
わずか数十秒。熊人族が何日も命がけで戦っても倒せなかった森の恐るべきヌシたちが、トウヤたちの圧倒的な暴力の前に完全に殲滅されたのだ。
「あ、あんたたち……一体何者なんだ……!? ただの人間が、こんな死と幻覚の迷いの森の奥深くに……!?」
族長が、信じられないものを見るような目で、大剣を肩に担ぐザックや、静かに佇むトウヤたちを見つめる。
「言っただろ、安全第一商会だ。世界中に安全な道を造り、物資と平和を届けるのが仕事だ」
トウヤは倒れている熊人族の負傷者たちに、商会特製の最高級回復ポーション(ミアの特製薬膳スープエキス入り)を惜しげもなく振りかけた。深い傷が瞬く間に塞がり、毒に苦しんでいた者たちの顔に急速に血色が戻っていく。
「助かった……。俺は、この『忘れられた森』にひっそりと住む熊人族の族長、ガルダだ。あんたたちがいなかったら、俺たちの部族は今日で全滅していた。この恩は、熊人族の誇りにかけて、命に代えても報いると誓おう」
ガルダが、二メートルを超える巨大な体を折り曲げ、深く頭を下げた。
「ガルダ族長。恩を売ったついでと言っては何だが、一つ商会からの提案がある」
トウヤはスマートな商人の笑みを浮かべ、上空に架かる白亜の巨大な魔導ハイウェイを指差した。
「この森はもはや安全ではないし、あなたたちの力を持て余すには惜しい場所だ。俺たちはこれから、この道を水都アクアリアまで繋ぎ、巨大な物流拠点を建設する。あなたたちのその強靭な腕力と、森の木々や石を自在に操る建築技術を、俺たちの商会の『専属土木建設部隊』として貸してくれないか? もちろん、衣食住と、絶対に安全で快適な居住区は商会が保証する」
ガルダは上空に架かる、常識では考えられない信じられない巨大建築物を見上げ、そしてトウヤの揺るぎない絶対的な自信に満ちた瞳を見て、即座に決断した。
「……こんなイカれた森の生活には、正直俺たちも限界を感じていたところだ。あんたたちのような規格外の連中の下で働くなら、俺たちの腕力も活きるだろうし、何より部族の子供たちに腹いっぱい飯を食わせてやれる。安全第一商会、喜んで協力させてもらうぜ、トウヤ会長!」
こうして、強靭な肉体と優れた木工技術を持つ熊人族の部族を新たな仲間に迎え入れたトウヤたち。
ミアがキッチンカーから大量に運び出した、温かい「大地の恵みゴロゴロポトフ」とふかふかのパンをガルダたちに振る舞い、飢えていた彼らの胃袋も完全に掌握した特務チームは、新たな強力な労働力を得て、さらなるインフラ拡張へ向けて力強く歩みを進める。
* * *
ガルダたち熊人族の圧倒的な腕力と協力により、森の中での巨大な障害物の排除や、橋脚の基礎固めが劇的にスムーズになり、空中魔導ハイウェイの建設速度はさらに跳ね上がった。
そして数日後。死の迷いの森を完全に突破した安全第一エクスプレスは、ついに西方大陸の北部に位置する巨大な淡水湖『レムリア湖』の畔へと到着した。
澄み切った青い湖の上に浮かぶようにして広がる、美しい白亜の建築物が立ち並ぶ巨大な都市――『北方水都アクアリア』である。
しかし、その美しい外観とは裏腹に、都市の周囲には水棲の魔獣を寄せ付けないための結界が弱々しく張られているだけで、港には朽ちかけた漁船が並び、街全体が酷く寂れ、人々の活気を失っていた。
「ここがアクアリアか。……迷いの森に阻まれ、外部との交易が完全に死んでいるという情報は本当だったようだな。街の魔力も枯渇寸前だ」
トウヤはハイウェイの終端、湖を見下ろす高台から街を見下ろしながら呟いた。
エクスプレスの巨大な汽笛が鳴り響くと、未知の巨大な鉄の塊と、空の彼方から一直線に伸びてきた巨大な橋に驚き、街の防衛隊や市民たちがパニックになりながら港の広場へ集まってきた。
「な、何者だ! まさか、あの死の迷いの森を抜けてきたというのか!?」
美しい水流の魔法を身に纏った、透き通るような青い髪の女性が、防衛隊の先頭に立って警戒の声を上げる。彼女こそが、水都アクアリアを統べる若きギルドマスターにして領主、シズクであった。彼女の顔には深い疲労が刻まれていた。
「俺たちは『安全第一商会』。南方大陸のエルドラド、そしてゼフィラス王国から、絶対に安全な『魔導ハイウェイ』を開通させ、莫大な物資を運んで来た。……飢えと物資不足、そして結界の魔力枯渇に苦しんでいるなら、俺たちと取引をしようじゃないか」
トウヤが列車のデッキから優雅に降り立ち、スマートな商人の笑みを浮かべてシズクに告げる。
その背後で、エクスプレスの巨大な貨物車両が開き、山のような新鮮な肉や野菜、そしてルミナとニアが用意した最新の魔力充填機が姿を現した瞬間、アクアリアの市民たちの間に、信じられないものを見るような歓喜のどよめきと、安堵の涙が巻き起こった。
外部との連絡を絶たれ、ゆっくりと死にゆく運命にあった北方水都アクアリア。
トウヤの規格外のインフラは、この美しき水の都市に再び命の血流を注ぎ込む。新たな巨大市場と、豊富な水属性魔法鉱石を手に入れるための、トウヤたちの次なるインフラ構築と街の完全なる再建が、今まさに始まろうとしていた。
【現在のステータス状況】
名前:トウヤ
年齢:18
職業:商人 / 冒険者(ランクS)
レベル:126 (迷いの森の上空を貫く空中ハイウェイの敷設、および大食人樹の完全殲滅によりレベルアップ!)
体力:1500/1500
魔力:92,000/100,000 (空中ハイウェイ敷設と極大火炎魔法により消費。現在急速回復中)
固有スキル:『リトライ(発動可能)』
魔法適性:全属性(火・水・風・土・光・闇・時空・無)
取得スキル:鑑定、算術、交渉術、全魔法創造、全武具習熟、気配遮断、錬金、空間把握、海洋環境制御、砂漠環境制御、要塞建築術、経済掌握術、毒物浄化制御、大規模地下掘削術、国家間交渉術、古代技術解析、広域インフラ防衛術、【新】超高架建築術
【仲間・後援者の状況】
ミア(獣人の少女):出発前の「大地の恵みゴロゴロポトフ」が大成功。熊人族たちにも惜しげもなく振る舞い、彼らの胃袋と心を一瞬で鷲掴みにした。
シルフィ(エルフの護衛):迷いの森の有毒花粉や幻覚の霧を、自身の浄化防風結界で完璧に無効化し、エクスプレスの安全航行を支えた。
ザック(人間の冒険者):大食人樹の硬い幹を両断したことで、さらなる自身のパワーアップを実感し、熊人族の戦士たちと筋トレに励んでいる。
リュウガ(竜人族の戦士):植物魔獣を水圧で粉砕し、「所詮は動く草だ」と余裕の表情で戦果を誇り、アクアリアの湖に興味津々。
ガレス(虎人族の戦士):熊人族の戦士たちと腕相撲で意気投合し、良き筋肉仲間としての固い絆を深めている。
マイロ(犬人族の地図職人):迷いの森の詳細なルートを記録し、アクアリア周辺の安全マップをリアルタイムで作成中。
ピピト(鳥人族の飛脚):空中ハイウェイができたことで迷いの森の上空も安全に飛べるようになり、ゼフィラス王国との超高速連絡網を確立。
リン(鼬人族の情報屋):アクアリアの市場調査を即座に開始し、蒼海晶の独占取引計画を早くも立案し、不敵な笑みを浮かべている。
ヴォルグ(狼人族の傭兵):熊人族の戦士たちの戦闘力を高く評価し、彼らを商会の新たな遊撃防衛部隊として鍛える計画を立てている。
ファラ(豹人族の女戦士):水都アクアリアの街中を隠密行動で探索し、治安状況や裏社会の情報を素早く収集している。
セレン(セイレーン族の海先案内人):巨大なレムリア湖を見て大喜び。早速湖に飛び込み、安全な航路の調査と水棲魔獣の排除を開始した。
ルミナ(ドワーフの機関技師):新型のインフラ敷設用車両『ヘビー・ブリッジ・ビルダー』が大成功を収め、ニアと共に祝杯を挙げている。
リラ(狐人族の商人):アクアリアでの独占的な商業権を確立するため、トウヤの背後でそろばんを弾きながら利益の計算に没頭している。
ニア(猫人族の魔導具技師):自動迎撃システムの火炎放射器が完璧に作動したことに満足し、さらに強力な防衛兵器の開発に意欲を燃やす。
クレア・フォン・ゼフィラス(第一王女):ゼフィラス王国とアクアリアを繋ぐ新たな物流の道が完成したことに深く感動し、トウヤへの感謝を新たにする。
ガルダ(熊人族の族長):【新規加入(土木建設部隊長)】トウヤに命と部族を救われ、安全第一商会に絶対の忠誠を誓う。規格外の怪力でインフラ整備を大いに助ける。
シズク(アクアリア領主):【新規後援者候補】孤立していた水都の若き領主。トウヤの圧倒的なインフラと物資に驚愕し、彼との取引に一縷の希望を見出す。
インフラ状況:王都ゼフィリアと北方水都アクアリアを繋ぐ「空中魔導ハイウェイ」完成。幻惑の樹海(迷いの森)の完全な安全突破ルートを確立。
資金:金貨2,800,000枚(アクアリアからの先行取引金と、迷いの森で回収した希少な植物素材の売却益により増加中)
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