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ラスボス戦2(前編)









場は静寂に包まれていた。

遠くから聞こえる冷たい雨の音だけが響いている。

これまで流れてきた夥しい量の血の跡を、洗い流そうとでもいうのだろうか。

それともこれから起こるであろう惨劇を憂う、女神様とやらの涙だろうか。

どちらにせよ、暫く雨の止む気配はない。









勇者様が凛とした瞳で、静かに剣を構える。

向かい合う近寄りがたい程の美貌をもつ男…否、魔王も静かに杖を掲げた。

交わす言葉など不要だった。両者の眼差しは何より雄弁だ。

突如走り出した勇者様の背を止める者など居なかった。

剣と杖がぶつかり合い、キンと高い音が鳴り響き、その音を合図に見蕩れていた仲間達の時間がようやく動き出した。








「…まあ、する事ないんだけど」









ボス戦真っ只中の謁見の間を見下ろしながら、煙草を燻らせる。

流石にボス戦に参加できるレベルではないと置いてけぼりにされたので、いつも通りコッソリ尾行し、コッソリ観戦させて頂いている。

…と、軽く言ったものの。なかなか良い観戦スポットが見つからず、苦肉の策でシャンデリアから逆さにぶら下がる羽目になった。

魔王様の居る部屋に簡単に不法侵入して隠れられたら苦労しないわな。魔って付いてても王様は王様だもんな。






「っと」





なけなしの腹筋を駆使して頭を串刺しにしかけた氷魔法を避ける。

いくら元から私の影が薄いとはいえ、頭上から血液が滴り落ちてきたら見上げるだろう。ぱっと見ぐらいなら見逃される程度のステルス状態ではあるが、凝視されたら気付かれる恐れがある。シリアスな空気を粉砕するつもりは毛頭ないので此処は大人しくしておこう。








そうこうしている内にラスボス戦終了間際まで時間が経過していた。

手元の吸殻はおよそ一箱分。明日の晩御飯について考えている間に、思ったよりも時間が過ぎていたようだ。











正義が勝ち、悪は滅びる。

ありきたりな物語をなぞるように、勇者様が勝利し、魔王は無様に敗北したようだ。

なんて退屈で、型通りの結末。








「…なにか、言い残す事はある?」










勇者様の剣が魔王の首筋に当てられている。

少し横にずらすだけで容易に首が飛ぶ位置だ。










「………」








魔王は口を開こうとしない。

勇者様はどこか焦っているようだ。

まるで彼に何か言って欲しい言葉でもあるかのように。








「………魔王…いいえ、ウーヴェ」




「…!」








驚いたところを見るに、ウーヴェ、というのが魔王の名前なのだろうか?

…なんて白々しくも言ってみせたが、資料にガッツリ載っていた。

ウーヴェ。人間だった頃の、魔王の名前だ。







「どうしても…私は貴方を斬らなくてはいけないの?」




「………ナオ、ミ」







静かに涙を流しながら問いかける彼女の表情だけで、彼女の想いは誰にでもハッキリと読み取れた。彼女は魔王を、愛してしまったのだと。









…いやあそれにしても、まさか勇者様が魔王に惚れるとは。乙女ゲームでいう隠しキャラ的な立ち位置だろうに。


神官様のお守りをしながらちょくちょく会わせるのは本当に大変だった。なんせ神官様と鉢合わせた時点で一発ゲームオーバー確定である。囮に筋肉ダルマを生贄に捧げながらも頑張った甲斐があった。度々現れる謎の男、秘められた過去、惹かれ合う2人、魔王と勇者という禁断の関係。そういう展開大好きだからお姉さん久々に頑張っちゃったよ。いやあ本当にもう、












トスン、と軽い音がした。










「……………え?」












キスさせるまでが、本当に大変だった。

















勇者様の胸から銀色の刃が突き出ている。










恋も目出度く成就した事だし、神官様のお守りもお役御免という事で。

いやはや、死人に無茶させるよなヤンデレってば。流石に疲れたよ全く。




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