帰郷への開拓路 14話 「帰れない道は壊されるのか?」
ユミは必死にエニグマから逃げる。1日が既に経過しており、彼女も息を切らして潜めるので厳しい状況だった。
ユミ「なんてやつなの?噂には聞いていたけど、“霧を吐き、暗闇の中で行動する”これがどれだけ厄介なのか分かった…だけど、ギークがいればなんとかなる部分が多い…ギークがいれば…」
エニグマは逃げた先でも、追いかけてくる。しかし、向かう方向とは逆に進んだタイミングで黒い霧が立ち込め、その中を動くエニグマを微かに目撃する。その間に、ユミは毒になる材料を調達し、弓矢の材料と、炎を毎晩湿地帯の油を少量含む植物をかき集めて、灯りを付け、野生の肉食獣の首、動く小動物の首輪にして、エニグマから首の皮一枚で逃げ切っているような状況だった。
2日目、3日目ーーーーー
ユミは逃げる途中で、素早い身のこなしを続けすぎたおかげで、体力が持たずに息を切らし、何回か既に食事をとっている。この世界の住人は多くて1ヶ月に1回の食事で済む。異常だった。ユミは次の策の準備をしている。それは、斧を作ることだ。幸いにも、肉食獣を何匹か、地面に植え黒い石にして、その石を粉末状にすることで、水と混ぜ、斧に塗り、木を伐採する。そういう考えだった。斧に黒い液体を塗って、ユミはエニグマの近くを動物の首に灯りを付けながら、移動する。
ユミ「奴の視界はだいぶ削いだ。そのはず。奴は灯りの灯る部分のみ、盲目になるはず…はぁはぁ…」
ユミは斧を抱えて、飛び回る。一瞬、一瞬をタイミングを伺って素早く動く。エニグマから殺気を感じないタイミングを掻い潜る。
ユミ「精霊様、地の主、シュブルス様!お恵み仕る!そりゃ!」
その祈りの後に、ユミは木を縦に真っ二つに割る。そして、ユミはその木を横からさらに、空中を回転しながら木を木片に変える勢いで、黒い液体に斧を浸しながら、砕いていく。その作業を繰り返し、ビーバーの作った地上のダムの様な木片の散らばる空間を生み出す。
ユミ「これで天然の柵の完成ね。」
木片は地上に逆立ち、黒い液体は浸されており、これを踏んだエニグマは毒で動きが鈍くなる。そうユミは推測していた。
そのこれら、油のなる植物の採取と布へ染み込ませる、黒い液体で塗った木の枝を飛んでいる鳥に命中させて枝を撒き散らす、黒い液体の錬成と補充、小動物を捉えて、灯りをつける、これらを同時にこなし、そして、夕暮れ時にエニグマに人間だと気づかれない様に逃げる。これを繰り返していた。これをやりすぎると、環境破壊につながる可能性があるが、ユミはそこも考慮しているつもりで、なるべく少ない木の量でそれをしていた。しかし、この、黒い液体による毒の効果は気休め程度にしかならない。何故なら、熟成させる時間が足りないからだ。
ユミ「そろそろ寝ないのも辛くなってきたよぉ…ギークぅ夢に出てきてぇ…」
愚痴をこぼしながら、ユミは夜を仮眠するために、木の上で時折足音の気配がするまで寝て、起きて駆け抜ける。
エニグマがこれまで襲った動物はかなりの数を超えて、もはや、一度も遭遇していない。ユミは普通の常人の何倍も怪力だ。それはギークも同じである。多くの人から、“獣ならず者”と通り名をつけられるのはそのせいだ。
エニグマの足音がするが…
エニグマ「グぎゅぼもぉもおおおおおお!」
と大きく叫ぶ音がした。灯りを首につけた野生の動物が殺されている。
ユミ「や、やばい…」
久しぶりに4日目の夜、エニグマの姿を見たが、エニグマは見事に足に紫色の発疹ができており、動きが前より鈍くなっていた。
ユミ「逃げ切れるかしら…」
ユミはその隙に、しっかりとその場から逃げ切る。




