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異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。  作者: 暁月ライト


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現れる仲間

 メイアの血の線に貫かれ、血の支配に落ちた者達は、周囲の仲間に向かって襲い掛かり始めた。最早誰が敵で誰が味方であるか分からなくなった戦場は混乱と恐慌で満ちていた。


「クソがッ、落ちやがれッ!!」


「ふふ、当たる訳ないでしょ?」


 蝙蝠の羽をはためかせて空中に浮遊するメイアに飛び掛かった獅子の男だが、メイアの姿は霧となって消えて男を擦り抜けた。


「落ちなさい」


「ぐッ!?」


 メイアは背後に現れるとその巨大な血の爪を振り下ろし、獅子の男を地面まで思い切り叩き落した。


「さぁ、これで終わりじゃないでしょう?」


「当たりめぇだろ、がァッ!!」


 叩き落される獅子の男を追いかけるように空中から一直線に降りていくメイア。その手に握られた燃える骨の刀が獅子の男を貫くより先に、男は思い切り起き上がり、その爪で刀を逸らした。


「あら、勘が良いのね」


「その刀を受けてやる気にはなれねぇ、なァ」


 獅子の男はメイアを睨み、その爪を構えなおした。それを見てメイアも燃える骨の刀を男に向ける。


「燃えなさい」


 骨の刀に宿る炎が、螺旋を描きながら男に向かって行く。男は横に跳んでそれを回避するが、炎の螺旋は避けた先まで男を追いかける。


「チッ、追尾かよ……」


 男は振り返りながら両手の爪を振るい、電光を撒き散らしながら迫った炎の螺旋を斬り裂き、霧散させた。


「隙有り、ね」


 しかし、その背後に現れたメイアが骨の刀を横一文字に振るう。男は咄嗟に前に逃れようとするが、正面からは無形の闇が退路を潰すように迫っていた。



「――――そうは、させん」



 獅子の男とメイアの間に、白い毛並みの虎が立っていた。流れる水を纏った爪が、メイアの骨の刀を獅子の男を斬り裂く軌道から逸らす。


「あら。まだ、隠れてた子が居たのね……」


 メイアはその白い虎を……人の形をした虎を観察するように睨んだ。


「レギ、気を付けろッ! こいつは化け物だッ!」


「あぁ、分かっている。俺も、ずっと見ていた」


 お互いの間に信頼の見える二人は、恐らく相棒のような関係なのだろうとメイアは予想を立てた。


「ッ」


 メイアは背後から伝わる熱気にその身を霧に変え、左右に分かれることでそれを避けた。


「おっと、ちゃんと避けてくるかぁ……二人に集中してるタイミングかと思ったんですけどねぇ」


 青い炎の斬撃。それと共に現れたのは、アルコルだった。その炎を避けた霧は再び集まり、メイアの姿を形作る。


「とは言え、形勢は逆転だよねぇ? 幾ら君が化け物とは言え、僕達三人が相手となれば分が悪いんじゃないですかぁ?」


「ふふ、どうかしらね? ただ、一つだけ言っておくなら……」


 メイアが不敵に笑みを浮かべる。アルコルが眉を顰めると、その影から無数の腕が伸びた。


「私も一人じゃないの」


「なッ!?」


 影の腕がアルコルの背を掴み、後ろに倒すように引っ張るとアルコルは体勢を崩し、影の中に引き摺り込まれかける。しかし、アルコルは自身の体を青い炎で包むと、姿をその場から消した。


「ッ、危な――――」


 アルコルが離れた場所に姿を現した瞬間、銀の奔流がアルコルを呑み込んだ。


「その位置に現れることは、予知していました」


 奔流が放たれた元の方向を皆が確かめるが、そこには何も居ない。彼女の発した声さえも聞こえていない。


「カァ、こんなことになってんならさっさと呼べば良いのによ」


「別に、私一人でもどうにかなりそうだったもの」


「良いから、さっさと片付けますよ」


 メイアの横に並んだのは、カラスと銀髪の女。しかし、周囲の者にはメイアしか見えていない。


「アルコルが、一瞬でやられやがった……?」


「……馬鹿な」


 獅子に纏わりつく電光が動揺するように明滅し、虎は信じられない物を見るようにその目を見開いた。


「おいおい、呆けてる暇は無いぞ?」


 カラスが言うと、二人の足元の影が蠢き、そこから無数の影の腕が伸びた。


「んだよ、これッ!?」


「ッ、影が……!?」


 獅子は咄嗟に空中へと跳んで逃れ、虎は流水を纏った爪で腕を斬り裂いた。


「『銀粒砲(アルゲントゥム)』」


 魔力を帯びた無数の金属粒子の束が放たれると、それは空中に逃れた獅子の下へ殺到した。銀色の奔流に呑み込まれた獅子は、防御態勢を取るも指先一つ残さずに消え去った。


「ふふ、これで一対一ね?」


「ッ!!」


 そして、霧となったメイアは虎の下まで移動すると、燃える骨の刀で斬りかかった。虎はそれを避けようとするが、足下に発生した血の沼に足を取られて避け切れず、片腕を斬り落とされた。


「くッ」


「あら、凌ぎ切れないの?」


 続く巨大な血の爪を防ごうと流水を纏った爪を掲げるが、圧倒的な質量に勝つことは出来ずに虎は血の爪に押し潰された。


「もう、殆どおしまいね」


 メイアは敵の残りの戦力を眺め、満足気にそう呟いた。

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