帰郷への開拓路 32話 開花とテンカイ
おお!何と素晴らしき養分!この娘には愛の響きある鼓動が心に灯されてある!良きかな!我が硬い人々の故郷へまた一歩近づいた!有り難い!この感触。久しい。故郷で腕しか生えぬ愚かな生命体を家畜として食べる感触に似ている!いいぞ!!鼓動が早くなる!この肉体は貪るに値するやもしれぬぞ!この生命体は他の侵略から少し毛嫌いしすぎな程に胃の壁が食肉に対して奇妙だ。我を植物と認識させるのに、あの者が使わせたとすれば、、、この特殊な胃の一部を塞いで、我がこの肉体を、この生物も我々と遜色ない。頭頂部に意思決定要素があると見た!ふぅ…これこそ、我が望み!故郷への映像!
√26話 外輪の眼より。
マモン「それでは、祭りの勝者である健闘者に祝いの品、肉料理を振る舞おう!皆の者!味わって食せ!」
ギーク「よし!1番乗り!」
壇上にある食卓に多くの祭りで活躍した人物が並ぶ。ナイフとフォークは特製の銀のエゼルで作られたそれらが添えてあり、料理はしっかりと焦げて肉が目の前にある。ナイフを使って丁寧にユミとその他がじっくりと食べ始めたが、ギークはフォークだけで豪快にその肉を飲み込むように食べた。
ニーナ「まぁ…凄い…」
ユミ「旦那は…むぐ…いつも豪快なんですよ。やることも…むぐ…」
周囲は驚く。まぁ、いつもの定番ネタのような感覚で驚くが、それは周囲が食べ始めて獣化し始めている様子があるのに、ユミとギークが全く体に変化がないからだ。デザンも近くに座っていたが、大衆と同じ反応で食べる手が止まっていた。ニーナも驚いて食べ始める手が止まる。
デザンも負けないぞ!という意気込みでフォークを握る。
デザン「グレッグド!これで少しは俺もお前より偉く態度を変えなくてよさそうだ!」
グレッグド「獣人になったら、もっとデザンは優秀になったと過剰にマーチェ殿に褒めて働いてもらうぞ?マーチェ殿が油の件で書類を整理してる間にデザンの褒め方を考えておくよ」
グレッグドが目の前でデザンが肉を食べる姿を見て微笑んで冗談を言っていた。彼だけはギークとユミに注目していなかった。
この平和なムードは1人の慌てふためいている兵士が来ることにより、一気に事態が急変する。
ヤシェルの兵士だ
ヤシェルの兵士「マ!マモン様!敵襲です!罪人エスメラルダが逃亡して魔物と化して暴れ回っております!スモクの街が…」
マモン「ふむ…皆の者、一旦…」
そう言いかけると同時に、背後からヤシェルの兵士が槍で攻撃を受ける。
ヤシェルの兵士「う…マモンさ…ま…」
ヤシェルの兵士は黒い筋繊維のような姿になり、地面へ倒れて草木となった…
大衆はそれと同時に悲鳴をあげる。
「おい!どいてくれ、さっさと逃げるからよ」
「エゼルの民は狂ったのか?」
その槍の主は答える。
リュウベイ「こいつは“王が狂った”が正しいが、王より地位が低い奴等が1番悪い。狂ってるからなんだ?いけないのか?」
ヤシェルの魔術師は総出で武器をそれぞれ構え始める。
ギークはユミの手を取り、走る。指をそのリュウベイに向けてツンツンといった表現をして、驚いた眼で肉を口一杯に頬張るユミに合図する。
ユミはギークの手から槍を受け取り、2人は逃げる準備をする。そして、リュウベイの後ろから奇妙な黒い何かが迫ってきていた。花で飾られた街並みをどす黒い得体の知れない何かが走ってくる。
「に、にげろ!」
ギークは周囲を見渡し、いつの間にかマモンがいなくなっているのに舌打ちをする。肉料理を食べていた祭りの勝者は椅子の下に隠れて、逃げる機会を伺っていた物もいる。肉を食べていない獣化していない人もおり、場はまさに混沌としていた。
リュウベイ「おら!全員かかってこいよ!」
ヤシェルの魔術師、兵士は一切に攻撃を開始する。ギークとユミは周囲と行動を合わせて椅子の下に隠れる。肉をモグモグしているユミを見て、ギークはそのままユミの顎を触ってからユミの肉を口移しで半分にして、2人はやっと飲み込む。
ギーク「可愛い食べる姿も最高だね。この状況のステージは最悪だがな」
ユミは動揺して3回頷く。
ユミ「とりあえず、伏せてれば大丈夫そう。」
ギーク「そうだな」
その光景を見ていたニーナは頬を赤る。そして、ユミはそれを見て唇に手を当てる動作をした。
リュウベイ「ひゃっほい!生きてるって感じがするね!こいよ!」
アリュベリー「ほら!リュウベイの邪魔は俺が止める程度で済むのさ!」
リュウベイはアリュベリーを庇うように盾でヤシェルの魔術師が放つ毒の実や、植物の蔦による攻撃を受ける。
アリュベリーは逆にヤシェルの兵士の槍をリュウベイから守る。凄まじい槍捌きで2人はヤシェルの兵士を圧倒する。
キュイン!という音のする身体に付けた腕と足の関節補助がの様な鎧が2人を強くしている。
そして、2人は盾を合わせると棘を大衆に対してもなりふり構わず射出する。凄まじい数の棘で、リュウベイとアリュベリーは魔術師と兵士に棘を刺す。数名、逃げ遅れた民が針の犠牲になった。
その細かな針は辺りをかなり多く覆い尽くすほどの量で、その針が当たった箇所から蛇の様な植物が生えて出る。そして、その皮膚の上の蛇が皮膚の主に噛みつき、そこから、更に蛇が増えて地面に触れたその蛇は地面に噛み付いた。
「い、いゃあ!!!!!ーー!」
「た、たすけ、うご」
「何よこれ!へ、蛇!?」
リュウベイ「ひゃっはー!!はは!これで俺達の存在意義もこいつらと肩を並べられるな!やっぱり、昨日の一点突破の棘より、こっちの方が良い!…良い眺めだな。いや、昨日の“奴”が特殊なのか?」
アリュベリー「よせよ。戯言の前に後ろをみろ!とりあえず、こっちだ。」
皮膚の上で増え続ける蛇に囚われた市民は
恐ろしい光景に魔術師もヤシェルの兵士も民はいなくなった。様々なカオスな悲鳴が上がる最中に人々の気配は少しずつ消える。そして、リュウベイとアリュベリーは何故か盾を構えて、路地裏へ消えた。
そして、後ろで物凄い勢いで走ってくる足が複数個ある二本指の巨体な肉の塊は2つの人の顔をその塊の上に乗せて、こちらに走ってくる。
ギーク「うわ、あれは!エスメラルダ!?やばい…ユミ!逃げるぞ!」
その顔はエスメラルダと知らない男の顔だった。
ユミ「ひぇ…やば…えっとえと、槍!槍!」
2人は慌ててその場に怖気付いて立ち止まる人々より先に走る。
そして、隣にいたまだ顔が誰か分かるニーナを見て、ユミは手招きをして、ニーナはその手を取り、3人は逃げる。
ユミ「みんな!逃げた方が良いよ!早く!」
その声を聞いた机の下に隠れていた人々は一斉に走る。
蛇に噛まれている人は、その悍ましいエスメラルダを見て、絶望する。
エスメラルダ?「何故な?何故なの?あぁん?はぁ?は!は!はぁ!?ん?」
ニーナ「ひ、ひぇ……」
ユミ「ほらほら!ギーク!ヨウハからの旅人抱っこしてあげて!」
走りながら、ギークはニーナの手をユミから渡される。
ギーク「じゃあ、ほらよっと!」
ギークはニーナを背中で抱えて、ユミをお姫様抱っこしながら走る。
ニーナ「あ、ありがとうございます。」
ユミ「うひゃ!最高!」
ギークとユミとニーナはその場を上手く逃げ切った。遠くに姿が見えなくなる頃。複数の足を持ち合わせる元々エスメラルダだった肉塊は逃げる人々を追いかけずに、1人の少女に対して一直線に向かってくる。
サンディ「い、いやぁ!やめて!来ないで!」
サンディに向かってくる肉塊にネフィルが立ち塞がる。
ネフィル「どうした!罪人よ!もう…改心すら諦めたか?」
ネフィルはエスメラルダだった肉塊から生える複数の手で走ってくるその勢いを地面からどうやったかは謎だが、壁を生成して、護る。
ネフィル「私の可愛い娘の様な仲間に手出し無用!」
周囲はその姿にネフィルの強さを再認識する。
サンディ「い、いやぁ!来るな!」
イミュ「消えろ!」
ネフィルの背後からサンディと、イミュが杖を振りかぶる。しかし、2人の杖は先端が紫色に輝き、イミュの杖のみ、先端が朽ちて粉々になった。が、しかし、奇妙なことに、サンディの杖が紫色に光ったまま、サンディの手に根を張るように身体に侵食していく。
サンディ「な、何!?これ?…う、う、う…う…」
サンディは身体を痙攣させながら、エスメラルダだった肉塊に1つの手を口中へ勢いよく挿入される。
サンディ「うぎや!うう、」
イミュ「サンディ!」
肉塊はサンディを持ち上げて、サンディを取り込む。
ネフィル「まずい!イミュ!これは一度引きましょう。」
イミュ「でも!杖が!サンディが!」
駄々を捏ねる様なイミュを片手で抱えて、壁を足元に生成させてネフィルは地面を蹴って撤退する。
サンディを捉えたその肉塊はサンディの口中に黒い球体を無理やり入れると、複数の手で合唱しながら朽ちて、真っ暗な色の光る鱗の様な花に変わり、周囲の蛇に噛まれる人々が変化した甲殻類人間の様な魔物は、それを手で仰いだ。そして、あっという間に地獄の様な景色が広がった。




