前世紀の夢
私は後部座席に乗せられ、ある地方都市の中の景色が通り抜けていくのをボォっと見てた。
ガソリンも高くて、ちっと運転しただけでも、うんと金をばら撒いてるようなもんだわ。
そんな父親の怒鳴り声に近いような北部訛りダミ声が車の中の空気を圧迫した。幼い私はただ、返す言葉もなく、まばらな人の流れをじっと見ていた。過ぎ去る風景、人々、みんなパステルカラーで、輪郭は虹色を帯びていた。そして、淡々と存在しているだけで、何も変わることはなかった。
気づけば、私は空を見ていた。夢というのは、起きてみないと、自分が夢を見ていたかどうか分からず、ただ自分が作り出した世界の中で踊らされるらしい。少なくとも、ヨダレがツゥーっと唇の縁から流れ落ちた跡が、カピカピになって、私の頬を汚してるのがわかったので、さっきまで寝ていたことに気づいた。
前世紀の頃か。まだ車も走ってたし、所々で文明は生きながらえていたんだよな。でも、あの中央政府ができてからはすべてが変わった。やつら、親父を連れ去ってしまった。たまには合わせてやると言ってたくせに、その間に脳梗塞で死んじまったって知らせが来たときは、どれだけ中央の連中を憎んだことか。
大人になったら、自分のことは全部自分でやれだって?身勝手すぎだ。なんで俺はこんな時代に、人間として生まれてきてしまったんだ!寝起き特有の不快感が私の思考を、地獄の釜の底へと導く。
かつて前世紀では、人は宇宙に行けば革新的な人類が地球を救うから、みんな続けとピコピコもんの資本家たちは声だかに叫んだが、決してそうはならなかった。宇宙に行くのは異常なまでのエネルギーを費やすから、結局地球というものを見たのはごく一部の鍛錬を積んだ立派な連中か、肥えたバカのどちらかしかいない。前者はミッションのために、宇宙秩序の維持に努めたろうが、後者は一個人の単なるエクスタシーに過ぎない。どれだけ涙を流そうと、それは資本という名の血の涙だ。
空の雲を眺めてると、まぁちと過去に目を殴られた後遺症で、ちらちらと蚊が飛んで見えるのだが、過去にはたくさんあった飛行機雲が今はもう一切ない。前世紀には、人型ドローンが中東やら東欧やら、西の島々やら、果ては宇宙やらで、当時の最新技術を駆使して、国という単位を作って、お戯れをしたもんだねぇ。人も乗っていたんだとか。ただ、それが原因で、地球に埋蔵されていたエネルギーをすべて宇宙に放出しちまった。そのおかげで、地球温暖化ってのは、結局極端には上がらず、徐々に資本主義以前の風流さを取り戻しつつあると、とある白髪の研究者は述べたものだが、今の俺等の暮らしは、その日暮らし。昔は良かったなんていうけど、ほんとその通りだな。
とりとめもなく、くだらないことを考えている自分にふと気づき、あたりを見回すと、籠がなくなってることに気づいた。
うわー!!!盗まれた!!!
あんちゃん!!こっちさ置いだよ!!いつまで寝でんだっぺ!!
ひどい北部訛りの妹が、洗濯物を干しながら、怒鳴った。




