解析
この鉄くずの人形、鉄くずとは言うものの別に錆びたりはしてないんだよな。このタイプ、あちこちで見かけるけど、放置されたままだ。っていうかなんてこんなとこに落ちてきたんだろ。そのおかげで、せっかく爺ちゃんが作ってくれた雨よけのトタン屋根をぶっ壊されて、置いてあった自転車もメチャメチャ。家にめくれ込んでるし、ガラスも割れちまったままだ。
思えばあのとき、冷蔵庫の中を漁っていた泥棒ってこのロボットのパイロットだったのかな。10年ほど前、いわゆる大戦時に、このロボットが家の前に落ちてきて、強烈な地響きが起きた。地震だと思った私は慌てて起きて一回リビングに来たら、泥棒が冷蔵庫を漁っていた。私は怖くて立ち尽くすだけだったが、しばらくすると、大柄のガタイのいい男は、まだ成長しきってない私の頭をポンポンと叩き、しっかり生きろよって言って割れた窓の外から逃げていった。妹は空気を引き裂くような巨大な地響き音が辺りを響かせたにもかかわらず、スヤスヤ寝ていた。とんだ肝っ玉だ。次の日、辺りが明るくなって、外へ出ると、ロボットが裏庭に落ちててびっくりしたもんだ。
別にこの辺で戦争が起きたわけではないが、今思えば単にエンストを起こしただけなのかもな。ネジを空けて内部構造を見ても、目立った損傷は確認できない。なら、プログラムを書き換えれば、私仕様でロボットは動くんじゃないかと見た。タッチ式のパネルをわけもわからずピコピコと弄ると、内部のプログラムが現れた。実は内部構造は単純で、とある関数を呼び出せば各機能が動くようになっていた。つまり、ボタンさえ押せれば、このメインループは正常に動くってわけだ。ここまで来るのに数年はかかったな。そもそもタッチパネルの存在すら分からなかったからな。しかし、このシステムを動かせるはずのボタンを何度も押しても、起動しなかった。基板側も特に損傷なし。つまり、電気以外の何かしらのエネルギーが必要って考えたわけだ。
その予感は当たった。モニターに映されているエネルギーゲージが完全に0になっていた。そこで、ロボットの外側によじ登ったり、尻側を覗いたりした。どこにもエネルギー挿入口が見つからないなって諦めかけて、頭の上で空を見上げながら、風に当たっていた。ロボットのめんどくささを忘れて、この世界の清々しさを存分に味わった。空ってこんなにも広いんだなぁ。何か遠くの理想郷の姿を夢想した。しばらく経って、飽きたころにロボットを降りようとしたとき、頭部の付け根の背骨あたりに蓋を見つけた。いちもくさんに開けてみるとオイルの臭いが漂ったのでこれがエネルギー挿入口だとわかった。さらにこの匂いはガソリンと同じ空気がするので私は、最高にワクワクする閃きが頭に電撃を受け、痺れが伝わるかのように全身に鳥肌が立った。




