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お兄ちゃん失格、最大の選択に僕は【真希】

真希ぃいいい


きっと読者には

真琴と真希の区別難しいよね!一人称どっちも僕だしね。


あ、でもイメージが違うかな?


とげとげしい→真琴

優しい→真希

僕は、お兄ちゃん失格だ。大好きな妹にさえチョコを貰えなかったのだから。


 今日がバレンタインデーだと何回思い知らされただろう。思い出す度に辛くなる。出来ればバレンタインデーを抹消してしまいたいけどそんな事は出来ないので現実逃避をしようとパソコンを開く。


『ようこそ、しゃみぃさん』


 パソの画面上に映し出された“ようこそ”の文字。それはいつもと変わらない、普段の姿。現実から逃げ続けている僕の、“第二の”居場所。


『ちゃみぃおかえり!』


暫く適当なページをさまよっていると、ネット彼女の“ちゃみぃ”がログインしたという通知が来た。僕はすぐにメッセを飛ばしたから、僕がいることに気付いただろう。


『ただぃまっ今帰ったょぉっ♪なんてね。これぢゃぁ立場が逆だょ?』


『あはは、そうだなw』


 ネット内ならこうして気軽に話せるのに・・・気軽に?そうだちゃみぃに聞いてみよう。ちゃみぃは女の子だから、政ちゃんの気持ちが分かるかもしれないし。


『ねぇちゃみぃ?』


『ん、なぁに?』


『もしさ・・・自分の大切な人にチョコ貰えなかったらどうする?』


 仮に彼女が男の子だったら、どんな行動をするんだろう?


『ぅーん、そぉだなぁ~・・・自分から貰いにぃく、とか?』


 自分から・・・!?考えに出てこなかった新たな回答に僕は驚き言葉を無くす。ちゃみぃ、なんて大胆な。僕は少しの間、反応も返事もないまま思考を巡らせた。


時間が経つのも忘れ思考を巡らせていた僕は、ちゃみぃを放置してしまっている事に気がついた。


『そっか、有難う!じゃあそうしてみるよ』


 すぐさま返信したが、きっと彼女は今頃ほっぺを膨らませ怒っているだろう。その証拠に返信が遅い。


『大切な人って、私ぢゃなぃの?』


 暫くしてちゃみぃからメッセが届いたが、どうやら彼女は怒っていた訳ではなく、ただ困惑していただけらしい。ネット内の彼女であるちゃみぃのチョコが欲しいかと聞かれれば、勿論欲しいに決まっている。


だけどちゃみぃに誤解されているならば、誤解は解かなければならない。


『勿論、君も大切だよ。でも俺には大切な人がもう一人いるんだ。』


 僕は素直な言葉で返事をした。


『誰っ!ねぇ誰なのっ!』


 だけどそれは裏目に出たらしい。必死な態度からして本気で聞いている。ここで誤魔化すのはいけない。素直に、素直に――。


『――妹だよ。安心して。決して好きな人とかじゃないから』


 毎年貰っていたものがパタリと途絶えてしまったら、誰だって不安にもなるだろう。


『しゃみぃのシスコンっ!ぁたしなんか嫌いなんだっ!一番ぢゃないんだぁっもういいもんっ!』


すぐに返事がきたものの、僕の応対は間違っていたらしい。火に油を注いでしまったようだ。どうしよう!


『違うよちゃみぃ!一番はちゃみぃだってば!』


 こう言うしかなかった。それが慰めの言葉に過ぎなくても。彼女がその言葉で安心してくれるなら、僕は嘘だってなんだってしてやる。


 僕はひたすらに返信を待った。だけど彼女からの返信はない。途方にくれた僕はログアウトして、その代わりに真琴にメールを送った。


 真琴が来るまでの間に、僕は謝罪メールを書こうと、パソに元々入っていたメモの機能を使い、ちゃみぃに気付かれないようにそっと進めた。だけど思うように指が動かない。




 そうこうしている内に、真琴がやってきたようだ。迷っていた僕の耳に、チャイム音が聞こえたから間違いない。僕はパタパタと急いで玄関へ向かった。


 ドアを開き真琴の顔を確認すると笑みが溢れた。嫌々ながらもちゃんと来てくれたんだって。


「さ、入って!」


 部屋に並べられた沢山のぬいぐるみに圧倒されたのか、無言で入り口に立ち尽くす真琴。僕はそれを察して言った。


「ん?あぁこれ?政ちゃんがぬいぐるみ好きだからさぁ~」


 政ちゃんというフレーズを聞いて嫌そうな顔をする真琴。僕はそれが何でだか分からなかった。


「はぁ、・・・で?話って?」


 早くも帰りたそうな真琴が話を切り出した。僕も本題を思いだし、すぐに言葉を返す。


「あぁ、そうそう!聞いてよぉ~っ政ちゃんがさぁ」


「あー政宗がどうした」


「政ちゃんがさぁ、顔を赤らめてスウィーツ作ってたんだよ~」


 バレンタイン前日に隠れて見に行った時、政ちゃんは頬を赤らめてスウィーツを作っていた。最初は僕へのものだと思っていたものの、時間が時間なだけにそうでない事はすぐに分かる。


「お前も覗きにいったんだ、へぇ。」




「それでさ~、そのスウィーツ、まだ届かないんだよぅ」


 実際は、僕のじゃないって分かってる。分かってるけど・・・。


 泣きながら真琴にすがり付く。真琴は僕を必死にひっぺがしながら言った。


「誰か好きな人でもいるんじゃないの?」


 ・・・やっぱり?そう思うと僕は涙が出るのを止められなかった。滝のように流れる涙と共に、思いが流れ出る。


「うわぁああ嫌だよ~っ!政ちゃんが僕から離れていくなんてー!」


「離れていくなんて当たり前だよ・・・」


 いつか子供が親離れするように、いつか必ず兄に頼らぬようになっていく。知っていたはずなのに認められない。いつもと変わらない政ちゃんの笑顔を期待してしまう。


「誰か政ちゃんがチョコあげるような人知ってる?」


「知らない。それよりそのチョコを狙ってるやつはいないの?」


 あ、確かあの場で政ちゃんの作ったものを食べたいって言ってたような・・・。


「カインだぁあああ」


「カイン?」


「そうだよ政ちゃんのこと気になってるって・・・!」


「ちなみに何作ったの?」


「確か――あっ!!」


 涙を拭いて伝えるこの事実。皆ならどう捉える?


「ダークマターッ!!」


 真っ黒な謎の物質。焦げすらも超越するその黒さは言葉じゃ伝えられない。


「ダークマターて・・・何かゲームでもやってるの?」


「違うよ!政ちゃんが作った食べ物は全部ダークマターになっちゃうんだ!だとしたら――」


 得体のしれないものをカインは食べたかもしれない。これは一大事だよ!あれは兄の僕でさえも慣れない――。


「――まぁ、でも平気だよね。彼、お腹強そうだし」


 まぁでも僕の政ちゃんに手を出そうとしてるんだもん、料理が上手くないくらい我慢出来ないと駄目か。


「そういえば、お前は食べことあるの?ダークマター。」


「うん・・・」


「味は?」


 きっと表情で一目瞭然だけど、一応頑張ってみる。政ちゃんのイメージの為だ。お世辞を言うしかない。


「まぁまぁ、かな。庶民の感覚からしたら」


「じゃあカインじゃ危ないかもね」


 実際は、危ないところじゃない。多分最初・・・初めてそれを食べた時の衝動は半端ない。うーん、この話題は止めた方がよさそう。


「その袋、何?」


 真琴が持っていた可愛らしい袋を指していう。きっとこれなら話が逸れるはず。


「もしかして、もらったの?」


「いや、セイラの為に作った」


 逆チョコ?頑張るなぁ。僕なんて好きな子と話したことさえ少ないのに・・・。


「そっかぁ、じゃあ逆チョコだね!頑張って!」


 そんな会話をしていると、携帯を見て真琴が急に嬉しそうな顔をし出した。きっとセイラからメールが来たんだろう。


「じゃ僕いかなきゃ」


「ファイト!告白するんでしょ?」


 真琴はその言葉を聞かないまま走り出した。約束した場所へ、彼が待ち望むその人の元へ。


 これでまた一人になってしまった。


 しん、と静まり返った空間。何もする事がなく、政ちゃんからのチョコか気になって仕方ない。僕はとうとう政ちゃんに直接貰いにいこうと部屋を出ようとしながら、政ちゃんに連絡を取ろうと携帯を取り出す。するとかなりはやくに送られたらしい未開封のメールに気がついた。


『件名:真希、ごめんね

差出人:政宗

本文:バレンタインのチョコ、真希の分も作ったんだけど、今日は用事があるから渡せない・・・ごめんね。


明日届けにいくから待っててね』


 そのメールには丁寧に今日作るであろうそのチョコの見本写真まで添付されていた。僕の不安はその瞬間消えた。思えば理由もなく政ちゃんが僕へのチョコを怠ることはない。安心し落ち着いた僕はちゃみぃへの謝罪メールを書くことにした。胸のつかえが取れたせいか、スラスラと文章が書けた。思えばそのメールに気付いたのも――。



『件名:ごめんね

差出人:しゃみぃ

本文:さっきはごめんね。でも僕の話を聞いてほしいんだ。さっき君の言った通り、自分から貰いに行ったんだ。そうしたら・・・僕の分のチョコは初めからあったみたいなんだよ!それに気付いたのは君のお陰だね、有難う。


それとね――僕が君とネットで付き合っている理由。それは――僕の好きな人にそっくりなんだ。だからどうしてもって――。』


 返信はすぐにきた。


『リアルでも好きな人いたの?』


『うん、名前はシアンっていうんだよ』


 “幟杏(しあん)ちゃん”。多少我が儘で自分勝手だけど、根は優しい。氷椏を邪険してる割には氷椏の事を想ってる。そんな彼女に対し、怒りを燃やす人も少なくない。もしかしたら彼女の周りは敵だらけかもしれない。そんな中で彼女は無理をしている・・・僕は彼女を助けたい。それに、僕は彼女が大好きなんだ。怒っている時のぷくっと膨れた頬も、時々見せる悲しげな顔も、楽しく笑う彼女も。勿論、彼女の笑顔が一番好き。だから僕は彼女を常に笑顔にさせたいんだ。


『そっか。リアルでも上手くいくといいね』


 ちゃみぃから返ってきたメッセを見て、僕は安心した。もう怒ってない。それに、ちゃみぃの感情も安定したみたいだ。それに、僕の事を――。





 もし、ちゃみぃが僕の目の前に現れたとして。幟杏ちゃんがそれを知ったら。もし、もし仮に幟杏ちゃんが僕に好意を寄せていて、僕にちゃみぃという彼女がいたと知ったら――逆にちゃみぃが幟杏の存在を見てしまったら?それに僕はどっちを選ぶんだろう?




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