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大学の入学式でゼミの紹介を湊くんがしていたのが私たちの初めての出会いだった。出会いといっても一方的だけど……初めて彼を見た時の感想は……美しいだった。整った彫刻の様な顔に190cmはあるだろう長身、お洒落で素敵な笑顔……低くて威圧感のない澄んだ声……知的も知性も兼ね揃えた生粋の御曹司
高科湊、当時、経営学部の3回生だった。
当時から先輩、同級生、後輩から好かれていた。
私は一目惚れしてしまった。でも……彼が在学中の2年間一切関わることはなかった。
当時、私は、高校を3年間学年1位の成績を誇ってたので学費が免除されていたが、児童養護施設の他の子供達はそうではなかった。他の子達が大学、専門学校に行けるように私がアルバイトをして稼いでいた。
もちろん、学費免除を受けるためには大学の成績も3位以内をキープしなければならなったので、アルバイトの後に夜中まで勉強をしていた。だから私は毎日へとへとだった。
ある日授業が休講になり、アルバイトまで時間が空いたのでデイルームで一眠りしていた。本当に疲れていたからすぐに眠れた。
アラームがなって起きると彼が私の前立っていてサンドイッチとイチゴミルクとプリンを置いてくれているところだった。
「高科先輩……」私が言うと。ニコッと笑って彼が言う。
「ご飯はしっかり食べないといけないよ。ほら!食べて」優しく頭を撫でてくれている。男の人との関わりがなかった私にとってこの美しい人が自分の目の前で笑っている事に戸惑いがあったけど……せっかく彼がくれた好意を無駄にしたくなかったので急いで食べた。そして言う。「高科先輩、ありがとうございます。よかったらカフェムーンに来たら飲み物奢らせて下さい。」
私を真っ直ぐ澄んだ瞳で見つめながら彼は優しい笑顔でうなずいてくれた。
彼のあの笑顔だけで嬉しくて自然と私も笑顔になれた。湊くんはよく私のバイト先に来て、カフェモカを注文していた。窓際に座って静かに読書をしている姿は美術館の絵画のようだった。こんなに美しい人がこの世にいるなんて……私に会いに来ている訳ではないが会えたら凄く嬉しかった。
私が2回生の時に同じ養護施設の子が病気になり、もっと時給の高いアルバイトに変わってしまったので彼に会うのは大学だけになった。
4回生は殆ど授業にこないし、彼は父親の会社である桃瀬にいっていたので会わなかった。それでも会った時は本当に……本当に嬉しかった 。
卒業後に桃瀬の社長に就任し、名実ともに優秀な後継者になっていた。
彼が社長になって9年間で桃瀬は一躍トップに踊り出ていた。
私は海外留学の話も出ていたが、迷わず彼がいる桃瀬に就職した。彼に近づきたかったから……運良く秘書課に配属されたけど……彼は……私の事を忘れていた。
「今日から秘書課に配属になった松井乃杏です。よろしくお願いします。」
社長室で挨拶をしたが彼は「これからよろしく」とだけしか、言わなかった。小浦秘書長から「松井さんは社長と同じ大学出身みたいですよ」と言われても「そうか……」しか言わなかった。あの淡い思い出は私だけの思い出だった。1年間は常務の秘書を務めて色々経験させて頂いた。それから半年後に社長専属秘書に任命された。
鉄人の様な彼は朝早くから夜遅くまで業務をこなしていた。専属秘書になって彼より早く出勤し、遅く帰る日々が続いていたけど、彼がふと言った。
「明日から出勤も退勤も一緒にしょう。」
「承知しました」
行きも帰りも彼の車で行く事になった。
ぺちゃくちゃ話す訳ではなかったが、彼と同じ空間にいれるだけで幸せでいっぱいで口角が上がっていたと思う。
ある接待で2人とも酔ってしまった。普段酔わない彼もその日は大口の契約が取れてうれしかったのかよくお酒が進んでいた。
気がついたらホテルのベットの上で絡み合っていた。
彼が「しっかりほぐすね、痛くない?」と聞いてくる。
「大丈夫……気持ちいい」自分ではない声が沢山出てくる。
「いたっ……うう……しゃち……ょう」やっぱり痛くて泣いてしまった。優しく手で涙を拭いて言う。
「社長じゃなく、湊って名前で呼んでくれないか?」
「ぅん……湊くん」
酔っていたのに彼は本当に元気で……絶倫だったと思う……朝まで何度も果てて……絶頂を迎えた。
目が覚めると体が鉛のように重かった……
窓際で彼がバスタオルを腰に回して煙草を吸っていた。ぼーとした顔で彼を見ていると……こっちに向かって歩いてきた。私の顎を持ち上に向かせてキスをする。口腔に彼の煙草の匂いが充満する。私の目はトロンとなる。今度は首筋を舐めてキスを何度もし痕をつける。
「ちゃんとするから」彼が耳元で囁く……何をちゃんとするのか……この時は分からなかったけど……後日判明した。
綺麗なレストランで食事をしながら「君の初めてを奪ってすまなかった。結婚しよう」シンプルだが……高そうな指輪を渡される。
そうして5年前私は彼の奥さんになった。
ただ、条件があった。
1.結婚した事は秘密にする事
2.子供は5年間作らない事
3.お互いの事は尊重する事
4.2人の時は下の名前で呼び合う事
だった。彼の事が好きな私は全てに従った。
彼の実家に挨拶に行った時、祖父母が手を握りながら、言った。
「乃杏ちゃんいつでも遊びにおいでね。湊がいなくても気にせずいらっしゃいね。」
「はい!おじいちゃん。おばあちゃん」
私は家族の愛を知らなかったから嬉しかった。
両親は終始そっけなかったけど、別に良かった。
後日、義妹の涼子ちゃんとも出会った。はつらつとして可愛い子だった。
「私、お姉ちゃん欲しかったから嬉しい!しかもこんなに可愛いお姉ちゃんなんて!」
「私も涼子ちゃんみたいな可愛い妹が出来てうれしいよ」
自然と私も笑顔になっていた。
「お兄ちゃんは堅物で笑わないから何か嫌な事あったら気にせず私に言ってね」可愛くウィンクしていた。
「うん。その時はお願いね。」
入籍をし、彼が住んでいるマンションに引っ越しをすませた。
5年間、彼のために会社でも、家でも尽くしたが……私は後悔はない。情事も2日に1回もあった。
「体の相性がいい」とよくいっていた。
私も毎回気持ちよくて……とろけそうだった。
生理の時でも口と胸と手を使って彼を満たしていたし、お風呂はどんなに忙しくても一緒に入っていた。
出張でも専属秘書だったので付いていっていたが、さすがに部屋はバレない様に2つ取っていた。
接待が終わればお風呂でお互いをマッサージし、ベットで癒される。
そんな日々がこれからも続く思っていた。といか思いたかった。
結婚4年目に彼の友人達から聞かされた。彼らは私たちが結婚している事を知らなかったから普通に世間話をしただけだと思う。
「松井秘書!湊って厳しい?」
「厳しい時もありますが、基本的には優しく教えてくださいます。」
「湊はずっとのんちゃんがすきだったんだよ」
「のんちゃん?」
「加賀屋希美ちゃん、湊の愛しの彼女だよ!来年日本に帰ってくるから吉報が聞けそうだな」
「本当に……湊も独身でいたし、待ってたんだろうな」胸が締め付けられそうだった。その日は初めてお気がついたら……風呂も別々に入り、ゲストルームで横になっていた。
ドアを激しく開ける音が聞こえた。見上げると般若の様ないで立ちで彼がドアの前で立っていた。
低く……冷えきった声で言う。
「何で一人で入って寝てるんだ?」
私を攻める言葉だった。下を向いてしまった。
「次から一人で入る時は連絡してくれ」懇願するような目になった。
「分かった……ごめんなさい」優しく頬を撫でる……そのままゲストルームで情事を行う。いつもより激しかった。すぐに果ててしまった。
そんな日々にピリオドをうったのは私だ。分かっている……逃げただけなのは……義務感でも良かったのにわがままなだけだったんだ。
今日も彼と情事をする夢を見た。でも起きた時に彼はいない……シーツも冷たい。
辛い……出張が終わったら本当に辞めよう。
今度こそ本当に彼とお別れするんだと心に決めた。




