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Ep.6 ⟬ こんな世界でもなんとか ⟭



飼い慣らされたペットは野生では生きていけない。

――現代社会を生きる私たちって?





レベッカとの会話は正直苦じゃなかった。


少なくとも、世界水没前に通っていた学校のみんななんかよりはずっと話しやすい。


なんというか、彼女からは陰湿さというものが微塵も感じない。


それに比べてあの学校はどうだ。


あそこにいたのは皆やはり理性というものが――


「ふわぁぁっ…そろそろ眠くなってきた。アタシはもう寝たい気分だな。なんか布団とかあるのか?できれば枕は硬いのじゃないとアタシ寝れねえんだけどさ」


――なんて…なんて図々しい人なんだ!


レベッカは高層マンションの最上階であるこの部屋を無許可でうろつき始めた。


「間取りは…5LDKってとこか?いや、6LDKか!でも見た感じほとんどゴミ屋敷っぽいけど」


――ゴミ屋敷じゃない…!レベッカには私が長年苦労して拾ってきた非常食やマッチの山、飲料水が目に見えないのか。


「あっ、でもこっちの部屋は地味だけどなんとなく整ってるな。足の踏み場に困るだけで別に汚いって訳じゃないのか。いっぱい紙とか落ちてるし…もしかしてアンタ、ビットコインでやらかして破産したのか――」


――ちがうわ。漫画家になりたくてたくさん紙を集めたけれど誰かに見せる勇気がないんだよ…!


「おっ!この部屋いいなー!アタシ、ここにするよ!」


レベッカが子供のようにはしゃぎながら向かったのは、2本の大きなランプが幻想的に光る個室であった。


「…ちょっと、そこ私の2段ベッド…」


「えっこれが2段ベッドか!アタシ兄弟とかいなかったからさ〜憧れてたんだ!」


レベッカは軽く笑うと、靴を脱いで上のベッドへと登っていく。


(……上の方が本来私のベッドなんだけど)


やれやれ…と思いながらもミナセは下の段のベッドへと潜り込む。


そもそも、なぜ私がこんな不審者を泊めなきゃならないんだ。


――明日だ。


明日こそは絶対に出て行ってもらいたい。



数分もしないうちに、レベッカの寝息が聞こえた。


起きている頃とはうってかわって、人が変わったように静かだ。


いや、寝ているからそれはそうなのだが。


そして、完全な暗闇や無音という訳では無い。


バブル期に建てられたであろうこの高層マンションの全ての部屋の窓は大きく、良くも悪くも外の情報が入ってきやすい。


水没前では考えられなかった程の無数の星の輝きと、青白く光る月光が部屋の中を柔らかく包む。


さらに今も動き続けている水の音が絶え間なく聞こえる。


時々何かに当たったような音。


何かが落ちたような音。


海のような小波が起きる音。


――全てが、きれいだ。


――こんな世界も、悪くない。








ミナセは毎晩同じことを考える。


世界が沈んでから、ずっと。


――そして今日で1827回目になる。


そんなことにも気づかず、ミナセはゆっくりと目を閉じた。

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