ex 黒装束の男達、黙秘
(黒幕……そう、それで良い)
アンナとステラの会話を聞きながら、ルカは内心でそう呟く。
こちらに帰って来た後、全員が目を覚ましてからボスであるクライドと幹部のアリアを交えて情報共有と今後についての話し合いを行った。
その中の議題の一つに黒幕の正体を。
ユアン・ベルナールについての情報を、その娘であるアンナに開示するべきか否かという物があった。
当初、自分達は穏便な形でユアンを連れて帰り、そして最低限場を整えた上でその親子を再会させるつもりでいた。
周囲の人間が最大限お互いの……どちらかと言えばアンナ寄りのフォローができる環境で、二人を再会させるつもりでいた。
フォロー。
ユアン・ベルナールをこの件とは無関係のただのクズとしてアンナと再会させる事で、自分の父親のやってきた所業に対する責任感を、アンナに負わせないようにするフォロー。
良くも悪くも都合の悪い点を隠蔽する工作。
それは必要な事だ。
その所業の先にある目的を知ったとしても、その過程をどう捉えるかなんてのは人それぞれだ。
……取り返しが付かない精神的な負荷にもなりかねない。
そしてそれはユアン・ベルナール本人を連れて来れた場合でもそうだ。
結局敵対し、連れて帰る事が叶わなくなった今。
分かりやすくヘイトをぶつける相手すら目の前にいない今。
その事実を知る事は、より最悪な事態になる可能性が否定できない。
「やっぱり元々の予定通り伏せた方が良いとウチは思う」
そんな提案をシエルがした。
「諸々の情報をあっちゃん達に伝えて、それでもし話しても大丈夫そうなら後出しで出すのも有りかもしれないけど、無理そうなら黙っておく。それしかないと思う」
「一応聞くが話して大丈夫そうな状況ってのは?」
クライドの問いにシエルが言う。
「敵があくまで世界を救う為に動いているっていう事実を知った上で、認められないにしても理性的に最低限の理解を示してくれるなら、場合によってはその正体を話しても多分大丈夫だと思う。どれだけいい結果でもしばらく荒れはするだろうけどね」
だけど、と言いにくそうに一拍空けてからシエルは続ける。
「……まあ事実世界を救おうとしていたとしても、その過程でやっているのは国家転覆に大量虐殺。そして自分達が関わった誘拐事件の首謀者で、同じことをこれからやろうとしているっていうトリプル役満みたいな状態な訳だしさ。嫌悪している父親が、現在進行形でそんな事をやってる事を知ったら……駄目かもしれないでしょ。色々と。というか駄目だよ。だから元々事件とは関係なく再開させる場を設けさせるつもりだった訳だし。そんな展開は来たら奇跡なウルトラCって感じ」
……そんなシエルの話に、あの時あの場に居た人間は自分を含め皆頷いた。
「そんな訳でこれについてはあっちゃんのメンタル最優先って事でお願い。一緒に戻って来るシルヴィちゃんとシズクちゃんには裏でこっそり伝える感じで」
だから、今はユアン・ベルナールの名前は出さない。
……安易に出せる訳がない。




