帰郷への開拓路 16話 「強敵とのかけっこ?」
ユミは来た道を戻っていることに気づく。
ユミ「これでは、どうしようもない。戦うしかない?」
ユミはやつ“エニグマ”からの逃走を3回ほど繰り返している。口から出てくる舌を何度か避けてから、自身の片手の槍で串刺しにして、斧で地面を叩き割り、エニグマの足に黒い液体を飛沫させ片手の槍で最後に木に対して思い切り叩きつけ、舌を木の中へ埋め込む。それを今、行ったところだ。
ユミ「くそ!ついてくるのね?」
華奢な体の剛腕と靡く赤いポニーテイルが森の中を駆けるのを飛び跳ねる蛙が2体追いかけてくる。巨大なその2匹は黒いヘドロの様で、周りの花々が豊かな景色をより一層乱している。そこで、ユミはお手製の熟成させている5本の矢を背中から1本と簡易的に作成した弓を取り出し、一匹を確実に紫色の発疹を発現させ、機能停止に追い込んだ。そこで、奇妙なことに2つ気づく。良いこと、悪いことの二つだ。それはギークが近くにいること。そして、悪いニュースはその旦那ではない気配が近くに忍び寄ってきていることだ。彼等は強力な武装を施しているが、魔物用途ではなく、対人用、しかも正規の魔術師のマークを持っていないようなので、明らかな“犯罪集団”だとわかる。ユミは驚いた表情をするが、それもそのはず、彼女は力の酷使により、多くの感覚が鋭敏になっている。茂みに身を隠しながら近寄る彼等3人をユミは見逃さない。
ユミは熟成させた1本の矢を集団の真ん中の1人へ射出する。
犯罪者「…?」
1人はその場で、鼻と蛇を撒き散らしながら体の再生しなければならないほど身体の形状が捻じ曲がる。そうしているのも鎧を貫通するほどの速度の高い矢のおかげで、さらに液体が飛散した飛沫で、さらに周囲の2人は咄嗟に、真ん中の仲間から距離を取る。
犯罪者「な…お前は…!?」
ユミ「口を閉じろ!」
2人の犯罪者の口にユミは槍で見事に木片を4つ投げつける。木片は足と口へ命中し、犯罪者二人は足を挫いて身動きが取れない。さらに犯罪者達は道具を奪われてしまう。縄と矢だ。
犯罪者「あ、あいつ!、う、うぁああ!」
大きな蛙の一匹が3人を順番に飲み込んでいく。
犯罪者「や…やめろ!おい!手を動かせ!何とかしろ!」
犯罪者の3人を見事に飲み込むと、蛙がエニグマの元へ向かい、自らの身をエニグマに捧げる。
エニグマ「味が薄るいぞ?何故眷属はここまでのぎぉ…ギジュ…技量なんだ量?この世の回、始めたかえる。かえる。」
エニグマは足がおかしいくらいに調子が悪く、蛙の頭部の下の腹の一部の内臓が飛び出していながら、行動していた。が、3人を飲み込んだことにより、体が進化し、背中に虫の翼を支える腕が被膜をボロボロにした状態で、生える。その背中の中心にさらに嘴に囲まれる顔が覗かせている。彼がエニグマの声だ。その被膜の翼の支えの先には怪しげな煙を放つ玉がついていた。
ユミはそれに気づかない。エニグマの脚力は依然として遅いので、距離を離し、安全な位置まで走り抜ける。途中に、黒い霧が見えるので、それを避けつつ、森を抜ける。
そこで、直感的にやばいと感じる出来事があり、ユミは咄嗟にしゃがみ、地面を見た。見てはいけない何かがある。そう感じざるを得ない力の振動が波打った。
ユミ「うぅ…本当にこれやばいな…今までも数回しかないピンチだよ。」
そう言うと、ユミは自身の腰の服の余分なポーチの布を剥がして、目隠しをし、周囲を感覚で感じ取りながら、移動を再開する。
ーーー同時刻
エニグマは明滅した。彼の半径、山一つ程、霧が飛散している場所から見える存在に語りかける様に黒と白に点滅したのだ。
ギークはユミの感覚から伝わる「それ」を防ぐため、眼下に広がる黒い霧から背を向けて突然、マーチェとグレッグドとデザンに血相を変えた声で、
「目を閉じろ!」と叫ぶ。
3人は驚いた。そして、反射的に目を閉じる。
その後、ギークは即座に、そこらにある、ありあわせの布で3人を目隠しする。
グレッグドは足を止めた。
グレッグド「ギークさん!急ですよ!何かなきゃこんなこと許しませんからね?」
ギーク「ああ、その何かだ」
強い口調で、グレッグドが言う。またがっていたマーチェが自身の目を閉じて、グレッグドの目を目隠しで覆いながらギークに問う。
マーチェ「ギークさん…どうかされました?」
彼等は常人より、この状況に対して冷静だが、この世界に「殺人」という行為が成り立たないに近いからである。そして、最も恐ろしいのは「幻覚」であり、
ギーク「幻覚が見える作用のある何かが我々の景色の先に今、丁度広がった。」
ギークは目隠しを自身に施し、感覚が目から他の部位に集中できるようになったので、眼下に広がろうとしていた先にいるユミの位置を把握できた。
デザン「あそこにいるのは、奥さん?ギークさんあなたと似た様な気配を感じましたぞ。」
傭兵は感覚が常人の何倍も優れるスイッチの様な切り替えができる。つまり、それができないのはマーチェと、グレッグドのみである。
明滅しているのが、何となく2人、ギークとデザンにはわかった。
デザン「これは前に進めませんね?」
ギーク「ああ」
2人は漠然とした状況だと、改めて深く思い知らされた。




