帰郷への開拓路 33話 「闊歩する巨体」
サンディ「うご。ごご」
肉の塊に黒い液体を流し込まれてサンディは苦しむ。
サンディの肉体が肉塊に飲まれて、背中にその肉塊が入り込み、異様な巨体と化していく。そして、その異形の化け物は心臓に黒い液体が塗られた刃をを突き刺した甲殻類のような人の形をした巨体となった。背筋が凍るようなその姿は黒光をしているが、その正体は蛇に噛まれて異形の人と成り果てた蟹人間がその巨体に腕のハサミを突き刺して、飛びついていたのだ。その巨体に怯えている人々を喜ぶクズがいた。それはエゼル王国から派兵された兵士だ。
リュウベイ「これで、計画は随行できるって訳だが、こんなに気色わりー巨体を護衛するとは…俺達の王様の念願の為の道は険しすぎるな。」
アリュベリー「リュウベイ。君は残酷さに既に片足を突っ込んでいるよ。あの、高名な獣使いが話したことによれば、この行いを肯定するも、否定するも悪いことではないとのことだ。」
2人はそのサンディの巨体の近くを怪物と化した蟹人間と共に近くを通るヤシェル王国の兵士がいないか、見回っていた。
何故か2人には蟹人間は襲わないが…
「待って!子供が!私の子供が!」
リュウベイ「と言うことだ。待ってる暇があるなら、この怪物の餌だな。それが俺らが返せる言葉だ。」
幼い子供を逃す為に母親がヤシェルの兵士にしがみつく。
ヤシェルの兵士「…!」
しかし、あっという間に、リュウベイに気を取られたヤシェルの兵士はアリュベリーに首を槍で背後から貫かれてしまう。
アリュベリー「すまないな。これも仕事でね…」
「ひぃ…あっ…」
それに続いて母親は蟹人間に襲われる。まるで、アリュベリーとリュウベイを仲間と認識しているような感覚だった。その呼応するかのような蟹人間は非道にも、アリュベリー達の盾が放つ棘と同じ棘を放ち、母親は絶望した表情で皮膚から湧く蛇に噛まれながら蟹人間と化した。
リュウベイ「俺達のされたことよりはマシだろ。さぁ、気負うな。アリュベリー。いくぞ。」
アリュベリー「わ、分かってるさ」
アリュベリーの表情に少し、翳りがあるが、それは直ぐに立ち直る。2人はとある塔の方面へ足を動かす。
“バブルスタワー”
だ。これはこの水の聖域からエゼル王国方面にある巨大な翼を持つ者しか入ることが許されない厳重な惑星に侵入する外惑星からの来訪者を選別する装置だ。
リュウベイ「アリュベリー!しっかり付いてこいよ!」
アリュベリー「分かってるさ」
2人は物凄いスピードで駆け抜ける。
そして、サンディが変容した黒い畏怖すら感じる巨人はその塔に向けてかなりゆっくりと一歩一歩足を動かす。
サンディ?「私…私…帰るのォ!帰るのォ!」
濁音がつくような耳触りのする声でサンディは吠える。巨体は体から鱗を垂らす。それは蟹人間だ。町中の建物が崩落する最中に、デザンは雇い主の気配を追って、そこへ辿り着く。
マーチェとギークとユミが宿泊していた宿屋であった場所に大量の蟹人間が一階の部屋に集中して彷徨っていた。
デザンは肉料理を食べ損ねた悔しさよりも、マーチェとグレッグドが心配で、屋根の上からマーチェの気配を感じ取っていた。
デザン(わかる。あの二階のクローゼットの中だ。マーチェ殿はそこで震えている。あれは!グレッグド!?)
グレッグドは一階の部屋の中で蟹人間か何かに襲われている感触がデザンを伝うが、デザンはその蟹人間の多さに、身を屋根の上に隠す他なかった。
デザン(畜生!これでは…)
ライ「よぉ…息災か。修行を共にした仲間よ。」
デザン「ライさん!」
ライ「その様子だと、この宿屋に連れがいるな?じゃなきゃこんなそこら中に魔物がいる場所へ宿屋に向かって隠れるやつがいないな。」
ライは槍を持って後ろからデザンを襲おうとしていた蟹人間の頭を突いて守ってくれていた。
デザン「すまない。助かった」
ライ「良いってことよ。俺たち大工が建てた芸術をこんな奴等にぶち壊されて腹が立ってんだ。ちょっくら手を貸してくれ。2人であんたの連れを助けにいくぞ。」
2人は宿屋の窓へ飛んで移り、建物の中へ侵入する。
そして、その窓の外から見えるのは巨大な真っ黒の樹木のような?おどろおどろしい巨人が歩いて子供のような叫び声で人々を踏みつける勢いで物凄くゆっくり歩いている姿があった。




