10 聖女さん、やるべき事を見定める
そこから一連の出来事を聞いた。
正直混乱はしたけど、一応表面上だけでも飲みこめたと思う。
簡潔に纏めるとこうだ。
私達があの幽霊屋敷で見た空間に空いた穴みたいなのは、別の次元から三次元空間を食べる次元獣って化物が暴れた結果らしい。
私達と敵対していた奴は、その化物に世界を滅ぼされる事を回避する為に行動していて、その紆余曲折の過程でクラニカ王国を無茶苦茶にしたり、私以外の皆を追放したり……あの日の誘拐事件を起こしたりなんて事をしていた訳だ。
で、ソイツの所にカチコんだ結果、一緒に連れて行ったレリアさんなら世界を救えるかもってなって停戦したけど、レリアさんがギブアップして寝返って結局敵対。
最終的に激闘の末に皆が負けちゃって。だけどそういうスタンスで戦っていて一度は停戦したような間柄だったから、どっちのやり方で世界を救うか競争みたいな形で誰も殺されずに此処に帰されたと。
「うん、大体理解したよ。大体だけどね」
そう言ってから溜息を吐く。
……合理的に考えて、私達が争ってきた凄腕の魔術師やレリアさんの判断が正しいかどうかは分からない。
未来を読んで、それ以外に通れるルートが無かった。
そのルートを後押しするしか、現状確実性のあるやり方が見付けられなかった。
皆の……いや、私達のスタンスは、そもそも答えが有るのかも分からない。
だから分からないけど、合理的に世界を救おうと考えれば、もしかしたらレリアさん達が正しいのかもしれない。
理想とか、倫理とか、そういう事を前に出しても結局全部失敗して0になったらどうしようもないというのは、それはそうとしか言いようがないから。
だけど……あくまで合理的に考えたらの話で。
極論を出さないといけなくなったらの話で。
「……なんとかまともなやり方見付けないとだ」
「ですね」
「流石に世界救えりゃそれで良いってやり方は駄目っすよ」
私達がそう言うと部長さんは小さく笑みを浮かべて言う。
「分かっちゃいたが、お前らもこっち側か」
「うん、そのつもり」
マフィアにこっち側とか言われたら反社で一括りにされたみたいだ! って一瞬思ったけど、そんなアホみたいな事で茶化して良い状況じゃない。
大事な、大事な事だ。
「代案見付けて、その敵もレリアさんもシバキ倒しに行こうよ」
掌に拳を打ち付けてそう宣言する。
ボコボコにぶん殴って止めてやる。
そうじゃないと駄目だ。
今までもこれからも、過程があまりにも酷すぎる。
終わりよければ全てよしなんて、絶対に言えない。
……となればとりあえず。
「そうだ、私達にも見せてよ。その佐渡島レポートって奴」
目を通せる物は通しておきたい。
「それは構わねえが、多分あまり良い情報は得られねえぞ」
マルコさんが言う。
「事の首謀者も言っていたが、それの出所と俺達の世界じゃ文字通り世界観が違う。資料から得られたのは、次元獣っていう敵が三次元空間の外に居る事。対処するにはその空間に攻撃を放つか、こちらの空間に引きずり込む事。その程度の事しか有効な事は書かれていねえ」
「後は私達の世界からすれば再現不可能な事や理解不能な事が記されているだけでした……それでも見ますか?」
アリアさんにそう問われるけど、とりあえず頷く。
「まあ一応、目を通しとくだけ通しとくよ。とりあえず此処にいる皆と同じだけの情報はもっときたいし」
「分からないなら分からない事を、ちゃんと自分で考えた上で理解したいって感じですかね」
「そうそうシルヴィ。そんな感じ」
「分からないなら分からないなりにぶつかってみるのも大事っすからねえ。資格勉強とかもそんな感じっす」
「これもそんな感じ……なのかなぁ」
そこはちょっと分からないけど、とりあえずアリアさんから佐渡島レポートの写しを貰う。
……ちゃんと読める言語だ。
さっきの話によると元々紙の資料にはしていなかったらしいんだけど、ルカ達に手渡す為に翻訳した物を、頭の中の情報を紙に書き出す魔術で書き出したらしい。
それをシルヴィとシズクと共に読み進めていく。
……言われた通り、確かに理解できなかった。
少なくとも私が知ってる魔術絡みの情報じゃない。
根本的に色々な事が違っていて、本当に世界観が違う資料を読んでいる気分だった。
そしてそれを読みながら。
血の気が引いて行くのを感じた。
恐らく佐渡島レポートを紙に転写した魔術は、使用者の筆跡がそのまま写し出される。
そんな仕様でもないのに、あえてこの筆跡で記される方がおかしな話だ。
そしてこの筆跡を……私は知っている。
ミカとルカの国でクーデターを起こして大勢の犠牲を出して、皆のを国から追放して、そしてこの国でも大勢の子供を誘拐して生贄に使用としていた。
私達が知らないだけで、その何倍も誰かを不幸にしているかもしれない。
これからもこちらが止めなきゃその何倍も不幸にしていく。
そんな人でなしの事を。
そんなクズの事を、私は知っている。
やるべき事が、できた。
流石にこれは、もう駄目だ。
私はあのクズの、息の根を止めなければならない。




