表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界から帰ってきた勇者は既に擦り切れている。  作者: 暁月ライト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

541/552

悪魔の門よ、開け。

 カラスが爪を挟んでいた扉をそのまま開き、二人と一匹は一斉に所長室の中に押し入った。


「さて、サクッと行きますか」


 ステラがその指先を部屋の奥の椅子に座る所長に向けた。開いたままの扉に違和感も抱けない所長は、その目を見開き、ステラの権能によって支配された。


「……私は、何をすれば」


『地下の転移陣までの案内を。その後、それを起動して下さい」


「分かりました」


 所長は席から立ち上がると、迷うことなく部屋を出て、地下へと向かって行く。その間にステラは若い研究員の男を部屋から出すと、権能による支配を解除した。


「さて、付いて行きましょう」


「ホント、拍子抜けするくらい簡単ね」


「ま、ここは表向きの施設だからな。こっちのセキュリティを強くし過ぎれば、逆に怪しまれるからだろうよ。ただの研究所で結界なんて張ってたら、地下の隅々まで調査が入ってもおかしくねぇ」


 再び肩の上に乗ってきたカラスの言葉にメイアは納得したように頷き、所長の後を追うステラに小走りで追いついて並んだ。


「あ、おはようございます、所長」


「あぁ、おはよう」


 所長はいつも通りの自然な様子で軽く手を上げ、研究員の男とすれ違い、エレベーターに乗った。支配の影響下にあっても、行動に大きな違和感が出ることは無い。


 エレベーターは真っ直ぐ降りていくと、地下一階で停止した。扉が開き、所長はエレベーターから出る。それに続いて、ステラ達もエレベーターから出た。


「所長。どうかなさいましたか?」


「あぁ、研究についての報告に向かうところだ。幾つか、伺いたいこともあったものでね」


 地下を進んで行くと、奥にある扉の前で作業をしていた男が所長に尋ねた。が、所長の答えを聞くと特に反応することも無く頷き、扉の前から退いた。


「あぁ、そうだ。念の為、今から昼過ぎくらいまではここを通さないようにしておいてくれ。奥の実験室で有害物質の発生する実験を行っているという体で良い」


「分かりました。暫くかかるということですね」


 ステラの指示を受けた所長が男に指示を出すと、男はそれを疑うことなく了承した。彼も、所長と同じく研究会の裏を知る人間であるということだ。


「では、頼んだよ」


「えぇ、勿論」


 所長とステラ達は鍵のかかった扉を開き、奥に進んだ。そこにあったのは幾つかの器具が設置された、少し広めの実験室だった。危険性の高い実験などを行う場所という名目で存在している部屋だが、所長は扉に鍵をかけると、その部屋の隅に迷いなく向かって行った。


「『悪魔の門よ、開けパトゥァ・シャーハサターン』」


 部屋の隅、その壁に長方形の線が走り、扉のようにその壁が開いた。


「こちらですが」


 開いた隠し扉の向こうにあったのは、直径三メートル程はある転移の魔法陣だった。地面に描かれたそれは、薄っすらと紫色の魔力の輝きを放っている。


「起動すればよろしいんですね?」


 尋ねる所長に、ステラはメイアとカラスの方を見る。


「準備は良いですか?」


「あぁ、良いぞ」


「私も、いつでも良いわ」


 その答えにステラは頷き、所長の方に視線を戻した。


『起動して構いません。貴方も共に転移してください。その後、施設のトップと話が出来るならそのようにお願いします』


「分かりました」


 所長も魔法陣の上に乗り、全員が魔法陣の上に居る状態となった。


「では、行きます」


 所長が声をかけると、転移の魔法陣に魔力が流し込まれ、その紫の輝きが強まった。




 ♢




 転移の魔法陣から現れた所長が部屋を出ると、そこに立っていた男が眉を顰めた。


「興梼研究所の所長か……この時間に来るって話は聞いてないが、どうしたんだ?」


「委任されている研究内容について緊急で話したいことがあってね」


「そうか」


 男はそれだけ言うと、視線を所長から外した。所長は歩き出し、その後ろをステラ達も付いて行った。


「カァ、今んとこバレてる気配はねぇな」


「でも、ここからどうするの? 元は、潜入さえ出来ればそこから気付かれないように一人ずつ潰していくって話だったけれど」


「想定よりも隠密に侵入することが出来たので、折角なら敵の頭を捕まえてから動きたいですね。本部への報告や、こちらへの対応も遅れるでしょうから。それに、その方が()()も実行しやすくなります」


 ステラの考えにメイアとカラスも頷き、そこから施設内を暫く歩いた後に一つの扉に辿り着いた。所長がノックして声をかけると、中から一人の男が現れた。黒い革の服は明らかに研究者のものではなく、戦闘用に作られたものであった。


「連絡も無しに尋ねて来るとは、どういった用件だ?」


「委任されている研究内容について、緊急で話があってね」


 話し出した二人。閉まっていく扉の奥には、高級そうな椅子に腰かける老年の男の姿があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ