今はまだ【真里亜】
真里亜ちゃんのはアルバートと対になってるだけなので短いです、すみません。
正直、迷ってる自分がいる。あんなに真っ直ぐな瞳で見つめられたのは始めてだったから。思えば昨日作った生チョコを、私は誰にあげようとしているの?
きっとあの人を意識しているからなんでしょうね。だとしたら、私は迷わずに進むべきなのかもしれない。
とりあえず私は皆へのカップチョコを配る為に学校へ向かった。今日は自由登校だと聞かされていたけど、きっと皆はあそこにいると思うから。
人だかりが出来た校門を潜り、校舎の入り口へ向かう。そこには自由登校の貼り紙がしてあった。そしてそれを眺めるようにしたまま固まっているアルバートくんを見つけた。
「おはよーさん」
「おはよう、アルバートくん」
私が挨拶をする前に彼は挨拶をした。どうやら固まっていた原因は自由登校の貼り紙の様子。自由登校だって知らなかったみたい。
アルバートくんは視線を上下左右にゆっくりと動かした。何か探し物でもしているように。そして何の前触れもなく急に話し出す。
「な、なぁ、その袋ってもしや・・・」
私が持っているこの袋が気になるのかな。これは皆に配るカップチョコが入ってる袋なんだけれど。
「皆にあげるチョコレートよ。勿論、アルバートくんのもあるわ」
アルバートくんも男子だものね。チョコが気になるのも頷ける。
袋に手を入れ、アルバートくん宛のチョコを探す。……あった。私はチョコをアルバートくんに差し出した。
「はいっ。ハッピーバレンタイン」
「あ、有難う!嬉しいわぁ」
「本当?そう言われると、私も嬉しいっ・・・」
袋に入ったままの、本命用のチョコレート。私にそれを渡す勇気は無くて、皆に配るチョコを渡してしまった。それなのにアルバートくんとっても嬉しそう・・・笑顔を見れて私は嬉しいんだけど、何だか複雑な気分。
「なぁ、真里亜」
「なーに・・・?」
急に真剣な顔をして、何を?
「俺に対しての本命チョコはないんか?」
――!!
「えっ?」
率直に驚きを露にしてしまう程それは突発的に起こった。
「本命や本命っ!これは義理か友チョコゆーやつやろ?ほら、ワンランク上の――」
「アルバートくんって」
「?」
「心が読めるの――!?」
袋に入ったままのあのチョコをアルバートくんは見ていない。かと言って冗談で聞くにはあまりに真剣な表情をしている。だとしたらもうそれくらいしか――。
「そ、そや!俺の武器の能力で――」
やっぱりそうなのね!だとしたら隠す事もないわ。心を読まれるのであれば、私の口から真実を伝えたい。
「渡そうか、迷ってたの・・・でもどうしても、勇気が出なくって」
私はおずおずとチョコレートを差し出した。アルバートくんは何故か不思議そうな顔をしている。まるでどうして最初から出さなかったのかというように。でも私は・・・。
「私の友達には、料理が得意な子が沢山いるでしょう?だから私、自信が――」
アルバートくんはセイラさんの家に居候しているから尚更。普段から一流の物を食べているアルバートくんに私の作ったものを食べさせて、何か言われないか怖かったの。
「真里亜が作ったもんだったら失敗作だろーがゲテモンだろーが何でも嬉しいわ!有難う!」
でもそれは気のせいだったみたい。アルバートくんは私が想像していたよりも、もっと良い人だった。
「真里亜、大好きやで」
急な告白。だけどそんなに驚かない。ただただ嬉しくて・・・この気持ち、どうしたらいいの?
「アルバートくん・・・」
私も、好きなの。だけど・・・だけど今は違う気がするの。今は武器の事で余裕が無いし・・・。
「返事は今じゃなくてもええよ。ゆっくり考えてーな」
言葉じゃ上手く表現できない。あんな言葉じゃ足りないって分かってるのに。空白に詰められた想いまで、全てが伝わるとは思わないのに。
心を読めるアルバートくんは、私が迷っているのに気付いてるんでしょう?だからあんな言葉を私に掛けたんだもの。
だったら、今のままでいて。いつか私が心の整理を終えて共に武器を昇華させたその時、私は貴方に言うわ。
“大好き”って。
だからその日まで・・・。
“私を好きでいてください”




