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帰郷への開拓路 19話 「杖の使用者」


ギークは体調が復活した。しかし、それが問題だった。錬金術師には探究心をくすぐる悪い健全な結果だ。ギークは使用者の精神を狂わせるであろう ケリュケイオン、ダインアーツを見事に使いこなした。そこで、ギークはマモンと簡単な面談(調査のための聞き取り)をされている。場所は宿屋で、一晩でギークとユミの愛の巣を直すとの約束で、大広間を貸切にし、円卓の様な場所で本来あるべき、酒の入ったジョッキとおつまみがない。静まり返った中、書物が書き記される音が響き、2人は椅子に座らされて、きょとんとしていた。


マモンは至って真面目ではなく、不真面目でもなく、普通の顔をしている。


マモン「さて、2人は本当にさっきダインアーツを触ったよね?」


ユミ「はい」

ギーク「おう」



同時に答えると、錬金術師達は頭を抱える。


マモン(何故だ?精神に異常が出ない?そんなことが?あの、エニグマでさえ、ダインアーツの威力に圧倒されたのだぞ?)


錬金術師「ユミさんにも先ほど、ギークさんの所有物である先ほどの武具を触っていただきましたが、実際何か感じることはありましたか?」


ユミ「いえ、特には?」


質問は堂々巡りで、場の雰囲気は寒かった。本当に予想以上のことが起こっているらしい。これまで、どの様に怪物を討伐したか?や、どのように生き延びている?など、多くの質問をされたが、ギークは何がしたいのかよくわかっていなかった。そこで、


ギーク「あんたら、何がしたいんだ?失礼かもだが、何をしたい?答えられるなら、嘘は言わない。」


ユミは隣でギークを見つめるだけだ。


マモン「いや、疑っている訳ではない。しかし、いくつか知りたいことがあってな…それは…その、あまり大きなことにしたくない。濁して答えよう。君たち2人には特別な何かが与えられている。逆にそれしか不鮮明な部分が多い。という訳だ。肉を食べても、獣化しない。これも異常だ。君たちの姓である“スティッラ”の苗字はアムルの息がかかっているという情報しか我々にしかないのだ。」


ユミ「なるほど!等価交換で尋問に近い質問をしたいってことね!それは少し…怖いかも…」

ユミはマモンから目を逸らす。


ギーク「他にスティッラという姓を持つ人はいるのか?」


マモン「…太古より、王を産む仕事をしている密舞台の宮殿に住まう天人の姓だ。単に、王の血筋でその様な能力はないと思っていたが、ギークよ…天人のご子息は同じくダインアーツを手に取ったが、君と同じことにはならなかったよ。君たちが大きな功績を上げても我々の間で、不思議がられないのはそのおかげだ。」


ギーク「何百年生きていて、初耳だな。天人とは?逆にどの様な能力がある?」


マモン「人々を癒す魔法陣を道具なしで発動できる。修行は必要だが…祭事の最後にやる儀式の際にするアレだ」


ギーク「だが、俺にはそんなものはない。」


錬金術師達は困惑した顔だが、しかし、何か掴めた様子でギーク達を部屋から出す。


マモンと錬金術師一同「あなた様方に個人的な敬意を…」

部屋から出る際に、マモンと錬金術師は軽く跪く。


ギークは宿のユミとの相部屋に行くと、ユミと抱きついて一緒のベッドに入り、添い寝しながら言う。


ギーク「まいったなぁ…ユミ…さぁ、寝よう」


ユミ「んぁー!やっぱり、ギークの汗の匂いが一番寝るのにいい…おやすみ」


2人は普通に寝た。これが普通の日常で、夫婦にとって待望の睡眠時間だった。


ーーーーーマモンの見解


マモン「しかし、あの2人は何故あの様に我々よりも精神における耐性が強いのだ?錬金術における、転生流転の作業が行えないに等しい可能性がある。見解にあまり相違はないだろう?」


錬金術師「ええ、私も同じような考えです。しかし、それしか情報がわかりません。スティッラ夫妻も知らない様に私からは見受けられました。」


マモン「そうだろうな…私よりは年上ゆえに、本当に今回の件で夫妻の存在意義が大切になってきたな。おい…手間だが、ギークを犯罪者の所在を特定する魔法陣で場所を割り出してくれ。」


錬金術師「マモン様!それは罪人として扱うということですか?」


マモン「いや、全く違う。やればわかる。特定が不可能な場合…異例の神の様な扱いになるぞ。犯罪者の判定には引っかからないはずだ。」


錬金術師「はぁ…」


マモン「精神を蝕まないということは?何パターンか考えられるだろう?」


夜の廊下に小声が通る。

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