荒れた館の中で
館の中の負傷者の治療が終わった頃、無理やり整えられた荒れた部屋で同じテーブルを囲んでいたのは西北島羽と、その仲間である雪也達。そして、地下にある避難用の部屋から出てきた犀川翠果だった。
「こうして話が出来て嬉しいよ、犀川翠果殿。私の名は……」
「西北島羽さんですよね。神智学と科学の関係性についての論文は読ませて頂きましたよ」
犀川が言うと、島羽は面食らったような顔をした。
「ほう、私について知っていたか」
「勿論ですよ。知識の量こそが、研究者の武器ですからね」
「私の名を聞いても尚、屋敷の中に通してくれなかったのは警戒からという認識で合っているかな?」
「そうですね。こちらから声をかける相手以外は信用できないので、屋敷の中に招くということはしたくなかったですね。構造を知られるだけでも問題ですし」
島羽は頷き、そして話し始めた。
「私のことを知っているならば、多少は話が早いか」
島羽の口から語られる言葉は、犀川達にとっても予想外のものだった。
「私は元々研究会に所属していた。と言っても、自らの意思で奴らに従っていた訳ではないが」
「所属していた……ですか?」
「その通りだ。勿論、ここに話をしに来たということは……今の私は研究会と敵対している」
「まぁ、それは助けてくれた時点で間違いありませんね」
そして、と島羽は隣に座っている雪也達に視線を向けた。
「彼は氷野雪也。知っているとは思うが、一級のハンターだ」
「氷野雪也です。どうも」
「勿論、存じてますよ」
島羽が紹介すると、雪也は軽く手を上げて挨拶した。
「そして、彼女たちは……世間で噂されている、魔法少女だ」
「一応、聞いたことはありますね」
紹介された二人は、犀川に話すより先に島羽の方を見た。
「私達の名前、言っても良いのかしらぁ?」
「ここまで話せば変わらないだろうからね。言っても構わないとも」
金枝の問いに島羽が答えると、二人は頷いて犀川に視線を戻した。
「西北金枝よ。一応、金の魔法少女って呼ばれてるわぁ」
「西北銀子よ! 私は銀の魔法少女の方ねっ!」
「ご家族なんですね」
犀川は内心の懐疑心を表情に出すことなく、そう呟いた。
「そうよ! 私達は家族よっ!」
「気付いているとは思うけれど、血の繋がった家族では無いわぁ」
「彼女たちは、私が施設から連れ出した実験対象だ」
「……なるほど」
敢えて被験者という安易な言葉を使わなかった島羽に、犀川は彼女達がその施設という場所でどんな扱いを受けていたのかを察した。
「そして、私達が君達に提案したいのは、たった一つの簡単な話だ」
指を一本立てて、島羽は本題に入った。
「魔科学研究会を壊滅させる為に、私達にも協力させて欲しい」
「その言い分だと、既に私達が研究会を攻撃する予定であることは知っているみたいですね?」
「勿論。そうでなければ、ここを訪ねることはないだろう」
「ふむ、分かりました」
犀川は一息吐くと、後ろに立っていた安治をちょいちょいと小手招きして呼び寄せた。すると、耳元でこそこそと何かを尋ねた。
「……どうやら、西園寺さんが帰って来るのはまだ遅くなるようなので、それまでここに居るというのなら色々と話を聞かせて貰っても構いませんかね?」
「勿論、構わないとも」
「ありがとうございます。因みに、私としては協力に前向きですよ。西園寺さんがどういう考えになるかは分からないですけど」
「そう言って貰えるとありがたい。西園寺殿が来た時にもご助力頂けると助かるが」
島羽が笑いながら言うが、犀川は微笑むだけで答えはしなかった。




