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デブは初めてのボスに遭遇する

 「え、ええぇぇぇ……」


 嘘、こっちに来るの?

 そんな思いで見つめているとキングウルフと呼ばれた獣が勢いよく飛びかかって来た。


 『ガアアアアァァァァァ!!!』

 「うわぁぁぁぁぁぁ!!」


 思わず目を瞑って腕で頭を抱えるとガキンッっと硬いモノ同士がぶつかるような音が聞こえた。

 うっすらと目を開けると自分の周りを球体のような形で淡く光るガラスのようなものが囲っている。

 キングウルフはそれに齧りつこうとするが弾かれ、忌々しそうに唸っている。

 と、その視線がふいにずれた。


 不思議に思ってその視線を追うとそこにはあの子供たちがいた。


 『アオオォォォォォォン!!!』


 キングウルフが雄叫びを上げると、周りにいた肉食獣が一斉に子供たちの方へと走り出す。


 「え、嘘……」

 「助けてぇぇぇぇ!!」


 半泣きどころかもうすでに泣いている子供たちがこちらへ向かって手を伸ばすが子供たちとは10m以上も距離が離れている。

 手を伸ばし、飛んで行くが間に合いそうにない。

 肉食獣の一匹が子供たちへと襲い掛かった。


 高校を卒業してから家に引き籠って働きもせず親の脛を齧り、実の妹にデブと罵られて挙句の果てには死んだ先で出会った神様らしき人にも馬鹿にされ、魔法が存在しない世界からやってきて、浮くのとバリアがやっとでたいして魔法も上手く無い、何も良い所の無いクズみたいな自分。

 そんな自分に助けを求める子供がいて、その子供を助けられるのが自分しかいなくて、せっかく異世界に来れたのにこのままただ黙って指を咥えてあの子供たちが死ぬのを見ているだけでいいのか?自分のせいでまた、誰かが死んでもいいのか?

 ……そんなのは、嫌に決まってる。


 『魔法は想像力だ』


 誰かの言葉が聞こえた。




 彼氏いない歴=年齢の喪女の想像力をなめるなよ畜生ども。

 真っ先に女の子に覆いかぶさっている肉食獣を子供たちに熱が伝わらない様にバリアを張ってから塵一つ残さず焼き払う。

 子供たちに近付きながらも目に視覚にいた獣たちを次々に同じように焼き払っていく。

 子供たちに辿り着いたら早速自分の張っているバリアの中に取り込んだ。

 男の子は無傷の様だが女の子を見ると脇腹を喰われたようでその部分の服が破れ、内臓らしきものが見えている。

 早く何とかないと、そう思った時、キングウルフが再び襲い掛かって来た。

 バリアが思った以上に頑丈みたいでガキンッガキンッと弾いているがこのままだと集中できない。


 「ふしゅー、うるさい」


 キングウルフを睨むと、その首が音も無く胴体からズレ落ちた。

 少し間が空いてから首の断面から勢いよく血が噴き出て、その体が何匹かの肉食獣たちを巻き込んで横倒しに倒れる。

 残っていた肉食獣たちはその様子を見て一斉に尻尾を巻いて森へと走り去っていった。

 森に静寂が戻った。



 「な………」

 「ふしゅー、服、破るよ」


 絶句している男の子を放置して魔法で腹の部分の服を破ると想像よりも酷い状態なのが分かった。


 傷の断面を見てしまったのか男の子が別の方向を向いて吐いている。

 血が止めどなく流れており、女の子はもう意識が無い。

 早くしないと手遅れになる。

 少女が淡く光り始めた。

一部が失われている内臓はあるべき形へ、齧られた骨も元通り、切れた血管も繋ぎ合され、ずたずたの筋肉と皮膚も再生される。

 ただひたすら、周りの音も聞こえなくなる位集中して女の子の白い肌を思い浮かべているとやがて光が消え、女の子がうっすらと目を開いた。

 視線が合うと口を開き、弱弱しく言った。


 「気を、付けて下さ……キングウル、フ…この辺りのウル………纏め、るボス」

 「ふしゅー、それなら倒したから大丈夫」

 「……え…?」

 「ふしゅー、取り敢えず見張っておくから休みなよ」


 女の子の頭を撫でるとほっとしたような表情で目を閉じた。

 しばらくするとスウスウと寝息が聞こえ始める。

 その寝息を聞いてから今だに他所を向いて気分が悪そうにしている男の子の背を撫ぜた。


 「ふしゅー、お姉ちゃんは多分もう大丈夫だよ」

 「うぐっ、ほ、本当?」

 「ふしゅー、本当」


 ほらっと女の子の方へと押し出すと男の子はおずおずと女の子に近付き、女の子が寝ているのを確認した途端勢いよく抱き着いてきた。


 「お、お姉ちゃん……よ、よがっだぁぁぁぁ!!」

 「ふしゅー、はいはい、静かにしようね。お姉ちゃん起きちゃうよ」


 顔をタオルケットに押し当てて泣く男の子、鼻水とかでベトベトになりそうだけどよく考えたら血でガピガピになっているし、まあ良いかとその背中を落ち着くようにトントンと叩いた。


 そうしていると泣き疲れたのか抱き着いたまま男の子は寝てしまった。

 引きはがそうにもタオルケットをガッチリ掴んでしまっている。


 「ふしゅー、これは……しょうがないかなぁ」


 流石に身の安全も確信できないこの場所で寝るわけにもいかないよな、と子供たちが起きるまで魔法の練習をして過ごす事にした。


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