集まる戦力
一言では理解を得られなかった俺の考えだが、何も適当に言っている訳では無い。
「一応、知り合いに手を出されてる訳だからな。少し、報復してやりたいという気持ちも無くはない」
「でしたら、ぶっ潰せばよろしいのでは? 主様の手を煩わせずとも、私達が終わらせますよ」
「まぁ、時間を掛ければそれも不可能じゃないかも知れないが……いや、そもそも俺達で研究会を潰し切るつもりはない。既に色々と組織が動いている以上、混乱させる可能性も高いからな」
別に、完膚なきまでに潰してやろうという程の怒りがある訳じゃないからな。リスクを冒してまで本気で潰しに行く必要性は感じない。
「それで、嫌がらせ程度の攻撃ですか」
「そうだ」
ステラは微妙に納得していないような態度で唸った。
「……全力の攻勢では無いとは言え、態々リスクを冒す程のことなんですか? マスターにとって、その少女は」
「いや、そんなに関係が深い訳でも無いが……懐いてる親戚の子供、みたいな感じだな。後、陰陽道の実戦をそこそこの相手で試しておきたいってのもある」
「別に何でも良いじゃない。主様がそうしたいと思ったなら、それを支えるのが私たちの仕事でしょう? 理由なんて関係無いわ」
「カァ、俺も何でも良いぜ。いつも通り美味い飯が食えるならな」
ふむ、とステラは頷いた。
「分かりました。それで、具体的にどうするんですか? 嫌がらせ程度の攻撃、ということですが」
「適当に研究施設の一つでも潰すつもりでいるが」
「私達はどうします?」
「好きにしたら良い。手伝いたければ手伝ってくれ」
俺が言うと、真っ先にメイアが手を上げた。
「勿論、私は手伝わせて頂きますわ」
「そうですね……私も、彼らの研究物については興味があるので参加します」
「おいおい、この流れだと俺だけ参加しないって訳にもいかねぇな」
「別に、行きたくないなら良いぞ? 本気で潰しに行くって話でも無いしな」
俺が言うと、カラスは首を振り、そのつぶらな瞳を俺に向けた。
「いいや、行かせて貰うぜ。最近はこういうのも無かったからな。暇潰しって奴だ」
「まぁ、別に良いが」
結局、全員参加ってことだな。
「それと、ステラ。今のところ、場所が判明してる研究施設の数はどのくらいだ?」
「十三ですね。研究会が関与している小規模な施設まで含むならば、五十八です」
そこそこ見つかってるな。
「関与してるだけの施設だと、内部の奴に白も居るだろうからな。そこは無しだ。取り敢えず、適当に一つ潰すとして……まぁ、足りなかったらもう一つくらい行くか」
使い魔も連れて行くとなると、陰陽道を試すにも不十分な可能性があるからな。そうなったら、もう一つくらい潰すとしよう。
「そういう訳で、一先ずは決まりだな。細かいことは飯を食ってからにしよう」
「だな!」
今日は久し振りに鍋でも食うか。
♦
日も暮れた頃、本家から帰ってきた西園寺は八割方修復された大広間で犀川や島羽達と大きなテーブルを囲んでいた。その場には、西園寺が連れて来た者も何人か立っている。
「大体、話は分かりました」
西園寺は島羽からの話を聞き終え、一呼吸置くと頷いた。
「本来ならば貴方から受け取った情報を精査し、その全ての真偽を確かめてから返事をしたいところですが……直接襲撃を受けている以上、あまり時間もありませんので」
グラスに入った水を飲み、西園寺は口を開く。
「是非、協力致しましょう。研究会の内部について知っている者が味方に居る意味は非常に大きいです。それに、一級のハンターという戦力も居るとなれば断る理由は最早ありません」
「それは、私のことを信じてくれるということでよろしいかな?」
「一先ずは、そうします。この屋敷の者と犀川ちゃんを救って頂いたことも事実ですから」
「重畳。では、よろしく頼むよ」
西園寺は頷き、そして後ろに立っていた安治に囁いて指示を出した。
「良ければ、今日のところはこちらにお泊りになりませんか? このまま帰るとなれば、貴方方の身に危険が生じる可能性もあるかと思います」
「ふむ、そうだな。今日は世話にならせて頂こう。お互いの為にもね」
島羽が笑みを浮かべて言うと、西園寺は微笑みを返した。
「さて、そうと決まれば堅苦しい場は一旦解散としましょうか。軽く食事を用意させていますので、皆様で親睦を深めながらこちらでお待ちいただければと思います」
西園寺はそう言うと立ち上がり、大広間から去って行った。
「……えぇと、自己紹介でもした方が良いですかね? 俺ら、後から来たっぽいんで」
そう提案したのは、壁際に立っていた黄緑色の髪の若い男だった。腰には二本の剣が括り付けられている。
「勿論、構わないとも。是非話してくれたまえ」
「じゃあ、失礼して……俺は雷桐 魅陽です。準一級のハンターで対人はからっきしなんですけど、一応は西園寺財閥の専属的な立場なんで、今回は参加させて貰います。どうぞ、よろしく」
そう言うと、魅陽は壁際まで下がり、再び自分の背を壁に預けた。それと入れ替わるように、赤髪の女が前に出る。
「私は岸間 晴です。雷桐と同じく専属の魔術士です。火の系統であれば、ある程度の魔術は扱えます」
「ふむ。君達が西園寺家の出せる最大戦力ということかな?」
「私も詳しくは知りませんが、私達が今回付いて来たのは緊急の護衛としてなので、単純に最大戦力という訳ではないかと」
晴が答えると島羽は頷き、魅陽の方に視線を向けた。
「……何ですか?」
「いや、君以上の戦力が来るのならば期待出来ると思っただけだよ」
「俺以上っすか? そんなの一杯居ますよ。俺なんて、一人で黙々魔物狩ってただけなんで。それこそ、そこの雪也さんみたいな一級には全く敵いませんし……まぁ、うちの財力なら普通に一級でも余裕で呼べると思いますよ」
「そうか。それなら、期待させて貰うとしようか」
明け透けに答えた魅陽を晴が睨むが、魅陽は目を閉じて再び壁に背を預けるだけだった。




