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部署の新設、突然の異動

 それにしても、まさか前回神殿から世界神に会いにきたときに出会った『おっさん』が創造神だったとは思わなかった。しかも、おっさん、いや、創造神はなんと世界神の祖父だというので二度驚いた。


 うーん、それにしても、たった二代であのおっさんからこんな可愛い孫娘が誕生するとは……。そんなことを考えていると、改まった様子で機会神が俺に話し掛けてきた。


「ところで、本日世界神のオフィスに輪廻神と来たのは、朝比奈さんにご相談といいますか、お願いがあったからなんです」


「お願いですか?」


「はい、先ほどもお話ししましたが、創造神様は世界神が上級神になれるようにと、様々な試練を課せられておられます。その反面、彼女が立派に世界を管理できるようにと、様々な支援もされておられます」


「うむ。それでな、この度、世界神への支援の一環として、世界神をサポートする為の専任部署『世界管理支援室』を立ち上げるように、創造神様から命令が下ったのだ」


 部署の新設って、本当にどこかの企業のような話だなぁ。


 しかも、試練を与えると言っておきながら、孫娘の為にそこまでするとは、創造神は世界神に対して甘やかし過ぎではないだろうか……。


 そんなことを思い浮かべていたのだが、ひとまず、世界管理支援室について詳細を聞くことにする。


「世界管理支援室、ですか?」


「あぁ。世界神が管理している世界マギシュエルデを様々な観点から管理について支援する、まさに世界神のための部署だ。そして、世界管理支援室の室長には、私が就任することになった」


「私も、この度世界管理支援室の担当課長になりました」


 なるほど……。つまり世界神をサポートする部署、『神様サポート室』ってことね。それにしても、輪廻神と機会神の二人の神様を世界神のサポートに就けるとは、創造神は孫娘に甘過ぎだろう。


 更に輪廻神と機会神による説明が続く。


「ただ、まだ具体的にどのような活動をするべきか明確な内容は決まっていない。一旦、現状の世界神の業務と管理している世界の状況を私と機会神の二人で確認・精査した上で早々に取り決める予定だ」


「そして、朝比奈さん。あなたも本日付で当部署へ異動となりました。三人で力を合わせて世界神をサポートしましょう!」


「はぁっ!?」


 一瞬、何を言われたのか理解できず、間の抜けた声をあげてしまった。


 俺が世界管理支援室に異動? いや、異動というのはそもそも何処かの部署に所属している者の配置転換を意味するわけで………。


「あの、私はこれまでもどこかの部署に在籍していたんでしょうか?」


 そう確認すると、世界神が教えてくれた。


「はい、もちろんです! 何といってもハルト様は私の部下ですからね! 私が所属する世界管理局管理運営本部世界管理部運営四課所属だったのですが……。私をサポートして下さる部署ができるのは嬉しいですし、それも輪廻神と機会神、セフォルティお兄様が担当して下さるのは本当にありがたいのですが、でも、そのせいでハルト様が私の部下ではなくなってしまいました……。ちょっと寂しいです」


 何というか、物凄く長い部署名に突っ込みを入れたくなる衝動を抑えつつ、そもそも異世界に転生した時点で、そういう部署に所属しているということを伝える義務が、所属長である世界神にはあるのでは無いだろうかと、小一時間問い詰めたい気分になる。


 それにしても、俺は剣と魔法のファンタジーな異世界に転生したと思っていたら、いつの間にか会社(神界)勤めになっていたとは、いやはや驚きである。そんな俺のことはスルーされ、輪廻神が世界神の言葉に反応した。


「うむ、確かに所属部署の異動にはなるが、世界管理支援室自体は運営四課の中にできる新設部署だ。つまり、上司は世界神から変わらない。朝比奈君の直属の上司が機会神に変わるだけだな」


「本当ですか!? 良かったぁ!」


「また、世界管理支援室も運営四課のオフィスを間借りすることになっている。だから、世界神も安心すると良い」


「本当ですか!? それなら全然問題ありません! ハルト様やお二人が側にいてくださるのなら、私も安心です!」


 引き続き世界神が俺の上司であることと、輪廻神と機会神の二人と同じフロアで働けることに喜ぶ世界神だったが、残念ながら、輪廻神と機会神からはそれを否定する言葉が発せられた。


「いや、常駐するというのは流石に難しい。私も普段は輪廻本部に籍を置いているのだ。定期的に状況を確認する為にこのオフィスに来ることはあっても、常駐することは難しい」


「それを言うならば、私もですね。私は特定の部署に所属しているわけではないので、輪廻神よりは融通が付きますが、その分他の神たちからの相談や依頼を受けることが多いので、ここの部署に張り付くわけには行かないです」


「えぇっ!? お二人ともこのオフィスにいてくださらないのですか!?」


「毎週一度は必ず様子を見にくるつもりだ。暫くはそれで我慢して欲しい」


「そうだよ、世界神。幾ら世界管理支援室といっても、私も輪廻神も本業といえる業務を抱えている身だからね。世界神のことばかり見ているわけには行かないし、それに、それでは世界神のためにもならないからね。今回の件は創造神様の個人的な意見で決まったことだけれど、本来なら世界神は、その眷族と協力して様々な試練に打ち勝つんだ。それを眷族だけでなく世界神をサポートする部署まで用意されたわけだから、それだけでも他の世界神たちと比べても随分有利な状況にあると思うよ?」


「うぅ、確かにその通りではあるのですが……。しかし、それでは世界管理支援室を新設した意味が無いのでは?」


 世界神の言うことは確かにその通りだ。せっかく部署が新設されたのに、その実態は誰もいない、誰も稼働していないというのでは意味が無いし、そもそも創造神トップの肝入りで創られた部署がそんな状況では輪廻神と機会神が責任を取らされそうだけど……。


「うむ。世界神の言うことはもっともだが、だからこそ、朝比奈君を世界管理支援室に異動させたのだ。朝比奈君には世界管理支援室から、世界神の管理する世界『マギシュエルデ』に出向してもらう形で、現地から引き続き世界神のサポートをしてもらうことになる。確かに、世界神の側にはいないかも知れないが、神話通信で連絡も取れるし、必要に応じて神界にきてもらうこともできる。問題はないだろう」


「うーん、でもそれって……」


 世界神はその先の言葉を濁す。だけど、俺はその先に続く言葉は理解できた。そう、それってつまるところ……。


「今の状況とあまり変わらない気がするのですが?」


 俺は思っていたことを口に出す。いや、本当に何の意味があるのか分からないし、それが本当に世界神のサポートになるのかが気になったからだ。


「その疑問はもっともだ。だが、世界管理支援室から出向していることに大きな意味がある。まずは、これを渡しておこう」


 輪廻神から渡されたのは一枚の付箋で、先ほど世界神から教えてもらったのと同じように、神話通信の番号が二つ記載されていた。


「これは私と機会神の神話通信の番号だ。何かあれば連絡すると良い。それから、これが最も重要なのだが……。創造神様より特別に、マギシュエルデ内に『世界管理支援室の出張所』を設立することが認められている。出張所の責任者は朝比奈君、君だ」


「出張所……。それって、どういうことですか?」


 突然輪廻神の口から出てきた『出張所』という言葉。一体どういう意味なのか分からず、俺は思わず輪廻神に聞き返した。

いつもお読み頂き、ありがとうございます!

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