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第26話 新たな仲間と、東の物流網計画

第26話 新たな仲間と、東の物流網計画

東方貿易都市オストのインフラが、トウヤの『拠点再構築』魔法によって劇的な再生を遂げた数日後。

かつてスラム街と呼ばれていた区画には、安全第一商会・東方支部の立派なオフィスビルが完成し、その一階には、清潔で広々とした『従業員用食堂』兼『冒険者ギルド出張所』が併設されていた。

「ニャハハ! トウヤ様のおかげで、この街もすっかり安全になったニャ! 東の大陸からの香辛料も、王都へ向けて飛ぶように売れてるニャ!」

食堂の丸テーブルで、特盛りの海鮮丼を掻き込みながら、猫人族の商人ニャルロが嬉しそうに尻尾を揺らしていた。

彼が東の大陸とのコネクションを活かして仕入れた物資は、トウヤが整備した『絶対安全な物流網』を通って、王国中に莫大な利益をもたらしている。

「それは良かった。だが、俺たちの目標はまだまだ先にある。……東の大陸への本格的な進出と、それを阻む帝国の『大防壁』の解体だ」

向かいの席でコーヒーを啜りながら、トウヤが切り出す。

「帝国が築いた大防壁……。東の国境を封鎖し、物流を完全に独占するための巨大な関所ですね。あそこを突破しなければ、東の大陸との直接貿易は不可能です」

隣の席で書類に目を通していたエルフの護衛シルフィが、表情を引き締めて言及する。

「はい、会長! その大防壁について、私が知る限りの情報をご報告いたします!」

商会の作業着をパリッと着こなした元帝国特務部隊長・ガリウスが、ピシッと敬礼しながら前に進み出た。

かつては帝国のエリートとして傲慢に振る舞っていた彼だが、今では「安全第一商会」の充実した福利厚生と、トウヤの圧倒的な力に完全に心酔しており、最も忠実な情報源として機能している。

「大防壁は、帝国の筆頭宮廷魔術師ゼノンが直々に設計した要塞です。高さ五十メートルの城壁には強力な魔力反射結界が張られ、その内部には数千の帝国兵と、私たちがエルフの森で使用しようとしていた『瘴気魔造兵(キメラ・ゴーレム)』の量産型が数十体配備されているはずです」

「キメラ・ゴーレムの量産型か。……環境に悪そうな粗大ゴミが、そんなにたくさんあるのか。処分費用を請求しないとな」

トウヤはため息をついた。

国家間の力関係や種族間の軋轢が物語の背景に存在し、主人公たちの選択がやがて世界の均衡に影響を与えていく。帝国の『大防壁』は、単なる軍事拠点ではなく、東の大陸との交易を独占し、周辺諸国を経済的に支配するための象徴でもあった。

「トウヤ様、真正面からぶつかるのは危険です。いくらトウヤ様の魔法が万能でも、数千の軍勢とキメラ・ゴーレムを相手にすれば、街に被害が及ぶかもしれません」

シルフィが心配そうに言う。

「わかってる。だからこそ『安全第一』だ。……戦闘ではなく、『インフラ工事』として大防壁を解体する。ゴランさんとフェルスに、王都から『あれ』の設計図と資材を急いで送るように指示を出しておいてくれ」

トウヤの不敵な笑みに、同席していた仲間たちは「また何か途方もないことを考えている」と察して苦笑した。

その時、食堂の入り口が騒がしくなった。

「おい、通せ! 俺はトウヤ会長に話があるんだ!」

「駄目です! アポなしでの面会はお断りしています!」

入り口で警備員と押し問答をしているのは、薄汚れた革鎧を着た、赤毛の若い人間の男だった。彼の背中には、身の丈ほどもある大剣が背負われている。

「通してやってくれ」

トウヤが声をかけると、警備員は一礼して道を空けた。

赤毛の男はトウヤのテーブルまでツカツカと歩み寄り、ドンッと両手をついた。

「アンタがトウヤだな! 俺は冒険者のザックだ! 頼む、俺をあんたの商会で雇ってくれ!」

「ザック、さん? なぜうちの商会に? 君のような腕の立ちそうな冒険者なら、王都のギルドでいくらでも稼げるだろう」

「……稼げねえよ。俺のパーティーは、東の国境沿いの森で帝国の魔獣に襲われて、全滅しちまったんだ。俺だけが命からがら逃げ延びた……」

ザックは悔しげに拳を握りしめた。

「仲間を助けられなかった。俺に力がなかったからだ。……だが、あんたの商会は違う。盗賊団を瞬殺し、街の城壁を一瞬で直しちまうほどの力を持ってる。あんたの元で働けば、もっと強くなれると思ったんだ! だから……!」

魔物・モンスターは資源であり脅威でもある存在として描かれるこの世界において、命を落とす冒険者は後を絶たない。トウヤは、必死に頭を下げるザックの姿に、かつてブラック企業で倒れた前世の自分、そして「仲間を失うことの痛み」を重ね合わせていた。

「……ザック。俺たちの商会は、戦闘狂(バトルジャンキー)を育てるための組織じゃない。俺たちが目指すのは、誰もが死なずに済む『絶対安全圏』を創り上げることだ」

トウヤは静かに語りかけた。

「強さを求めるのは構わない。だが、それは『誰かを傷つけるための力』ではなく、『仲間を守るための力』であるべきだ。本当の強さは仲間との絆から生まれる。……君は、そのために命を懸けられるか?」

ザックは顔を上げ、トウヤの真っ直ぐな瞳を見つめ返した。

「ああ。もう二度と、仲間を死なせたりしない。俺の剣は、あんたの商会と、仲間を守るために使うと誓う!」

「……採用だ。今日から君は、安全第一商会・東方支部の特務護衛隊員だ。まずはミアのところで美味しいご飯を食べて、しっかり体力をつけてくれ」

トウヤが微笑むと、ザックの顔に安堵と喜びの色が広がった。

「ニャハハ! 新しい仲間だニャ! オイラが商会のルールをたっぷり教えてやるニャ!」

「ザックさん、怪我はないですか? 後で医務室に寄ってくださいね!」

ニャルロとミアが、さっそくザックを歓迎して席に座らせる。

こうして、東の開拓に向けた新たな仲間が、また一人加わったのである。

「さて、人材も揃ってきたことだし、そろそろ『大防壁解体プロジェクト』の具体的な手順を詰めようか」

トウヤが再び地図に向き直ると、ガリウスが詳細な図面を広げた。

「会長。大防壁の魔力反射結界は、地下深くにある巨大な『魔力炉』によって維持されています。これを破壊すれば結界は消滅しますが、炉の周囲には厳重な警備が敷かれています」

「なるほど。なら、正面から破壊するのではなく、『吸収』してしまえばいい。俺たちのインフラ網の動力源としてね」

トウヤの提案に、ガリウスは目を丸くした。

「て、敵の要塞の動力を、自分たちのインフラに流用する……!? そ、そのようなことが可能なのですか!?」

「可能にするのが、万能の商人の仕事だ。……王都のゴランさんたちから『魔導パイプライン』の資材が届き次第、大防壁の地下水脈を伝って、こちらの魔力網に接続する工事を開始する」

トウヤの規格外のインフラ構想。

それは、敵の城壁を破壊するのではなく、そのエネルギーを根こそぎ奪い取り、自らの『安全第一』な経済圏へと変換してしまうという、悪魔的かつ合理的な作戦であった。

「シルフィ、ザック、ガリウス。君たちには、そのパイプライン接続工事の護衛を任せる。帝国兵に見つからずに、地下深くで作業を完了させなければならない」

「承知いたしました。トウヤ様の背中は、私が死守します」

シルフィが弓に手を添え、力強く頷く。

「任せてくれ! 俺の大剣で、魔獣だろうが帝国兵だろうが近づけさせねえ!」

ザックも気合十分に胸を叩く。

「はっ! 帝国の警備の抜け穴は、このガリウスが完全に把握しております! 会長の偉大なる計画、必ずや成功させてみせます!」

頼もしい仲間たちの言葉に、トウヤは満足げに頷いた。

死んでもやり直せる『リトライ』の力を使うまでもなく、彼の周りにはすでに、最高のチームが形成されていた。

「本当の強さは仲間との絆から生まれる」。そのテーマの通り、彼らは一人一人が強大な力と覚悟を持ち、トウヤの掲げる『安全第一』の旗のもとに集っている。

いよいよ始まる、東の大防壁攻略作戦。

それは、ルミナス王国とガランド帝国の勢力図を根底から覆す、歴史的なインフラ工事の幕開けであった。

トウヤの指示により、オストの街は前代未聞の「大防壁解体作戦」に向けた準備で活気に満ちていた。

王都から到着したゴランとフェルスは、息つく暇もなく地下水脈への魔導パイプライン敷設の設計図を広げ、作業員たちに指示を飛ばしている。

「ゲハハハ! トウヤの旦那の考えることは相変わらず規格外だな! 敵の要塞の魔力炉に直結して、エネルギーを全部吸い上げちまおうなんて、悪魔の所業だぜ!」

ゴランが豪快に笑いながら、ミスリル合金製のパイプを魔導溶接機で繋ぎ合わせていく。

「でも、理にかなっています。大防壁の結界は、外部からの物理攻撃や魔法攻撃を反射する性質を持っていますが、地下深くの地脈から直接エネルギーを吸い上げるシステムには、防御の抜け穴があるはずです。……そこを私たちのパイプラインでバイパス(迂回)させてしまえば、結界は自重で崩壊します」

フェルスが狐の耳をピクピクと動かしながら、精密な計算式をホログラムで展開する。

「その通り。俺たちが造るのは『壊すための武器』じゃない。『繋ぐためのインフラ』だ。敵のエネルギーを安全な物流網の動力に変換する。これぞまさに、究極のエコだろ?」

トウヤは作業着姿で、完成しつつある巨大な魔導ポンプのバルブを調整しながら満足げに頷いた。

魔法やスキルを万遍なく使いこなせる万能型の能力を持つ彼は、その力を破壊ではなく、このような創造的かつ圧倒的なインフラ構築に注ぎ込んでいる。

「トウヤ様! 地下ルートの安全確認が終わりました! 帝国の魔獣の巣窟がいくつかありましたが、ザックさんとシルフィさんが全て綺麗に掃除してくれました!」

泥だらけになったミアが、地下道から顔を出して元気に報告する。

「よし、ご苦労様。これでルートは確保できた。……ガリウス、帝国の警備のシフトはどうなっている?」

「はっ! ゼノンの奴が設定した警備シフトによれば、明日の深夜、魔力炉の冷却のために結界の出力が一時的に低下する時間帯があります。パイプラインを接続するなら、その数分間が最大のチャンスです!」

ガリウスが帝国時代の手帳を開きながら、的確な情報を提供する。

「完璧だ。明日の深夜、俺たちは大防壁の地下に潜入し、魔力炉にパイプラインを接続する。……全員、今日はしっかり休んで英気を養ってくれ。明日は、東の国境の歴史が変わる日だ」

トウヤの言葉に、仲間たちは力強く頷いた。

「本当の強さは仲間との絆から生まれる」。それぞれ異なる種族、異なる過去を持つ彼らが、今、「安全第一」という一つの理念のもとに強固に結びつき、世界を揺るがす巨大な作戦に挑もうとしている。

死んでもやり直せる『リトライ』の力を持つトウヤだが、彼はこの最高の仲間たちと共に、一度の失敗も許されない「一発勝負のインフラ工事」を成功させるつもりであった。

【現在のステータス状況】

名前:トウヤ

年齢:18

職業:商人 / 冒険者(ランクS)

レベル:56 (東方支部設立、新規雇用により上昇)

体力:360/360

魔力:95,000/100,000 (オストの防衛結界維持のため微量消費中・自動回復)

固有スキル:『リトライ(発動可能)』

魔法適性:全属性(火・水・風・土・光・闇・時空・無)

取得スキル:鑑定、算術、交渉術、全魔法創造、全武具習熟、気配遮断、錬金、空間把握

【仲間・後援者の状況】

・ミア(獣人の少女):東方支部にて食堂兼救護所を運営。従業員や冒険者たちの心のオアシスとなる。

・シルフィ(エルフの護衛):大防壁解体作戦に向け、ザックとの連携訓練を開始。

・ガリウス(人間の元帝国兵):大防壁の内部構造と警備ルートを詳細に記した作戦図を作成。

・ニャルロ(猫人族の商人):東の大陸の商人たちに「大防壁がまもなく開通する」という情報を流し、物流の準備を進める。

・ザック(人間の冒険者):【新規加入(特務護衛隊員)】仲間の死を乗り越え、商会と仲間を守るために大剣を振るう熱血漢。

・レオン、ゴラン、フェルス:王都から「魔導パイプライン」の資材を積んだ大規模輸送隊をオストへ向けて出発させる。

・インフラ状況:東方貿易都市オストの「拠点再構築」完了。「絶対反射結界」完全稼働。大防壁攻略のための「魔導パイプライン」計画始動。

・資金:金貨38,000枚

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