12 聖女さん、最適解
「敵の正体はあのクズ……私の父親だ」
しーちゃんの問いにそう答えると、しーちゃんはやっぱりかという風に複雑な表情を浮かべた後、落ち着いた様子で答える。
「そう。その通りだったよ。ユアン・ベルナールが全ての元凶」
そう言った後、どこか決心を固めるように小さく息を吐いてからしーちゃんは続ける。
「……一応これを隠したまま話進めるのはフェアじゃないから言っておくけど、それが分かった時点で、あっちゃんの親子関係の話は皆にしてるんだ」
「話したんだ……」
「必要だったからね」
しーちゃんは申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。
「あの地下を調べた段階で、敵がユアンだって事は分かった。勿論それを隠したまま話進める事だって出来たけど、事がうまく運べばどの道皆にバレてたと思う。それでウチ的にはあっちゃんが何も知らないまま事を終わらせたかったからさ……その為に皆を同じ考えを持つ協力者として抱き込む必要が有った。だから話した」
「……」
「で、此処までは言い訳。ウチは人の秘密を勝手にペラペラ話すろくでなしな行動を取ってる訳で。怒んないから、気が済むまで殴ってもらっても構わないよ。縁も切りたかったら切って良い。そういう最低な事をウチはしているから」
「……」
さっき部屋の中で聞いた説明。
そこで語られなかった情報が少しずつ補完されていく。
された上で、流石にこれは言いたい。
「しないよ……そんな事。しーちゃんがやったのは。しーちゃんがやってくれたのは、全部私への配慮だから。これに怒るのは絶対違うって……許す許さないとかそういう話じゃないじゃん」
寧ろ。
寧ろだ。
「そもそもの話、私は何されたって文句言える立場じゃないでしょ」
「……」
なんとなく、察しているように。
私が何を言おうとしているのかを察しているような表情をしーちゃんは浮かべる。
そして察した通りの事を私は口にするのだと思う。
「私は、あれだけの事をやった大罪人の娘だから。まあ、殆ど加害者みたいなもんでしょ……何されたって文句は言えない」
「それは違う!」
しーちゃんが声を荒げた。
「そんなのは暴論だよ! あーもう! あっちゃんならそんな事言うんじゃないかって思ってたけどやっぱり言った! 暴論だって本当に! 変な責任感も抱えちゃってるって! だから隠し通したかったんだ!」
そう言ってしーちゃんは私の手を掴んだ。
力強く。
此処から逃がしてたまるかと言わんばかりに力強く。
「隠せなかったから、この場を設けた」
しーちゃんは鋭い目付きで私の目を見て言う。
「今あっちゃんは、一人で全部解決しようとしてる。しかもあんまり良くないやり方で……そんな事させないから」
「……良くない?」
思わず聞き返した。
「良くないでしょ。だってあっちゃん多分、父親の事ぶっ殺そうとして──」
「最適解だよ、きっとそれが」
そうだ。
それが最適解だ。
「あのクズのやり方は容認できない。だから私達は代案を探さないといけないんだ。でもその代案の裏でこれ以上の犠牲者を出さない為に……やっぱりあのクズは止めないといけない……息の根を、止めないと。もう何もさせない⋯⋯させていい奴じゃない」
⋯⋯でも、分かってる。
それが最適解だと思われていないから、しーちゃんは此処に居るんだ。
「それは違うよ」
しーちゃんははっきりと、迷いなく言葉を紡ぐ。
「それは⋯⋯絶対違う」
私と対峙するように。




