9♣
俺は高科湊、31歳、大学卒業後に代々経営している桃瀬グループの社長になった。
俺には2個下の乃杏という妻がいる。妻は、一言で言うと……
可愛いくて賢くて少し天然?いや……かなり鈍感の女の子だ。俺はそんな乃杏が大好きだ♡
そして俺の初恋の人……16年間も俺は妻に片思いしている。
乃杏と出会ったのは俺が15歳、中学3年生の時だった。俺は子供の頃から神童と言われる後継者としてのレールの上を歩いていた。中学3年の時点で大学四回生までの勉強を終了していた俺にとって日々の生活は本当につまらないものだった。そんな時に出会ったのが松井乃杏、未来の俺の妻だった。
当時の乃杏は児童養護施設、たんぽぽ園で生活していた。勉強をしたいけど、園長から電気代の節約の為に遅くまで勉強できずに困っていた。毎日公園に、きてベンチに座って勉強をしていた。
「良かったら、俺のデイルームで勉強する?」
乃杏に俺から声をかけた。今はお淑やかな女性だか、この当時の彼女は年相応な活発な女の子だった。
「いいの?ありがとう」ひまわりの様な笑顔の眩しい女の子だった。一瞬で恋に落ちた。一目惚れだった。
公園で集合してから近くのアイスクリーム屋さんでアイスを買って俺のデイルームへ行った。
アイスを食べながら勉強をしている、真剣な乃杏の横顔を見るのが好きだった。
「そういえば名前言ってなかったね?私は松井乃杏だよ。のんちゃんって呼んでね♪」
「俺は高科湊……」
「じゃあ!みなちゃんって呼んでいい?」ニコっと笑ってくれる。
「うん。いいよ。」
「ありがとう!みなちゃん!このアイス美味しいよ!食べてみて♡」
被って食べる。俺のもあげた。
「何か線香花火が弾けてるみたいだね」
「そうだね」
のんちゃんとの時間は本当に楽しかった。
のんちゃんと出会ったのは6月だった。8月に俺の誕生日があって、ケーキを作ってきてくれて手作りの写真立てをプレゼントしてくれた。今、その写真立てには俺たちのウェディングフォトが入っている。
お礼に俺もプレゼントを渡したくて誕生日を聞いたら分からないと言った。
「じゃあ、好きな日にちを誕生日にしよう!」
「うーん、9月9日かな?」
「じゃあ、その日が誕生日だね」
9月9日に二人で誕生日のお祝いをした。初めて誕生日祝いして貰って嬉しいと言っていた。
今でも9月9日は戸籍上の誕生日になっている。
俺はネックレスをプレゼントした。俺は知ってる。今でも宝箱に大事にしまってあるのを……
クリスマス、バレンタイン、ホワイトデー、イベント全てを一緒に過ごした。あの1年間の思い出はかけがえないものだった。
運命の4月2日がきた……
交通事故にあった。脇見運転をしていたトラックが横断歩道を渡るのんちゃんに突っ込んできた。
凄い高く上がって飛ばされた。俺は頭が真っ白になった。直ぐに抱えて近くの病院へ急いだ。
何とか一命を取り留め、のんちゃんが目覚めた。
俺は……嬉しくて泣いていた。そして絶望した。
「貴方が助けてくれたんですか?ありがとうございます」のんちゃんは俺に関する事だけ忘れていた。
俺との1年間の思い出は事故の一瞬で消えてしまった……
悲しくて、涙が止まらない……生きててくれて嬉しい……でも……俺との事……俺の事忘れないで欲しかった。
本当は今日告白するつもりだった。
高校は留学する事が決まっていたから……
信頼してるボディガードに、3年間のんちゃんを守るように伝えた。
一緒にいれないけど、元気でいてね。
毎週、ボディガードから届く、写真をアルバム綴じていく。年々綺麗になっていくのんちゃん……傍にいれないもどかしさに俺の心は潰されそうだった。
のんちゃんのお陰で温まっていた、俺の心はまた元の氷の様に冷えきっていた。
3年間の留学を経て日本に帰ってきた。
日本の大学に通うためだ。両親や祖父母はハーバード大学を進めて来たが俺は断った。
3年前にのんちゃんが行きたいと言っていた大学に通うためだ。もしかしたらのんちゃんが2年後入学するかもしれない……その願いにかけたかった。
2年後……のんちゃんが入学してきた。
ボディガードからの写真で見ていたが実際ののんちゃんは更に美しかった。
何とかして傍にいきたい。そればっかり考えていた。
当時の、のんちゃんは園の弟妹の為にアルバイトに明け暮れていた。それでも成績な3位以内をキープしていた。本当に頑張り屋さんだった。
アルバイトに行く前に軽食をさりげなく渡すのが俺の楽しみだった。
のんちゃんのアルバイト先のカフェや定食屋にも何回も行った。
また俺の心の温かいのか戻ってきた。
楽しい2年間を過ごさせて貰えた。
ゼミでの飲み会で酔った俺は好きな人の事を聞かれて「のんちゃん」と答えたらしい。それがなぜか、加賀屋希美になっていた。ただ母親同士が親友なだけの1つ下の女の子……全く興味がなかった。
俺にとって、心をときめかせ温めてくれるのはのんちゃん……松井乃杏だけだ。
大学卒業後、約束通り父親が社長を勤める会社に就職し、社長になった。
敏腕社長として経営に際をふるった。
1つ下の加賀屋希美に呼ばれて言われる。
「私、海外留学行ってくるね」興味なかった俺は「がんばって」とだけ言った。それに気づいたのか「もういい!」とだけ言っていた。
その1年後にのんちゃんが入職してきた。
始め営業課が欲しいと言ってきた。絶対!嫌だった。
「あれだけ美しくて、優秀だ、秘書課で能力を振るって欲しい。1年間は常務の元で学んで大丈夫そうなら俺の個人秘書にしてくれ」
「承知しました。」
1年間本当に期待以上の働きをしてくれた。
俺の社長秘書になってからも変わらなかった。あるレセプションのパーティで珍しく2杯もワインを飲んでのんちゃんが酔ってしまった。
俺は全く酔ってなかったがのんちゃんが……
「だめ?♡」と可愛くおねだりしてきた。俺は初恋を拗らせていたからすぐにがっついた。
朝まで何回もむさぼった。
のんちゃんはどこもかしこも甘くていい匂いがした♡
絶対!!俺の物にしたかった。
初めてを奪ってしまった償いをするていで結婚迄持ち込んだ。
はぁ……幸せ。
のんちゃんと結婚できるなら内緒の結婚だろうが……5年間子作りなしだろうが何でも大丈夫だった。
子作りがダメなだけで情事はするから♡問題なかった!
絶対……祖父母や妹の涼子は気に入るだろうと思ったら……やっぱりのんちゃんのことを気に入ってくれた。
のんちゃんは可愛いくて性格がいいから♡
両親は俺が加賀屋希美と結婚すると思ってたみたいで納得してなかった。
何回か本家にも連れていったがのんちゃんにきつく当たるので別館のみ連れていった。
大好きだ♡のんちゃん……
毎日の情事で蕩けそうだった♡
会社でも……家でものんちゃんがいる♡
こんなにしあわせでいいのだろうか……
幸せに酔いしれていた。
だからだろうか?いい事の後には悪い事が待っていた。結婚5年目、ようやく内緒の結婚もおしまい、のんちゃんに似た可愛い子を作れると思ったのに……
のんちゃんから離婚を切り出された……
いつから?のんちゃんはいつから俺の事嫌いになったんだ?
昨日も蜜事を楽しんだのに……
お願いだ……俺を捨てないでくれ、のんちゃん……
離婚届にサインをした。でも俺が出すと言って預かった。のんちゃんはその日に家を引っ越した。
ふと思った……この離婚届を抹消しよう……そのままシュレッダーにかけていた。跡形もなく粉々になった。
のんちゃんが俺の事をすきじゃないなら俺を好きになってもらったらいいんだ……
俺は口元に笑みを浮かべた。




