帰郷への開拓路 21話 「夫婦の横の練習」
ここ数日、不思議なことが多かった。そう感じる俺がいる。前から不思議なこと自体は多かった。だが、しかし、その不思議のおかげで、俺の人生と自分をここまで否定したくなるのは久しぶりだ。ユミとこれまで、共に生きてきて、結婚して愛し合って、それでも、非難される声はかなり多かった。当たり前の話だが、俺たちはスッティラという姓まで貰った。だが、俺は今、相当苦痛な年月を経ての反復してしまう疑問がある。
“何故、俺たちだけが飲み込まれない?”
なんだかんだ生き残って、俺たちは最初から夫婦だった。まず、そこがおかしい。幼き頃から嫉妬されるのが嫌いだった。しかし、歳月が経ち、私たちより生きている顔見知りは故郷へ帰って行った。死ぬともまたこの世界ではニュアンスが違う。動物として体を変貌させられるこの世界では、翼が生えた戦士階級の今のソラやエラの様な存在が、記憶をほぼ失った状態で魂を動物の中にあれば元に戻して、ここに連れてくる。それをほぼ、味わえない俺たちは多くの人から反感を買い過ぎた。この世界で、俺たちは“屈強すぎる”らしい。魔物に攻撃されれば、普通なら耐えられないほどのことも平気な場合がほとんどだ。
“俺たちは同胞を見殺しにしたいわけではない”
心の声ではそうでも、不思議と元の故郷へ帰れない現実が俺たちを虐げられてきた過去へと巻き戻す。だが、今となってはどうでも良いようなくらい幸せだ。昔、魔物の檻の中に一緒に入れられて見世物にされた屈辱を…ヨウハからここへ逃げて来れて俺は今、ユミの寝顔を見れているだけで幸せだ。2人で、見世物小屋からここまでちゃんといい意味での“特別扱い”を受ける日々に酔いしれている。長い年月を2人で過ごしすぎたかもしれない。
ユミ「ギーク?顔つねってもいいい?」
ギーク「分かった…だけど、それはご褒美だよ?」
2人は夜の寝床を肌と肌で触れ合って、重ね合わせる。しかし、この夫婦にいつまでも命の芽は生まれない。ただ、お互いの共感覚が一層強くなるだけだった。
外が騒がしく、お祭りの前の余興を楽しんでいるが、2人は家で仲良く寝ていた。
余興では、踊りや音楽でどちらが盛り上がる踊りを踊るか?というような催し、商店は沢山の物を売り買いしている人だかりが盛んで、特に獣人はひと足先に、次の剣舞闘祭へ向けて、教える者と、教えられる者で水の聖域の石畳の特に広い広場で、練習を重ねている。彼らは獣人となって、さらに多くの経験と能力を手に入れるために、祭りでの剣の振るい方を試している。お互いに剣の持つ歳月に差があるのか、一振りで風を切る様な音を立てて剣を練習相手の前で、寸止めすると言う様な獣人もいる。ライだ。彼は虎の様な獣人であり、優れた大工だ。獣人もこの祭りへ参加する資格はある。獣人が肉を食べるとさらに力を得て強くなる。これが盛り上がる要因だ。
祭りの決闘の勝者は、「肉料理」を食べることができる。「肉料理」はこの世界において、食べるための精錬過程が錬金術師や、個人で成し得たとしても相当な労力を要し、下手に作って食べれば、普通のそこらじゅうにいる獣になってしまうだけだ。しかし、その祭りで食べられる「肉料理」は錬金術師が直々に仕上げた獣人に変貌を遂げることができるちゃんとした料理である。しかし、ユミとギークはその「肉料理」を食べても変貌を遂げない。そして、屋台で売っている店や食べ物以外を食べるのは危険だ。目利きがいなければ、体調を壊す。
ライ「おう…小童。いや、デザンとか言ったか?お前の剣の振り方は両腕であわせすぎている。もう少し、腕が一本になった感覚で戦うといいと思うぜ?」
デザン「流石に…ベテランは違うな…俺ですらこの祭りで一番盛り上がる舞台で勝てたことがないのに、あんたはすごいな。がははっ!槍を握る癖が抜けねーんだよ。練習相手としてギークの旦那と戦うのに選ばれるだけはあるな?」
ライ「ふはは!さて、首を飛ばさなければ祭りの前でも俺たちは何回でも戦えるぜ?」
まるで祭りの本番のような人だかりに近い熱気がデザンとライの周囲を囲む。
デザンは突きをする構えに近い姿勢で剣を持つ。ライは剣を片手に持ち、肩に乗せて、余裕の構えでデザンの前に立ちはだかる。お互いの普段使う武器は槍で戦うことで、剣に慣れてはいない。ライは早速、剣を振り下ろすが、デザンは上手く体を転がして回避する。が、しかし、ライは剣を地面を這わせてデザンに向けて走らせる。その剣の先が、デザンの剣とぶつかり、吹き飛ばされた。
デザン「なるほど…隙がねーな…」
デザンはふくらはぎだけを使い、俊敏に立ち上がり、ライへ剣を向けて、走り出す。ライはすでに剣を盾の様に構えているが、デザンは体をくねらせて、自身を車輪の様に地面に対して水平に転がり、ライの足に斬りかかるが、ライは剣を地面に突き刺し、デザンは弾き飛ばされる。そして、デザンの剣を吹き飛ばし、ライは倒れたデザンの首の近くに剣を突き刺す。
ライ「勝負アリだな」
ライは勝ち誇った顔でデザンに手を差し伸べる。
デザン「ああ…しかし、ライさんは何故ここまで強い?」
ライ「それはあんたが戦う準備のための構えの大事さを知らないからだ。がはは!」
ライは笑うが、デザンの手を取り、肩に手を置き、助言をする。
2人はこの様な練習を繰り返して、豪快な構えの前に、デザンは勝利を掴めずにいた。歓声はデザンを応援している。
こうして、周囲の歓声が広がり、ギークとユミの家に届く。
ギーク「今日も素敵だよ。ユミ!」
ユミ「ありがとう…」
ギークとユミは服を着替えて、騒がしい歓声を見物に行く準備をする。時折、2人は手を重ねたり、にやける。これが日常になるまで、夫婦は過酷な努力をした過去がある。2人とも、酒に酔った様に、お互いに酔っていないと心が持たないこともあるのだ。




