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帰郷への開拓路 20話 「祭事の準備」


灯火、それはこの世界において、無くてはならない要素の一つだ。夜になると、人々は当たり前のように灯りをつけられる訳ではない。煮込んだ魔物のスープが必要だ。マガ鍋ともまた違う。魔物は空から振り立つ来訪者が、地上で慣れ果て、我々の大地に降り注いだ異形の断片が混ざり合い、王や神、そのような存在から賜った聖域にて、祝杯にされ、それを錬金術師が配るのだ。


「火の聖域」


あのスモクという街にもその設備がある例の火風呂だ。

宿屋に無事ついたマーチェ達は、朝早くに行動をしている。


マーチェ「ギークさん。とても戦いが上手そうだったよ?デザンは大丈夫なの?」


デザン「勝てそうにないですな!」


マーチェ「随分とはっきりしているのね」


2人は火の聖域から、運び込んだ油を時刻を合わせた通りに光る手筈になっている。水が滴るこの水の聖域での仕事だ。


聖域、これらは必ず、広大な土地で、厳重に警戒された塀や、門で覆われており、採掘場である。その採掘場の材料を運搬しているのが、マーチェ達である荷下ろし屋だ。護衛に用心棒は欠かせない。魔物が襲ってくる場合は、彼等用心棒の槍で魔物を地に還さなければなければならない。2人はダインアーツ、あの武具の前に、というより、その使い手の技量が恐ろしいのだ。


「水の聖域」、この辺りで1番清らかな水が流れている。これを垂れ流しておく事が、この聖域の錬金術師の生業、彼等は明確に供物を怠ると溢れ出る水の量が少なくなる。


そして、この共鳴の荒者が空から降りてきた近くの土地であるここは建物は半壊し、レンガが崩れている家が殆どだが、一際綺麗な家が目立つ。そこに、虎の獣人が汗を体を震わせて家にかからない様に振り払っていた。


マーチェ「あの家だけめちゃくちゃ綺麗だよね。あの虎の獣人、彼があの家を直したのかな?獣人は働き者だね!グレッグドとかから見習って、デザンも頑張ってもっと私の役に立ちなさい!」


デザン「はいはい。ま、ギークの旦那に勝負をさせてもらえるのもありだが、光栄だが、その場合、俺の勝敗は確実に負けだろうよ」


彼等は、働くことへさらに貢献することを期待される存在を常民街から、推薦されるか、募り、祭りで剣を持って戦わさせて、首を先に斬られた方が獣人という意味での貧民となる。幸い、人々は首を斬られても死なない。頭から、また、身体が生えてくるだけだ。そして、身体は植物などに成り果てる。剣は祭りでしか使わないため、常民街で、剣の倉庫番が、必死に用意している姿が見えた。彼らは死ぬことへの恐怖が少ないため、貧しいということは、それだけ世の中に貢献しているという真面目な印象をもたれるのだ。その祭りの準備が行われている。デザンは昨晩、手続きをし、その剣の儀式への参加を申請した。


土俵も組まれて、簡易的だが、王が座る間も用意されている。水の聖域は高い塔が近くにあり、闘技場は綺麗な水車が回る大きな施設の外庭の競技場がローブを纏った人々で、ちらほらと景色が忙しない。


その景色をみるマーチェの宿屋の眼下にしれっと、ギーク夫妻はおり、2人は待望の修復された我が家を拝みに行く。


ギーク「俺らの家を修復したのは多分、大工の“ヤツ”だろ、あの威勢が良すぎるが、最高の大工の。」


そう、欠点でもあるとでも言いたげなギークだが、実際そうである。


ユミ「あのライって獣人でしょ?かなりせっかちなだよね。」


ライ「そうさ、赤い髪の奥さんとガタイの良い旦那」


ユミ「ひぃっ!」


ライは既にいつの間にか2人の背後に立っており、ユミの赤い髪がゾクゾクと震え、ギークは呆れた表情をせざるを得なかった。


ライ「旦那方の家はご立派ですな。ワシら獣人の他に直接、錬金術師の奴らもあんたらの家を一日で建て直したぞ。幸い損傷が酷くなかった分、案外簡単に終わったが、にしても、部屋の植物の多さが尋常じゃねーな。壊れた鉢の植物は既に棘が飛び散って片すのに手間取ったぜ。」


ライは自慢げに早口で腕組みをしながら語る。彼は獣人だ。ライオンのような顔をしている。


ユミ「あ、ありがとうございます…」


ユミは下を見ながら挨拶をする。


ギーク「さてと、家を見てから俺は礼を言うとするか…」


ライ「じゃあ、まずはその目利きに期待して握手だ!オラ!」


ライはギークに何かしたげな様子で手を差し出す。


ギーク「おう。ってぃでででで…はは!」


ライは思いきりギークの手を握る。


ライ「ガハハ!じゃあ、一緒に観にいくか」


3人は家まで歩く。水の聖域は絶えず、水路が綺麗に整備されており、その下流側の常民区の1番上の段にギークとユミの家がある。大きな水車が横にある。そこそこ立派な一軒家だ。



ギークとユミ「おおぉ!」


2人は同じように驚く。それは元通りになっていたからだ。2階の陽光をたくさん浴びる植物のスペースにちゃんと水車から汲み上げた貯水用の大きな桶に水が溜まっているのを見て、2人はさらにはしゃぐ。ギークは早速家に入ると、槍の保管庫と手入れ場所に走る。ユミはぴょんぴょん跳ねて、家に入って、2人が寝るべッドへダイブした。


ユミ「愛しのお家!」


ライは満足した顔でその場を後にする。


ライ「ま、2人の世界を邪魔しちゃ悪いな。この反応が俺の幸せだな」


ギークが窓を開けて、ライに手を振る。

ギーク「ありがとう!」


ライ「喜んでもらって俺も本望だ!次は直しに来たくねーからな?」


ギーク「ああ!来るなよ!なんてな!またやばい時は頼む!」


ライはその場を後にして、水の聖域の繁華街の掲示板に人だかりができているのが分かった。


ライ「対戦相手の発表か…例の剣舞闘技会の。」


ライは目を見開き、その驚く文字に胸が高まる。ライは参加申請をしていたのだが、対戦相手の名前がとても嬉しかったのである。


ライ「ギークの旦那。今年は俺の見せ場として、散ってもらうぞ…ガハハ」


人々が騒めくなか、ライは仲間の大工の獣人と肩を組んで、談笑する。




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