帰郷への開拓路 9話 「ダインアーツ?」
マモン「どうでした?火風呂の加減は?」
ギーク「玉座で聖域の領主が悩む気分が理解できるかもしれん。」
マモンは微笑む。
「それはよかった。心地よかったのですな。」
ギークは前より見違えるほど、立ち方に芯が出た。
ギーク「疲れが取れた後の仕事に気合いを入れなくてはな」
アムルの命令は絶対的である。彼の命令に誰も逆らえない。1番に恐ろしいのはそこに明確な理由がないからだ。皆、一様に高揚感に駆られてしまう。
ギーク「で?この高揚感は?」
マモン「まさに、武器による舞が関係している仕事でございます。こちらを…錬金術師がアムル様直々に賜った品を改良したものです。監修してもらいながらですが…」
ギーク「これは…何故改良を施した?アムル様自らお渡しになったのであろう?何故だ?」
マモン「なんとも不思議ですが、アムル様も現場の気配を汲み取りたいとのご意向でして、こちらで、武器による舞を踊ってほしい。とのことです。それと、“もし、気にいる様なら、それを持ち帰り自身の武器にしろ”とのことです。」
ギーク「有難き幸せ…」
ギークは跪き、火の聖域の宿場町領主謁見の間である場所で、少人数の場で武器を賜る。広間はその空間の大きさを荘厳とさせる。
武器は槍、しかし、普通の槍ではなさそうだ。注入口のない槍だ。それは毒を入れる必要のない槍だった。
ギーク「さらに無礼を承知で聞きたい。これは何故毒を塗る場所がない?祭事用か?」
錬金術師「その必要がない。そのような武器です。ケリュケイオンとは別に、“浄化”の作用が恐ろしく強いのです。天の使いの勇者も扱えないとのことで、あなたに託すとのことです。」
ギーク「そんなものをこの俺に?」
マモン「我々では特殊な方法でしか触れられませんでした。故に、お気をつけください。我々が触れれば耐え難い苦痛が思い出され、3日は寝込むので恐ろしいのです。ケリュケイオンほど、相手への効果は薄いですが、対象者への負荷が多い分、身体への効能は凄まじいとのこと…」
ギーク「ケリュケイオン?あ、あの杖の名前か?違いないか?」
錬金術師「肯定。もっとも、あの杖も厄介なので、私どもでも使用したいものはあまりおりませんね。」
ギーク「…?」
(大丈夫なのか?)
ギークはそれを手に取る。
「うぉ!ちょ、マジか!」
ギークの背中にその槍は三つに分裂し、一つは左腕に追従し盾として、浮き、同じ様に右腕には槍の形で浮き、三本の槍に変わった。そして、背中に、青い炎を宿す鏡が彼の背後に浮く。
ギーク「ひょえ…なんじゃこりゃ…錬金術師さんこれは気に入った持ち帰らせてもらう。」
マモン「ひぇえ!この様に変化するとは…」
二人は同じ反応をする。
ギークが驚くと、その武器は元の槍の形に戻り、ギークの手に宿る。
マモン「では、、その武器“ダインアーツ”の説明をさせていただきましょう」
ギーク「ダインアーツ?」
マモン「左様です。この武器は、使用者に強力な魔物や怪物からの身代わりを作成することができます。私どもの保有し、管理する魔物で、何度も実験し魔術師に使用させましたが、なんとも、先ほど申し上げた通り、使用した錬金術師のほとんどが植物へと成り果ててしまったのです。触った直後にそうなる者もおりますし、精神的に負荷がかかる恐ろしい武器です。長時間の使用は避けてください。」
マモンは驚きを隠せず、腰を落とし、まるで祈る様な体勢でギークに語りかける。
ギーク「お、おう。でどうしろと?こいつ槍になったぞ」
マモン「それでは、先ほどの火風呂の近くの施設で、“共鳴の荒者”との試験的な試合をしていただきたい。そこでの勝利が今回の2コクーンと1000マナの報酬だ。」
ギーク「頷くしかない。了承した。」
ギークに錬金術師は板と同意書を渡すので、一緒に渡されたペンの反対側にあるナイフに手を差し、血をインクにしてサインをする。
ギーク・スティッラ
錬金術師「ご案内します。こちらにお預かりしている“ケリュケイオン”を含む荷物とその他がある宿がありますね?その地下になりますが、ご案内するのには特殊な経路が必要になります故に、私どもが同行します。マモン様は別の業務が委任され、ギーク様への同行はここまでとなります。」
ギークはその地下へ案内される。あの銀色の槍はやはり、目立つのか、商人からやたらジロジロと凝視された。様々な商人がいるなかで、聖域の専属の商人らしき存在にやたらあからさまにジロジロ見られる。が、それを気にしているのは錬金術師たちだけだった。ギークの前を隊列を組んで、堂々と歩く。ギークは呆れ顔で流すが、錬金術師は人目を避けろと言わんばかりの仕草で人を宥める様に闊歩する。
ギーク(妻は息災だろうか?)




