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異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。  作者: 暁月ライト


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血の刀、夜の衣。

 血の煙の中から現れた真紅の目の少女に、アルコルは迷うことなくその手を突き出していた。青い光を帯びた指先が、少女の……メイアの腹部に突き刺さる。


「ふふ」


「ッ!?」


 腹部から血が噴き出しているにも関わらず、笑みを浮かべるメイア。その姿にアルコルは息を呑み、咄嗟に指を引き戻そうとする。


「残念ね。もう遅いわ」


「ぐはッ!?」


 メイアが傷を負った場所と同じ……アルコルの腹部に穴が開き、そこから大量の血が噴き出した。そこに、メイアの傷口から流れ出す血が刃となり、アルコルへと飛来する。


「ッ!」


「あら、すばしっこいのね」


 アルコルの体が青い炎に包まれて消えると、離れた場所に現れる。焦燥の表情を浮かべたアルコルは、指先からも青い炎を迸らせ、メイアへと放つ。


「足りないわ」


 メイアの体から、血のように赤く燃える炎が溢れ出した。その炎はメイアを護る盾となり、逆に青い炎を燃やし尽くしてしまった。


「ッ、あはは……そうかよ! そんなに殺して欲しいって言うんならさぁ! お望み通りッ、殺してやりますよッ!!」


 アルコルの体から青い炎が滲み出し、その全身に絡み付いて行く。そして、その手に青い炎の剣が握られた。


「知ってますか? 僕の炎は魂を燃やすんですよ……君は吸血鬼みたいだけどさぁ、幾らタフでも魂ごと燃えたら関係無いよねぇ!?」


「そうね」


 アルコルの姿が青い炎に包まれて消え、次の瞬間にはメイアの眼前に現れる。


「『紅蓮武装(スカーレットウェポン)灼骨霊魂刀(スカルノビリス)』」


 燃え盛る骨の刀を自身の腕から抜き放ったメイアは、振り下ろされた青い炎の剣を弾き上げた。


「ッ!?」


 直後、メイアとアルコルの全身から血が噴き出し、アルコルはその場に膝を突いた。同じダメージを負った筈のメイアだが、既にその傷は完治している。


「貴方はただの人間じゃないみたいだけど、臓器が全て爆発するのは中々堪えるみたいね?」


「ッ、ッ……!」


 息も絶え絶えに青い炎の剣を握り締めるアルコルは、何とか顔をメイアに向け、睨み付けた。


「ふふ、そう睨まないで。公平に、私の負った傷を貴方も負っただけじゃない」


「ぐ、ッ……ハ、ァ……!」


 少しずつ回復して来たのか、呼吸を取り戻したアルコルは、その手に持った剣を思い切り振り上げ、メイアの体を斬り裂こうとした。


「無駄よ。回復し切っても無い体で足掻いたところで、届く訳が無いわ」


「がッ!?」


 メイアはその刃を軽く回避すると、そのまま剣を持つアルコルの腕を斬り落とした。


「安心しなさい。まだ、貴方は殺しはしないわ」


「ッ、ははッ……! 僕が、拷問なんかで情報を吐くと思ってるんですかぁ!? そもそも、僕を捕まえられるとでも!?」


 アルコルの体が青い炎に包まれ、その場から消える。その気配を追い、地下に広がる空間の一点に視線を向けるメイア。


「逃がす訳……」


 血の煙を足元から立ち昇らせ、そこに向かおうとするメイアだが、アルコルから迸った衝撃波に足を止める。


「そういうことね」


 魔力の籠った衝撃波は地下空間を駆け抜け、次の瞬間には地下に並ぶ殆ど全てのカプセルを割っていた。


「ハッ、ハハッ! 油断したなァ!? 吸血鬼ィッ!! これで、形勢逆転ですよォ!?」


「ふふ……寧ろ、安心したくらいよ」


 割れたカプセルの中から、次々に改造生物が現れる。概ね人型をしたそれらは寝惚けているように見えたが、少しずつ正常な意識を取り戻し始めているようだ。


「貴方だけじゃ、退屈過ぎたもの」


「ッ!! 君ねぇ……ッ! まぁ、良いさ……ほら、君達ッ! さっさと目を覚ましてあの吸血鬼を……あぁ、皆には見えないんでしたねぇ」


 激情を呑み込み、冷静になったアルコルは指を一つ鳴らして見せた。すると、メイアの姿がその場に居る者達にも可視化される。しかし、その顔には血で作られた真紅の仮面が張り付いていた。


「あら、魔術も使えるのね」


「当たり前だろ? そういう君は碌に魔術も使えないみたいだけどねぇ?」


 アルコルが言うと、既に改造生物達に囲まれ始めているメイアは薄い笑みを浮かべた。


「『夜の衣(ウティノクティス)』」


 メイアの体から闇が溢れ、それは体にぴったりと纏わりついて染み込んでいく。滲み出す闇の衣はメイアの身体能力を大きく上昇させ、吸血鬼にとって万全の状態である夜の闇の中と同じだけの能力を発揮させる。更に、今はその闇自体もルキフグスの権能によって強化されている。


「魔術なら、使えるわ。どうせ姿が見られているなら、もう遠慮する理由も無くなったわね?」


 圧倒的なオーラを放つメイア。その真紅の目がアルコルを捉えると、アルコルは息を呑んで一歩後退った。


「ッ、行け! 行くんですよッ、早くッ!」


 アルコルの言葉に、メイアを囲む改造生物達が動き出す。ある者は刃と化したその腕を振るい、ある者は全身を鋼鉄に変えて襲い掛かる。魔物と人が混ざり合ったような生物達は、その力をメイアにぶつけようとしていた。



「――――さぁ、死になさい」



 メイアの首に、一筋の赤い線が走る。次の瞬間、メイアに襲い掛かった改造生物達の首が同時に跳ね飛んだ。

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