帰郷への開拓路 27話「祀り?」
祭日はどの世の中も活気がある。この世界も活気のあるその日を迎えている。
剣舞闘会は多くの人々の目線を惹きつける。あだ名がつくほど有名人のケモノならず者であるギークは大工のライに勝利を収めて、渋い顔で片手の拳を掲げる。周囲は拍手と壮絶な拍手が巻き起こる。壮絶な拍手とは、獣人からの熱烈な拍手である。日頃から、ギーク、及びユミのスティッラ夫妻は多くの獣人へ善意を施しており、親交が深い。
獣人「やりましたね!ギークの旦那!」
ジェミ「おめでとうございます!ギークさん!美しさが溢れる剣技でした!」
ライの弟子「やっぱりか…」
舞台から降りるとギークは反対側にいるライに軽く手を振り、布で錬金術師に包まれたライはそれに同じく軽く手を挙げて返す。
ギーク「ありがとう。ジェミ。ん…あれは?」
ギークはとあるジェミの後ろの席にいるエゼル王国の不審な視線の気配に目を止める。
近くにいた彼女、ジェミは猫耳を揺らして、純粋に試合を楽しんでいた。
そして、ギークにユミが近づいて、ギークへのジェミの視線をユミは旦那の手を少し引き、それを防いでから、壇上へ上がって、ライの手をとる。
ライ「ありがとう。奥さん」
ユミ「ギークは手加減しないってのが礼儀だって」
ライ「やはり、旦那の家を丁寧に修復しておいて良かった。大概手加減してる素振りだからな。あんたの旦那の剣技の真髄に少し触れられて嬉しい。」
ユミの少し困った笑顔にライは頭を少し掻いて、返事をする。
そして、反対側の舞台の下へ戻る。
ギークはユミへ親指を上下させる合図をすると、ユミは剣を取り、軽く上へ向ける。
ジェミ「ギークさん、こっち!こっち!」
ジェミが隣の席を叩いて招く。
ギーク「じゃ、失礼するぞ?」
ギークはジェミの隣へ座り、視線を悟られない様にエゼル王国の兵士へ向ける。エゼルの兵士はどうやら、祭りを楽しんでいる訳でもあるが、玉座に視線を多く寄せていることから、王の不在が気になるのだろう。王は先ほどから戦士ソラと共に飛び立って少ししたら戻るという言葉を置いていなくなってしまった。
ギーク(エゼルの兵士は何を考えている?)
ジェミ「ギークさん!ユミさんの試合も楽しみですね!相手はネフィルさんの子分!イミュですよ」
ギークは少し驚くと同時に、試合のセッティングに王の趣味が垣間見えて苦笑する。
ギーク「ユミ!負けないでくれ!」
ギークは叫ぶ。
イミュはその声に響いたのか、少し瞬きをする。後ろで、ライと入れ違いにネフィルが舞台の反対の端に入り、見覚えのある顔がもう1人増えた。サンディだ。相変わらず、引っ込み思案な姿勢でネフィルの影に隠れて杖を握っていた。ケリュケイオンだ。
そして、イミュは深く息を吸って語り出す。
イミュ「あら!奇遇というか、揶揄しづらい状況ですね?ユミさん。実は、あの“大戦”で旦那さんと一緒に戦いましたの!」
ギークはユミとイミュが話している内容を気にかけながら、ネフィルの持つ異様な雰囲気にほんのり勘づくが、ネフィルがこちらに翼でお辞儀をしてくるので、その疑念を流す。何故なら、彼の手の中にあるそれらはギークにしては気味が悪いが、その“お辞儀”の意味が身に染みているからだ。
イミュ「いい加減なことしか言わない旦那さんとか、不満はないですか?」
調子のいい口調で語るイミュを歯を食いしばり、ユミは返事をする。
ユミ「それで?」
イミュ「あんたの旦那がつまらないって言ってんの」
横柄だ。イミュの荒い言動に錬金術師が制止に入るが、ユミがそれをやめさせる。
ユミ「続けて?」
イミュ「…私たちの功績の方が遥かにすごいってことを証明するから!」
イミュは少し祭りに熱気が入りすぎていると会場が騒つくが、ネフィルが壇上に上がり、弁明する。
ネフィル「皆さん。無礼をお許しください。彼女は杖の副作用が酷いのです。ご勘弁を…」
ユミは険しい表情で軽く頷く。ネフィルはユミへ会釈して、壇上から降りる。
壇上から降りた後、ネフィルはサンディともう1人、サナの腕を爪で周りにバレない様に突き刺して、小声で、囁く。
ネフィル「礼儀正しくなさい。さもなくば、薬はあなた方の味方ではいられなくなりますよ?」
震えた2人は、顔を下に向けて隠して小刻みに震える。
ギークは歓声の中に消える舌打ちをする。
観客「いいぞ!奥さんより美人だってならず者じゃない奴らに伝えてやれ!」
観客「やったれ!イミュ」
獣人の観客「ユミさん!耳はいいことをしか聞かなくていいの!」
獣人の観客「ユミさん!頑張って!」
ジェミ「頑張って!ユミさん!」
獣人と他の声援では差があったが歓声が響く。
イミュ「あなたの動き。昔から見てるけど、そこから学習した私の対応力に追いつけます?」
錬金術師は旗を構える準備をする。イミュは剣を寝かせて、右に向けて両手で構える。
ユミ「そう…」
そして、ユミは静かに微笑み、試合の準備の構えをする。両手で、しっかりと握り、自分の前へ剣を真っ直ぐにし、腰を立てる。その構えに見慣れない周囲は圧倒される。さらに歓声が大きくなり、錬金術師は旗を中央に垂らす。




