帰郷への開拓路 10話 「ダインアーツ 運用」
地下の決闘場は大きな地下でてっきりギークはかなり暗いとそこまで思いかけたが、かなり明るい。火の聖域の中継地であるこの「スモク」では、火風呂を再利用し、地下の灯りにしている様だ。凄まじく明るい。火柱が地下の中を覆う。それが灯りだ。
ギーク「対戦相手は?それを聞いたら、この槍での扱いに慣れる準備運動をさせてくれ。」ギークは足を軽く揺らして、少し体を温める様に、準備運動を始めた。
錬金術師「相手は今回の“共鳴の荒者”とは無関係の長年討伐の難しかった封印でしか処理できなかった鍋の残飯です。」
ギーク「ん?鍋の残飯というと?そいつの出身のマガ鍋はどこだ?」
ギークの表情が曇る。その“残飯”とは、マナに仕切れなかった“大魔物”だからだ。
錬金術師「“この地のマガ鍋”です」
ギーク「で、そこの今にもはち切れそうな扉の後ろで、奇妙な鳴き声でなくそれが、残飯だな?」
錬金術師「そうです。」
彼等は淡々と話し始めた。
錬金術師「我ら、魔術師が周囲を囲みます。上をご覧ください。」
ギーク「ほう…」
上の壇上に魔術師が各々黒い武器を手に取り、巨大なクロスボウの周辺に戦闘体制を取っている。顔の後ろに光る金色の装飾をフードから確認できる。八名ほどだ。
ギークは素早い身のこなしで、槍の稽古でしている軽い運動をダインアーツで行う。
ギーク(これは…相当な強敵だな。少なくともこれまで戦ってきて、3日も粘って倒せたやつ程度の強さだ。あの、図体のでかい白い球。取り込んだ存在の容姿をそのまま模倣するやつ。あれもギリギリ力技で乗り切れたが、今回はどうなるか?)
ダインアーツは意外と普通の槍よりはギークの身のこなしと相性が良かった。毒の飛沫を利用して、自身で目眩しをくらわせる戦法を行うくらいのギークの荒い技術には素早くなりすぎるほどのキレを仮想敵想定の武芸にしては、魔術師が目を見張るほどの槍術だった。
錬金術師「それでは、準備が出来次第、2回手を鳴らして合図でもしてください。私は下がらせていただきます。ご武運を…」
ギーク「…」
ギークは真剣に武芸を行っていたと周りの魔術師が思う中、突如、棒立ちになる。
ギーク(これ、どうやったらさっきの様に変形する?全くわからん。)
?「戦う意志はあるか?」
ギーク「なるほどな」
(喋るのかこいつ。錬金術師の奴らには聞こえてなさそうだ。頭に響いて広間には響いていない。戦う意志はある)
ダインアーツは変形し、先ほど同様に、左手に盾、右手に三本の槍が腕に追従して浮いており、同じく背中にも大きな青い鏡が炎を纏った。
ギーク(おい、念話のようなことができる様だな?わかるか?俺の話)
?「戦え」
ギーク「…分かった。性能をテストしよう。どうやら、こいつは飛ばせる様だね。ほいっと」
ビュンっと槍が近くの地面に刺さる。その1本をギークは手に取り、残りの2本の槍を頭上に浮かせ、構えた。まるで、腕が4本にでもなった錯覚を起こすような見え方をする槍術をギークは行うが、もう腕2本分の槍が扱えていないことが魔術師たちにも伝わる動きだった。ギークの槍の追従とカバーを完璧にこなす槍があり、そこに仮想的に想起できるのは2人しかいなかった。
ギーク(ユミの動きを想像すれば、行けると思ったが、扱いが難しいが、動きは大分馴染んできた)
ギークは2回手を鳴らす。すると、扉が勢いよく開き、ズシンと大きな図体の残飯が姿を現す。
残飯「武にゅっしゃ、ぶんん!ぼうえいりゃぶりゅん!」
ギーク「こいつはまさにその触手!“食いしん坊の白丸”か!お前の弱点はわかってる!」
ギークは案外、先ほど3日かけて倒したという魔物でいきなりその時に通用したであろう戦法を取る。それは、この大魔物の内部で蠢く核を切り出して、ダインアーツで切り刻むことだ。最近はこの手の魔物が多く、対処のやり方も見事な槍使いで姿勢を整えて、斬りかかろうとする。
残飯「ふしゅ」
残飯から、黒い粘液が飛び出た。ギークは間一髪で避ける。が、連発して、それらを放つ。大きな図体の異様に白い触手を振りまく残飯は猛攻でギークを襲うが、ダインアーツの槍で斬る。その断片が、直ぐに紫色になり、固まる。残飯の触手は鬱血した様になる。動きが遅くなった白い残飯を突いては離れてを繰り返す。
(この武器、まだ慣れないせいか、くそ、逆に手際が悪い…詰めるか)
ギークは戦う。いつもの毒を塗り、間合いを取る癖のある戦法も途中で無駄だと気づき、間合いを詰め、その白いお腹のような球体をついに裂いてしまう。
ギーク「よし…これで本体が…?」
残飯の中身「「「おお!これは!まだ知ってる味?ちがブヒャははははは!」」」
3つの顔が飛び出し、汚い墨の様な液体の溜まった口を見せつける。
思いもしないことが起こると、人は一瞬止まるが、彼はいつもなら違う、そのカバーをしてくれるのは妻だった。
ギーク「ユミ…」
そう一瞬呟くと、浮いていた槍が盾に変わり、相手の黒い液体をガードする。いや、光を放ち、無効化した。
ギーク「これが、効果?か?うぐっ…ただ腕が取れたくらいの痛みだ」
ギークの腹を突く様な痛みが全身を震わせる。
残飯の顔3体「「「何故?あなたは?何故?わかる?惚れ?照れてるの?あげるよ?私たちが好きなぜーたくひやはあははうげっんああ」」」
また黒い液体がギークに飛んでくるが、腹を押さえながら、ギークは下がる。
壇上の魔術師は密かに言葉を交わす
魔術師「あいつは危険だ何人犠牲になったかわからん。食われすぎた。魔物は人を食べるからな。こいつは触手の古い方のマガ鍋を壊しまわった厄災だ。アムルの息がかかっている御仁でも無理では?…俺たちが出なくてはいけなくなるが、おい!ヤバそうだから、鎖とクロスボウで照準を合わせておけ!」
ギーク「ユミ!いくぞ!こいつを3段突きで顔を潰すぞ!」
1本の槍が変形し、ギークの顔を覆う。鎧と化し、2本の槍で2人の槍使いの様に、跳躍を交えて、触手にを切り刻み、黒い液体を避け、素早く、中距離から、槍を浮かせて残飯の顔を3回突く。
残飯の3面「ビュヒャこの味はなえれのいな?ウビょああああああああああ!」
ギーク「やっと、いい悲鳴が聞こえる…金になる悲鳴だ…すまん錬金術師…頭痛がするんだ。労ってくれ。体が…」
残飯は黒く濁り、紫色の肉塊と化し、動きが止まった。ギークの勝利だ。これを錬金術師達は鳥の様なマスクをして、全身に布を巻き、回収に素早く移る。植物の入ったマスクだ。
ギークはその場に倒れて、同時に槍も元通りになる。
錬金術師が駆けつける。




