11 聖女さん、抱え込む
「確かにこれ見ても、マジで何にも分かんないね。完全に専門外」
なんとか。
なんとか普段通りを装う。
表に出しちゃ駄目だ。
……やるべき事は見えたけど、やり方は考える必要が有って。
だけど考えなくても分かる事として、他の皆を巻き込むようなやり方はやっちゃ駄目だ。
自分の問題に他人を巻き込んじゃいけないなんて、正論風の事を言うつもりはないけれど、これだけは駄目だ。
……そういう事に手を染めた事が無い人達は特に。
関わらせる訳にはいかない。
だから。
今この瞬間は。
いつもの自分を見せなきゃ駄目だ。
「でもこれの写し持ってドルドットに戻るのはアリかも。あの馬鹿共の手ぇ借りるのは癪だけど、それこそ未来予知ぶち壊した爆心地みたいなもんだし、何かしら分かる事があるか……も?」
……マズいね。
明らかに……しーちゃんだけが、私が勘付いた事に勘付いている。
私がそれに気付けるならば、向こうも同じだ。
それだけちゃんと、私の事を見ていてくれていた。
そしてしーちゃんはゆっくりと立ち上がって、私の方に歩み寄って来て……私の肩に手を置いて言う。
「ごめんあっちゃん。ちょっとこっち来て」
「え、でも今から色々……」
「いいから……皆も、ちょっとあっちゃん借りてくけど良いよね?」
「……ああ」
しーちゃんの言葉に代表してマルコさんがそう言って、それに続くように皆が頷く。
皆、といっても、ぱっと見シルヴィとシズクは困惑気味だったけど。
……きっと、あのクズと対峙した皆は、今のしーちゃんとのやり取りを見て色々と察したみたいだった。
「えっと、なんかよく分からないけど、ちょっと席外すよ」
言いながら立ち上がる。
分かってる。
……良く分からない事なんて何もない。
「じゃあ着いて来て」
「一応マフィアの事務所なのに、自由に動いてるの凄いね」
「……」
私の相槌に返事はない。
……それが無くても分かっているけど。
今のしーちゃんは、おふざけ一切無しの真面目モードだ。
まあ分かるよ。
しーちゃんは大事な時に茶化したりしない。
しないでいてくれる。
そういう人だから此処に居るんだと思う。
そして部屋を出て少し離れた所でしーちゃんは言う。
「あっちゃん、とりあえず防音の結界とかって張れる?」
「張れるけど……そこまで皆に聞かれちゃまずいような話?」
「別にあっちゃんが要らないっていうなら、無くてもいいけど」
「……ちょっと待ってて」
一拍空けて、私達を包み込むように防音の結界を展開した。
これで、皆が無理矢理ガードを突破したりしない限りは、この結界の外に音は漏れない。
「張ったよ。張ったからさ……話始めよっか」
「そうだね。こうなったら慎重に探り探りやってく事じゃない。そもそもそういうのウチの柄じゃないし」
しーちゃんは小さく息を吐いてから私に問いかけてくる。
「さっきの話に出て来た、敵の正体……気付いたんだよね?」
「……うん」
そう言って静かに頷いた。




