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帰郷への開拓路 30話 「火へ」


エスメラルダは視線を必死に信頼できる人物へ向ける。サナだ。彼女は大戦でも顔が知れている。何故なら、前線を共にして、散ったはずの顔だからだ。


近くに2人ほど見慣れない顔があるが、それは先ほどの試合のイミュと騒めく噂から流された声によって、サンディと聞こえた。2人の身長は同じくらいで顔が少し違うが、サナと違い、容姿が似ている。おそらく同郷だと思うが、サナも同じ色である金髪をしていた。サナの目は虚だが、エスメラルダには救いの顔だった。


エスメラルダ「皆!聞いてくれ!私は…!うぐっ…」


何故か、サナ、サンディ、イミュの前に立つネフィルが登壇し、エスメラルダの口に木の実を押し付けて、ぐるりと魔術師が、その木の実を猿轡のようにエスメラルダに固定させる。魔術師は植物、正確には木を操る能力のある杖がある。


そして、ネフィルは説明と演説を始める。


ネフィル「この者は、珍しくも皆に多く知られてある罪人である。しかし、この罪人に私ネフィルは王命にて、決闘での勝利の暁で無罪を約束するという慈悲をコクーンで買った。


先の私の功績による通貨だ。私がこの者を管理できる。何故ならこの薬は杖による症状の、そう、あの“ケリュケイオン”に酔った者の心を安定させることができる。それの応用だ。


皆。安心してくれ。それを今、彼女は付けた。木の杖を持った魔術師が怪しい真似をすれば、彼女を拘束する。この場を借りて、彼女の非礼への償いが行われることを願い、それを宣言しよう。」


ネフィルは長々と話しをする。“王命”という言葉が重いのか、ちらほらと祈りを捧げる様な観客もいて、場は静寂が制した。


デザン「おいおい…」


対戦相手のデザンはしっかりと握った拳にある剣の構えが緩み、マーチェを見てあからさまに嫌な顔をするが、マーチェは腕組みして答える。


マーチェ「とりあえず、手加減は商売の敵な?」


デザンはその言葉に背筋がゾクっとして、再び剣を構える。マーチェは言った後で、感じる雰囲気に少し怯えたが、デザンの構えを見て少し安堵する。その構えはギークの妻を真似た様な構えだが、様になっている。



そのギークの妻であるユミは踊り子の舞う姿を見て、感動していた。自然の中にある鼓動と躍動が混ざった様なユニークな曲での舞に酔っていた。ニーナ デフォルチェンの舞だ。


ユミ「いぇい!いぇい!いぇい!ふー!」


ユミと観客も思わず拍手と黄色い声援で曲のテンポは更に上がっていた。とても優雅なアップテンポはニーナの寒色系の容姿と裏腹に良い仕上がりなり、最初と同じお辞儀で幕を閉めた。


結果は明快。ニーナは勝利した。初めて彼女は勝利する様でとても喜んでいた。何故なら、彼女は獣人ではないから一目で誰もが分かる。


錬金術師「勝者!ニーナ デフォルチェン!」


拍手が巻き起こる。その端で、人々の視線が踊りから背けられていることをユミはやっと気づいた。剣武闘会の会場が静まり返っており、木の手錠と酷い容姿の“あの兵士”が会場で登壇して剣を握っている。


ユミはおかしい状況にギークの片目での合図を思い出す。


ユミ(もしかして?ん?あれって…周りエゼルの兵士?よく見たら、あの髪飾り…ニーナって子ヨウハ王国から来た子っぽい…待って…少し魔物の気配が…やばい…ギークの合図読み違えちゃった…うへ…酒でも飲んで冷静になろう。)


ユミは酒を飲むが、酒に酔わないので、普通ではない。酒を薬だと勘違いしてるユミは慌てて剣武闘会の会場に戻る。それに合わせてなのか?エゼルの兵士も追ってきている訳ではないが、同じ方向へ移動している。


人混みが阻むが、多くの人々がネフィルに注目する。



ネフィル「私はこの決闘を待ち望んではいなかった。この大きな魔物の厄災が去ったことを単なる悪運が強かっただけな出来事だと称したい。その哀れな惨劇が彼女を傷つけた。


数多くの武功を私たち4人は成して来たが、それも皆さんのおかげです。


私の短期間での武功の懐疑を晴らす為、私は出自を明かしましょう。


私は“エゼルの高名な獣使いの弟子”でした。その弟子の残した隠れ家に私は身を潜めることを許されています。その師匠の弟子である私は皆様方の身近な人に発症している杖に依存する病の治療薬を彼から託されたのです。」



ネフィルは対戦前にとても饒舌な演説をまだしていた。この演説は多くの人の心を広く部分的に深く心に刺す様な言葉だった。実際に泣いていたのは男の人が多く。翼を持つ祭りの運営陣でさえ、頭を抱える仕草をした。そう、あの“共鳴の荒者”は倒すための代償が大きかったのだ。


そして、ネフィルはこう続ける。


ネフィル「どうか、私の武功と、大戦の魔物への代償へ払える私の少しばかりのコクーンの使い方に皆様の寛大な心を、この哀れな罪人エスメラルダにお与え下さい」


敬意の拍手が巻き起こり、デザンはそれを合図に剣を強く構える。それとは、ネフィルが小指でエスメラルダの手枷と足枷を弾いて壊したことだ。


そして、ネフィルは最後に、翼でお辞儀をして、壇上を降りる。


ユミはその演説を聞いて、身震いをする。あの姿を見た親族の中で、似ているけど違う。雰囲気のある面影を思い出したからだ。


ーーーーーーーーーー


ギークは支度に時間がかかっていた。ダインアーツは通常通り、特殊なお手製の鞘に収納することができたが、家の植物の世話をどうするかで非常に困っていた。本当にエゼルのあの、“リュウベイ”と名乗る人物からは敵意を感じており、かなり多めに果実と種とマナやコクーンを鞄に纏めていた。まるで夜逃げだ。


ギーク(あれは…あの雰囲気にユミが気付かないとまずい。)


一瞬で戻る気でいたギークは直ぐに中途半端にすることを決めて、サボテン類の種を持っていくことを諦めた。


ギーク(この植物、ソウキン草とかけ合わせると便利なんだけどなぁ…ユミの方が必須!)


そして、家を出るギーク。


ギーク「さぁさ、予感的中した部類でも1番嫌な予感的中だな。」


リュウベイ「ごめんだけど、にーちゃん。ここから先はエゼルの祭り事への敬意として、あんたらを通らせることはできねー。何ならマモンってやつを連れて来ても良い。あいつはお前のダチだろ?ダチの言うことくらい聞けよ?」


?「その口調も時には役に立ちますね。リュウベイさん。悪いけど、有名人のスティッラさんいい槍使いの傭兵がいるって噂で足止めしてんだよ。ごめんな?」


2人はさっきのエゼルの兵士だ。ここで遭遇するとは、悪い予感をギークは、やけに軽く速いと思った人の足音を聞いた時からずっと感じていた。


ギーク「はーん…“スティッラさん”って言ったか?狙いは隠した方が良いぞ?そこまで話すとわかることはかなり多い。人と人との争いが起こる時代になったか…マモンは敵か?」


?「本当にごめん。平和的にこっちも行きたいけど、王命じゃどうしようもない。マモンが差し向けた訳ではない。あんたが“宝”を持つ可能性があるって、俺達はケツ叩かれてんのよ?マモンはその参加者かもね?」


実際に、2人は戦闘する武装をしている。2人が同じ大きな分厚い棘のある盾を構えて、槍を向けている。夜更けも深い。この道に歩く人々は少ない。しかし、彼等も嫌そうな顔をして武装を向ける。王命とはそのくらい重い。


ギーク「血迷ったのは王か?」


リュウベイ「ああ、そうかもな?でもよ、王だぜ?」


その言葉の刹那、リュウベイは盾の隙間からギークに突きを入れる。


ギーク「は?マジで?おいおい…ここまでやるかよ?」


リュウベイ「ああ、本気さ。」


ギークは驚きつつもリュウベイの槍を後ろへ下がり、回避。その下がった反動で前に出て、2人を跨いで、飛び越える。そして、その勢いで、街灯に足をかけて、屋根に飛び乗る。


それを追従するように、槍をリュウベイがギークに投げて盾を上空に向けて構えながら、2人で走る。そして、リュウベイと男なのにおさげで髪を結っている兵士2人は盾から、棘を射出した。


ギーク「うわ!俺が取り損ねた棘植物類を奪いやがったな!?」


ギークはギリギリで槍を回避する。槍は反対の裏路地に落ちる。


リュウベイ「んなわけあるか?怪力!」


ギークはあっという間に遠くへ行ってしまう。


ギーク(他国の兵士にまで手をかけられるわけではない…この立場…くっ…)


?「とりあえず、戦って止めようとまではしたさ、深追いはやめとこうぜ。同胞」


リュウベイ「締まらねーな。この最新式の武具、“無動の盾”があっても、エゼルは大分何かで遅れをとってねーか?アリュベリー!」


アリュベリー「遅れをとってるというか、退化だよ。エゼルは技術力と引き換えに心を売ってるからな?そう。だから、俺達がいるのさ。深追いはこの先の作戦に支障が大きすぎる。スティッラ夫妻はその後のターゲットだろ?」


リュウベイ「そうだな突然目の前に渡された土産を見たら喜びも大きいと思ったが…欲張りすぎだったな。」


アリュベリー「そうだ。」


2人はエゼルの兵士だが、その武装と強さをギークも感じていた。それは棘が当たってはいたが、ギークが屈強すぎた故に走りは止まらなかった。そして、ギークは片足を庇う様に走る。


ギーク(これは思ってるより、痛い。治るのに時間がかかる…名前がついている魔物の攻撃くらい痛いぞ…他国の兵士に槍を向けるのはこっちじゃなくて良い。これは明確にやばい。王が理を破る時が来たか…)



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